調査レポート

概略

概略

  • 日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)取り組み状況、DX推進上の課題、ベストプラクティス企業の特徴を業種別・企業規模別に把握する目的で実施した「DXサーベイ」の調査・分析結果をレポートします。
  • 調査対象の全業種(10業種)のうち、テクノロジー・IT業界、製造業、広告・マーケティング業界がDXの取り組みを進めています。ヘルスケア、飲食、小売、人材派遣の各業界は取り組みが遅れており、とくに「顧客体験のデジタル化」「オペレーションのデジタル化」「トランスフォーメーション」が課題となっています。
  • 企業規模別では、大企業は中堅・中小企業よりもDXの取り組みが進んでいます。ただし、エコシステム構築は大企業も十分に進んでいません。中堅・中小企業は、DX構成要素全般を通じて成熟度が低く、DXに係るあるべき姿の検討に着手し始めている段階です。
  • ベストプラクティス企業は、経営アジェンダとしてのDXの重要性、先端テクノロジーの活用、新規事業の必要性に対する認識が高く、DX推進のポジティブな動機になっています。また「失敗を恐れずにチャレンジする」という企業風土も見られます。その結果、新規事業の創出や売上拡大などの財務成果が得られています。


DXサーベイの概要~DX推進に必要な要素を定義して調査結果を分析

経済産業省が「DXレポート」を2018年9月に公表してから、現在にいたるまで多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みを加速させています。2020年12月には「DXレポート2(中間取りまとめ)」が公表され、これまでのDX推進状況やコロナ禍を踏まえたDX加速シナリオ、DX加速に向けた企業のアクションと政策などが示されました。

しかしながら実際には、DXの取り組みが進んでいる企業はまだ少数だとも言われています。そこでアクセンチュアでは、DX取り組み状況、DX推進上の課題、ベストプラクティス企業の特徴を把握し、「DXをさらに推進するためには何が必要となるか」を考察するために、幅広い業種・幅広い規模の企業の管理職を対象に「DXサーベイ」を実施。日本企業から8,750件のサンプルを回収しました。

今回の調査を実施するあたり、アクセンチュアではDXに関連する5つのカテゴリーとして「ビジョン・戦略」「トランスフォーメーション」「顧客体験のデジタル化」「オペレーションのデジタル化」「デジタルケイパビリティの強化」を定義しました。これらのカテゴリーは“真”のDXの実現に向けて、DX機能を立ち上げ・推進する際にCDO(Chief Digital Officer)が考慮すべきものです。この5つのカテゴリーにはそれらに紐づく23の「DX構成要素」が含まれており、この枠組みに沿って業種別・企業規模別に分析を行いました。また、DXの成熟度が高く、財務成果として利益率改善効果を実現できているサンプルを「ベストプラクティス企業」として集計し、それ以外の企業とどういった点が異なるかを分析しています。

DXの取り組みは、テクノロジー・IT、製造業の大企業が先行

まずは調査結果から全業種・全規模の「DX成熟度」の状況を見てみましょう。業種・規模を問わず、DXビジョン・戦略策定、バックオフィスのデジタル化、サイバーセキュリティの強化などは、どの企業でも進められています。しかし、DXを実現する上でのエコシステムの構築や研究開発領域、顧客体験のデジタル化の取り組みは遅れているようです。

全業種・規模別のDX成熟度の状況

図:DX成熟度の状況(全業種・全規模)

DX成熟度について業種別に見てみると、テクノロジー・IT業界が他業界よりも抜きん出てDXを推進しています。次いで製造業、広告・マーケティング業界が続き、逆にヘルスケア、飲食、小売、人材派遣業界はDX推進が遅れていることが分かりました。とくに「トランスフォーメーション」「顧客体験のデジタル化」「オペレーションのデジタル化」は進んでいません。一方、DX成熟度の状況を企業規模別で見ると、大企業ではDXの取り組みが進んでいるものの、中堅・中小企業は総じてDX成熟度が低く、ようやくあるべき姿の検討などに着手し始めた段階です。ただし、大企業でもデジタルプレイヤーとの連携などエコシステム構築はやや遅れている状況です。

業種別DX成熟度の状況

図:DX成熟度の状況(業種別)

DXによる売上拡大効果を見ると、DX成熟度が高いテクノロジー・IT業界では22.6%の企業が10%以上の効果が得られていると回答しています。一方で成熟度が低い飲食、小売、生活関連サービス業界の中にも、効果が得られている企業が一定数存在しており、DX取り組み状況による優劣・勝敗も表れ始めていることが窺えます。企業規模別では、規模が小さくなるにつれて効果が表れていない割合が増えますが、中堅・中小企業でもDXに取り組んで10%以上の売上拡大を実現した企業が1割程度存在しています。

