調査レポート

概略

概略

  • 2005年から毎年、アクセンチュアは世界各国の消費者にアンケート形式で実施する「グローバル消費者調査」をレポートしています。2021年は金融・保険・製造・小売・医療・観光・インフラなど14業界を対象に、世界22カ国、約2万5,000人(うち日本より約1,200人)から回答が得られました。
  • 新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに、この18カ月間で約50%の消費者が自らの目的意識を見直し、人生で何が重要かを考え直しました。この「消費者のパラダイムシフト」により、購買の意思決定が大きく変化しています。
  • 消費者は、これまで重視していた「価格・品質」から、「健康と安全」、「製品製造の背景」、「簡便性と利便性」、「信頼と評判」といった新たな価値観を重視するように変化しました。この新しい価値観に対して、企業には最大限の配慮が求められており、この変化は新たな収益獲得の大きなチャンスでもあります。
  • 日本のようなパンデミックに対する規制の緩い国々では、こうした新しい価値観の消費者はまだ主流にはなっていないものの、今後は変化していくことが予想されます。さらなる消費者の変化に向けて、企業は顧客中心のビジネスモデルへ変革することが急務となっています。


5つの新たな価値観と企業に求められる配慮

新型コロナウイルスによるパンデミックは、世界の消費者の価値観・目的意識を劇的に変化させました。アクセンチュアが世界22カ国、約2万5,000人の消費者を対象に実施したアンケート調査によると、パンデミックを機に自らの目的意識を見直し、人生で何が重要かを考え直したと回答した消費者 ― "Reimagined Consumers"は約50%に上ります。

この「消費者意識のパラダイムシフト」に伴い、消費者の購買意思決定も大きく変化しました。これまでの購買意思は価格・品質を重視して決定されていましたが、それ以上に ①健康と安全、②パーソナルケア、③簡便性と利便性、④製品製造の背景、⑤信頼と評判という5つの新たな価値観が、消費者の購買意思決定に大きな影響を及ぼし始めています。

①健康と安全

消費者の健康・安全・幸福への寄与

②パーソナルケア

インタラクションの活性化を通じた個のニーズ充足

③簡便性と利便性

媒体や取引の起点・終点を固定しないエブリウェア・コマース

④製品製造の背景

サステナビリティや特定コミュニティへの寄与

⑤信頼と評判

企業の誠実性や自身の価値観や優先順位との一致

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日本でも始まった消費者のパラダイムシフト

このような消費者のパラダイムシフトはグローバルで見られ、とりわけパンデミック対策としてロックダウンを実施したような行動規制の強い国々では、消費者の価値観の変化が顕著です。一方、規制の緩やかな国々でも変化が顕在化しつつありますが、まだReimagined Consumersが多数派になるまでには至っていません。

26%

なかでもコロナ禍の影響が比較的小さい日本では、Reimagined Consumersが約26%にとどまっています。

30%

ただし年代別にみると、比較的若い世代(18-34歳)ではReimagined Consumersの割合が約30%に達するなど、消費者意識の変化が着実に訪れていることが見て取れます。

20%

それ以外の年代(35歳以上)においても20%を超えており、すべての世代にわたって、消費者のパラダイムシフトが起こりつつあることがわかります。

Reimagined Consumersが購買意思決定において重視する価値観そのものは、国の行動規制の強弱によらず、概ね近しい傾向を示しており、日本においてもすでに購買行動の変化が顕在化し始めていると言えるでしょう。

よって日本は、グローバルで起きている消費者のパラダイムシフトを後追いしている状況と見ることができます。これは日本市場でビジネスを展開する企業にとって、これから加速するであろう消費者の価値観の変化に対し、先手を打つ余地があり、そこにビジネスチャンスがあることを示しています。

日本特有の消費者意識を理解する

Reimagined Consumersの購買意思決定には日本でも世界同様の変化が見られる一方、企業とのコミュニケーションに対する価値観、実生活へのテクノロジー活用意欲、サステナビリティへの関心といった部分においては、日本特有の事象・差異が見られます。その一つが、「製品製造の背景」です。これは従来、日本ではあまり重視されていない項目でしたが、パンデミックを機に重要性が増し、サステナビリティへの意識が強くなってきています。例えば、消費財では、サステナビリティに寄与する製品・サービスや、地方で作られた製品・サービスに対する追加支払の意欲が他の国々よりも高いという調査結果が出ています。

