デジタルは世界の産業構造の地殻変動を驚くべきスピードでもたらしています。Uberは2015年にサンフランシスコで最大のタクシー会社Yellow Cab社に破産宣告をさせるまでに至りました。デジタルを梃子にした安くて便利なUberらが提供するシェアリングエコノミーのビジネスモデルにもはや対抗できなくなったのです。こうした地殻変動は世界各地で起こっています。「コモディティ化するモノ」を売り続けるビジネスモデルから、顧客の本質的価値に響く「成果型エコノミー(注釈1)」への転換をビジネス戦略アジェンダの上位に位置づけることが製造業には求められています。
一方で、日本の製造業に目を転じれば、モバイル、クラウド、センサー、人工知能、アナリティクス、機械学習などの要素技術に着目されがちで、「成果型エコノミー」の実現に向けた切り口で語られる傾向は欧米に比して極めて少ないと我々は観察しています。これは世界第二位の工業国まで戦後登りつめた技術立国としての自負が背景にあるのかもしれません。しかし、さまざまな経営書・学術書などが指摘してきたように、要素技術だけではもはやグローバル市場では勝てなくなってきているのです。
「常時現在進行形」とも表現されうるデジタル・テクノロジーと対峙している現在、「成果型エコノミー」の実現に向けて日本の製造業はどのように取り組むべきなのでしょうか。デジタル・ビジネスで成功を獲得するためには、これまでの企業活動の延長線上では立ち向かえない多角的・多面的な重要な課題があります。今回は、リソース活用の観点から検討を行ってみたいと思います。
注釈1:エリック・シェイファー著『インダストリーX.0 製造業の「デジタル価値」実現戦略』。日経BP社。2017年。