課題―求める変化

コロナ禍をきっかけに、教育DXの推進が急務に

「諸学の基礎は哲学にあり」を建学の精神に掲げる東洋大学。しかし新型コロナウイルス感染症の影響で、学生の生活や授業形態は変化を余儀なくされ、さまざまな課題に直面しました。2020年4月に東洋大学 学長に就任した矢口 悦子氏(東洋大学 学長 文学部教授 博士(人文科学))が最初に取り組んだのが、そうした学生たちへの支援でした。

「東洋大学では10年以上前からLMS(学習管理システム)を導入するなどIT化を進めていたこともあり、早々にオンライン授業へと切り替えることができました。ところが、授業やレポート提出といった学修関連から給付金・奨学金の申請といった学務関連まで大量の情報をオンラインで受け取る学生の負担は大きく、悲鳴に近い声が上がりました」(矢口学長)

このような状況を打開するため、まずは学生や教職員の課題と感じていることを調査するところから始めました。プロジェクトをサポートしていた寺田 信幸 常務理事は当時をこう振り返ります。

「東洋大学ではこれまでもデジタル化への投資に注力していたこともあり、オンライン授業を実施できる環境はすでに整っていましたが、すべての学生や教職員が活用するまでにはいたっていませんでした。それが新型コロナウイルス感染症という危機的状況に直面し、学校法人として学生や教職員を全力でサポートするという考えの下、さらなるデジタル化に向け素早い意思決定を行いながら動き始めました」(寺田常務理事)

そしてこの東洋大学公式アプリの開発にあたり、パートナーに選定されたのがアクセンチュアでした。

「今回のアプリは学生の主体的な学びを支えるものであり、顧客向けのサービスを提供するものではありません。あくまでも学生が主体であり、学生を顧客として見るのでは十分に満足できるものをつくることができません。それに対してアクセンチュアは、東洋大学の意図がどこにあるのかを理解し、形にするまで本学と一緒に伴走する姿勢を見せてくれました」(矢口学長)

「パートナーの選定にあたっては当然、コストとクオリティのバランスも考慮しました。そのなかで大学の考え方や教育理念をきちんと理解する努力を惜しまないアクセンチュアを高く評価し、協力を依頼することにしました」(寺田常務理事)

アプリ開発プロジェクトをリードした学長室学長事務課課長の新山文洋氏は、現場におけるアクセンチュアの姿勢を次のように話します。

「私たちはシステムやデジタル技術だけを優先してしまうと、学生本位の教育や支援は難しいと考えていました。そのような中でアクセンチュアからはコロナ禍で学生が得られなかった体験を取り戻し、学生一人ひとりの成長を支えていくにはどのようにするべきか共に挑戦したいという提案があり、これがアクセンチュアを選んだ決め手になりました」(新山課長)

矢口 悦子 学長 文学部教授 博士(人文科学)
※写真撮影時のみ、衛生面に配慮した上でマスクを外していただいております。

寺田 信幸 常務理事
※写真撮影時のみ、衛生面に配慮した上でマスクを外していただいております。

新山 文洋 学長室学長事務課課長
※写真撮影時のみ、衛生面に配慮した上でマスクを外していただいております。

取り組み―技術と人間の創意工夫

「学生を支えたい」という思いを叶えるプロジェクトに

アクセンチュアは東洋大学公式アプリ開発において、UI/UXデザイナーによる体験設計から、具体的なアプリ画面・機能設計にわたり包括的にサポートしました。そして2021年12月に開発をスタートし、たった4か月後の新年度2022年4月にサービス運用を開始しました。

開発面でのポイント

  • 学生フレンドリーかつシンプルなUI/UXデザイン
  • 学内で初めてPublic Cloudをフル活用した基盤構築
  • FlutterによるiOS/Android/Webの同時開発
  • 既存システムとのデータ連携やデータ分析基盤も同時に開発
  • 既存の学内認証システムとの繋ぎこみ
  • バックログとアジャイル開発による柔軟なスコープ管理

東洋大学公式アプリPR|学長メッセージ

トランスクリプトを読む

各部署との連携を強固にした協力体制がプロジェクトを成功に導く

また、学内では初のアジャイル開発にも拘わらず、この短期間での開発・運用を実現した背景には、ワンチームの体制で推進できたことが大きな要因だと考えます。

「限られた時間で開発を進めるには、アクセンチュアに対してアプリ開発で必要となる情報を正確に伝えなければいけません。また、各部署を連携させながら学生の意見を取り入れるのは苦労するのではないかと心配していました。しかし、各部署とアクセンチュアがワンチームとなり、機動的に動いてくれました。」(寺田常務理事)

学生を第一に考えたワンチームの体制は実際の開発現場でも発揮されました。

「学生本位のアプリを開発するには、学生のことを良く知り、学生のことを良く考える必要があります。学内のあらゆる情報を収集するために、各部署から参加するワーキングチームのメンバーと率直に意見を交わしあったり、200名を超える学生、教職員へのヒアリングを重ねたりしましたが、こうした学生、教員、職員の三位一体の流れを一つひとつ繋げていく過程でアクセンチュアがパートナーとして強い味方になりました。また、開発が始まった当初にメンバーの間で『このまま進めて本当に学生本位になる答えが導き出せるのか』という疑問が挙がり、壁にぶつかったことがありましたが、アクセンチュアと本音で徹底的に議論を重ね、手法をイチから考え直して大胆に方向性を切り替える具体的な提案をしあったことは、とくに象徴的な出来事として覚えています。こうしたマインドと技術の重なりあう営みが短期間で繰り返し行われることで、学内の部署の垣根や上下関係を乗り越えて、学生のために連携しあう貴重な経験を得たと捉えています。」(新山課長)