また、「簡便性と利便性」の価値観の中で日本は他の国々より実生活にAIを導入する受容度が高いという特徴があります。これはReimagined Consumersに限ったものではなく、すべての消費者層に共通している結果です。AI導入では後れを取ってきた側面もあることから、パンデミックを契機として、AI導入の機運が加速することも予想されます。

日本市場でビジネスを展開する企業が収益機会を獲得するには、「パラダイムシフトする消費者(顧客)の声を聴き、顧客体験をReimagineする(とらえ直す、つくり直す)」というサイクルを素早く回転させることが極めて重要です。

消費者のパラダイムシフトを企業のチャンスへと変える

顧客中心のビジネスモデルへ変革する「3つの条件」

加速度的に変化する消費者の声をしっかりと聴き、アジャイルに顧客体験をReimagineする(とらえ直す、つくり直す)ためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

  1. 顧客の声を聴き、届けたい価値・体験が明確になっていること
  2. 届けたい体験・価値を、共感を呼ぶストーリーに昇華し、具体的な商品・サービスを通じて価値・体験として提供できること
  3. そうした価値・体験を継続的かつ素早く提供するために、データ・テクノロジーを駆使し、アジリティを持った企業活動ができる姿に企業自身も変革していくこと

Nikeの事例に学ぶ

このような顧客中心のビジネスモデルへの変革に取り組んだ企業として、大手スポーツ用品メーカーのNikeの事例を紹介します。同社は2017年から消費者直接取引(D2C)に注力し始め、「2倍のイノベーション、2倍のスピード、2倍の直販」を目標に戦略を策定し実行しています。その結果、過去6年間で競合他社を大幅に上回る企業価値の向上を実現し、コロナ禍によって多くのスポーツイベントが中止になった2020年も、顧客と需要の変化にうまく適応することができました。ここ10年間で売上高は2倍強に増加、営業利益率も高い水準を維持しており、2020年は若干の売上減少があったものの、2021年は再び成長軌道へと戻しています。

Nikeは具体的に以下のような施策を展開しました。

  1. 顧客の声を聴き、届けたい価値・体験が明確になっていること
  2. まず、顧客データを「Nikeアプリ」に集約・統合。購買履歴だけでなくトレーニングや行動履歴に基づいた「運動意欲を刺激するコンテンツ」を提供しています。また「すべてのアスリートにインスピレーションとイノベーションを提供する」というNikeの存在意義(パーパス)を示すために、「Breaking Barriers(障壁を破る)」という明確なブランドメッセージを発信しています。

  3. 届けたい体験・価値を、共感を呼ぶストーリーに昇華し、具体的な商品・サービスを通じて価値・体験として提供できること
  4. さらに、店舗チャネル改革に着手。さまざまな直営店フォーマットを用意し、自社のストーリーを伝達しながら顧客体験の幅を広げようとしています。同時に顧客とダイレクトにつながるデータを取得するため、従来は3万社もあった小売パートナーをわずか40社に絞り込む施策も進めています。

  5. そうした価値・体験を継続的かつ素早く提供するために、データ・テクノロジーを駆使し、アジリティを持った企業活動ができる姿に企業自身も変革していくこと
  6. そして、大胆な組織改革を断行しました。レポートラインをNikeブランドに集約し、D2Cをリードするダイレクト部門を中核に据える体制に変更しました。顧客を理解するためのアナリティクスや基盤技術、3Dスキャンといった製品開発や顧客サービスにつながるテクノロジーを、パートナーとの提携・M&Aによって加速させているのも、Nikeの大きな特徴です。

まとめ

ビジネスモデル変革のためのチェックリスト

アクセンチュアは、グローバルで豊富なビジネスモデル変革に携わってきた経験と実績をベースに、顧客中心のビジネスモデルへの変革を目指す日本企業に向け、提言をまとめたチェックリストを作成しています。自社の現在地を正しく捉え、パラダイムシフトが生み出す収益機会を獲得するために、ぜひご活用ください。

小林 正寿

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ カスタマー&セールス プラクティス マネジング・ディレクター


松下 亮介

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ シニア・マネジャー


石原 正敏

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジャー

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