売上拡大・業種別DXの財務成果

図:DXの財務成果(売上拡大・業種別)

今回の調査では、DXを推進するうえでの課題も特定しました。企業規模にかかわらず、多くの企業が課題だと認識しているのが「適切なスキルを持った人材がいない」ということです。大企業では自社人材だけでなく、外部の専門ベンダーやコンサルティング会社との連携、あるいはDX専門人材を新たに採用することで対応する企業もありますが、中堅・中小企業では自社人材だけに頼る傾向が強く表れています。また、企業規模が小さくなるにつれ、初期コスト、ランニングコストなどコスト面の課題を挙げる企業が増えていく傾向にありました。

規模別DX推進上の課題

図:DX推進上の課題(規模別)

ベストプラクティス企業は、DXソリューションの導入を収益拡大につなげている

今回の調査結果に基づき、DXによる財務成果について様々な分析を行いました。

売上拡大効果とDX成熟度の関係を業種別に分析してみると、各業種によって売上拡大効果に寄与するDX項目数・内容は異なっており、テクノロジー・ITや製造業では寄与する項目数が多く、サービス・流通では項目数が限られることが分かりました。これは利益改善効果とDX成熟度の関係も同様でした。

業種別売上拡大効果とDX成熟度の関係

図:売上拡大効果とDX成熟度の関係(業種別)

売上拡大効果とDX成熟度の関係を企業規模別に分析したところ、全規模に共通してDXの新規事業開発の売上効果が実現されている傾向が見られました。また大企業では「顧客体験のデジタル化」「オペレーションのデジタル化」でも有意な項目が多くなっています。利益改善効果とDX成熟度の関係では、全規模で「トランスフォーメーション」が利益効果につながっている傾向があります。

規模別売上拡大効果とDX成熟度の関係

図:売上拡大効果とDX成熟度の関係(規模別) 

では、DXの推進により効果が得られているベストプラクティス企業と、そうでない企業にはどのような違いがあるのでしょうか。

まず「DXに対する重要性の認識」について、ベストプラクティス企業は、DXが自社にとって「非常に重要」と考えている割合が、そうでない企業に比べて1.5倍も大きいことが分かりました。また「DX推進の背景」についても、ベストプラクティス企業は先端テクノロジーの活用や新規事業の必要性に対する認識が高いことも明らかになっています。こうした差異は企業風土にも表れており、ベストプラクティス企業はそうでない企業に比べ「失敗を恐れずチャレンジする」「部門間コミュニケーションが良好」といった風土を持つ企業が多いようです。

DX取り組みの背景

図:DX取り組みの背景 

DX推進上の課題を比べてみると、いずれも人材確保が最大の課題ではあるものの、ベストプラクティス企業はソリューションやベンダー選定への課題が大きいのに対し、そうでない企業は社内の意識が低いことが課題になっています。また、DXソリューションの導入状況について比較してみると、ベストプラクティス企業は全体的にソリューション導入率が高く、DXソリューションの導入を収益拡大に結び付ける戦略が奏功している様子がわかりました。

DXソリューションの導入事例の比較

図:DXソリューションの導入事例の比較 

まとめ ―― 企業のDX成熟度を評価するアセスメントを提供

アクセンチュアでは、今回のDX調査の分析データに基づいて、投資先(または投資見込先)企業のCEOCFO、経営企画トップの3名へオンラインアンケート調査を実施し、その企業のDX取り組み状況を簡易診断する「アセスメントサービス」を提供しています。

診断結果は、業種別のベストプラクティス企業と比較して何が遅れているのかを明確にし、5つのカテゴリーのうち、どの項目を優先的に取り組むべきかを特定します。さらに、「ビジョン・戦略」「トランスフォーメーション」「顧客体験のデジタル化」「オペレーションのデジタル化」「デジタルケイパビリティの強化」の5つのカテゴリー、23の構成要素に沿ったDXサービス/ソリューションを体系化して提供しています。

アセスメントサービスで提供するDXテーマ別成熟度のベンチマーク比較(サンプル)

図:アセスメントサービスで提供するDXテーマ別成熟度のベンチマーク比較(サンプル)

本調査について

本調査は、日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)取り組み状況、DX推進上の課題、ベストプラクティス企業の特徴を、業種別・企業規模別に把握する目的で、日本の企業8,750件に対し実施しました。本調査は、バイアウトファンドが投資先企業の価値を見極める指標として活用いただけるほか、DXに取り組む各企業が自社のDX取り組み状況を客観的に把握するためにも役立てていただけます。

上野 正雄

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター

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