大学における教育DX推進の代表的ケースに

東洋大学との協力体制がプロジェクトを成功に導いたとアクセンチュアでも考えています。アクセンチュアの東野 由起子(ビジネス コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ テクノロジー戦略 プラクティス マネジング・ディレクター)は次のように振り返ります。

「東洋大学の方々が本当に学生のためを思い、解決すべき課題を本音でぶつけてくださいました。当社も含むワーキングチームのメンバー全員が常にフラットな状態でプロジェクトを回せたところに成功要因があったと思います」(東野)

また、佐藤 卓也(テクノロジー コンサルティング本部 ITソリューション Mobile App Studio日本統括 アソシエイト・ディレクター)は、東洋大学のコミットメントと強い思いがあったからこそ、プロジェクトを成功裏に進めることができたと言います。

「私は開発プロジェクトがスタートする1カ月前に合流したのですが、その時点では決まっていないことも多くスケジュール通りに進めることは難しいと感じていました。しかし寺田常務理事や新山課長と話すなかで、この方々と一緒にプロジェクトを進めれば成功するだろうと考えを改めました。寺田常務理事から『問題があればその場でジャッジしてほしい。すべては私が責任をとる』と仰っていただいたことは心強かったです」(佐藤)

もちろん、そうした思いだけで成功に結びつくとは限りません。推進メンバー間で共通の認識を持つことができるかも重要となります。三田 絵美子(テクノロジー コンサルティング本部 シニアマネジャー)は、そうした観点からも今回のプロジェクトは「学生主体で進める」「失敗を恐れずに挑戦する」といった指針が掲げられ、マインドが共有できたと言います。

「ワーキングチームに関わるメンバーが多かったにもかかわらず、プロジェクトが予定通り進んだのは、みんなが共通の認識を持てる土壌が醸成されていたことが大きな理由のひとつだと考えています。実際の開発時にはステークホルダーとの調整や技術面のハードルなど多くの課題が発生しましたが、メンバー全員で知恵を出し合い迅速に解決ができました」(三田)

4ヵ月

開発に要した期間

成果―創出された価値

大学におけるDX変革の第一歩に

学生主体に進めることを第一に考えた今回の東洋大学公式アプリの開発により、教育機関におけるDX促進の一歩となりました。

「アクセンチュアの熱意は各部署にも伝わり、このアプリをスタート地点として教育DXが進んでいくのだという意識が醸成されました。これは東洋大学にとって非常に大きな成果だと感じています」(寺田常務理事)

こうして学生一人ひとりのニーズに寄り添い支えることを目的としてサービスを開始した「東洋大学公式アプリ」は、様々な成果を創出しています。

高い使用率と窓口問い合わせの大幅な減少

2022年4月1日のサービスリリースから約2週間で新入学生の98%がインストールを完了し、現在では全学生の約9割がアプリを活用しています。例年に比べ、キャンパス窓口への学生からの定型的な問い合わせは大幅に減少し、職員の業務負荷軽減にもつながっています。

情報の一元化

これまでパソコンや紙媒体でしか得られなかった、履修、成績、サークル、留学、就職に関する学内情報の全てを東洋大学公式アプリに集約しているため、学生からも便利になったというポジティブな反響をいただいています。

学生体験の向上

学生の学修の成果や目標の管理にも活用できる機能を搭載していることで、学生自らがこのアプリを通じてキャンパスライフを記録するようになり、学生体験の向上にも寄与しています。

災害時の迅速な安否確認の実現

安否確認、緊急連絡機能により、大規模災害や事件等の緊急時に瞬時に大学から連絡し、学生の安否確認を行うことができるようになりました。

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98%

新入学生がシステムを活用する割合

アクセンチュアの根本 武(ビジネス コンサルティング本部 コンサルティンググループ マネジング・ディレクター)はこう総括します。

「今回の開発プロジェクトは東洋大学公式アプリを開発することでしたが、ここまで現場の方々がしっかりと入り込み、コミットメントをもって動いていただけたプロジェクトは、きわめて数少ないケースです。今回の事例は、大学が学生の体験をとくに重視して進めたという点で、他の大学がこれから教育DXを推進するうえでも大いに参考となるはずです」(根本)

根本 武 ビジネス コンサルティング本部 コンサルティンググループ マネジング・ディレクター ※写真撮影時のみ、衛生面に配慮した上でマスクを外しております。

アクセンチュアは今後、東洋大学公式アプリを通じて収集されるデータを分析し、AIの活用も視野にサービス拡張を続けてまいります。

左から東野、根本、新山氏、矢口氏、寺田氏、三田、佐藤
※写真撮影時のみ、衛生面に配慮した上でマスクを外していただいております。

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