課題―求める変化

大正製薬のチャレンジ

大正製薬は2019年7月、製薬大手の米国ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS社)傘下にあったフランスの医薬品製造販売会社UPSA SAS(UPSA社)の買収を完了しました。強固な経営基盤の構築を目指してセルフメディケーション事業における海外部門の強化に取り組んできた大正製薬は、解熱・鎮痛・消炎薬や総合感冒薬のトップブランド製品を有するUPSA社を子会社化したことにより、欧州地域における事業基盤を手に入れることになりました。

UPSA社の買収にあたり、大正製薬はBMS社との間でITシステムサービス提供における2年間のTSAを締結しましたが、大規模かつ複雑度の高い、基幹システムを含む200を超えるアプリケーション及びインフラストラクチャーと、ITオペレーションを含むIT組織の立上げを期間内に行う必要があり、また事業基盤のない欧州での立上げについて、BMS社・UPSA社とグローバル複数地域で連携しながらプロジェクト推進を行っていく必要がありました。

そこで大正製薬は、グローバルでのIT M&Aに豊富な実績を保有し、製薬業界に対する深い業務知識、製薬業界ITシステムに関する幅広い知見を有するアクセンチュアに対し、ITカーブアウトの支援を依頼しました。


M&AにおけるITの重要性

M&AにおけるITシステムの移行・再構築は非常にクリティカルな作業であり、アクセンチュアのグローバルリサーチの調査では、M&Aにおけるシナジーの4割はITから生み出されており、また統合にかかる作業コストのうち約5割はITのコストとなることが分かっています。また、グローバルでの300名のCIO/CxOに対するヒアリング調査の結果、M&Aに失敗する要因の約4割がITシステムの統合にあるという結果も出ており、ITはM&Aの成否を分けるクリティカルな要素となっています。

取り組み―技術と人間の創意工夫

アクセンチュアの役割

ITコスト・リスク評価のためのITデューデリジェンス

大正製薬から支援の依頼を受けたアクセンチュアM&Aプラクティスのチームは、買収前のITデューデリジェンスを実施し、UPSA社の主要なITシステムを把握の上で、移行・再構築に必要なコストの試算とリスクの評価、及びTSA締結に向けたTSA範囲と期間の妥当性の検証を行いました。

非常に限られた期間の中で、アクセンチュアのテクノロジーコンサルティングの知見も最大活用し、製薬知見・SI知見に基づく現実的なITコストの試算、及びシステム構築に必要な期間についての試算を行いました。

フランス現地オフィスとの混成チーム組成によるIT PMI

ITデューデリジェンスにてUPSA社のITシステムを把握した後、アクセンチュアは、買収後のITシステムのTo-BeデザインからTSA期間終了となる本番運用開始までトータルに支援するプロジェクトを立ち上げ、ITシステムのポスト・マージャー・インテグレーション(PMI:統合作業)に着手しました。

プロジェクトは、欧州地域のビジネス・法規制を理解したアクセンチュアのフランス現地チームとの混成チームを組成し、UPSA社・BMS社・大正製薬間でプロジェクトを進めるためのガバナンスを設計の上、UPSA社の事情や製薬業界固有要件を踏まえながら、マネジメント要件であるITシステムの簡素化・コスト削減の実現も視野に、TSA期間終了後にあるべきITシステムのデザインから着手しました。弊社製薬IT知見を最大活用しながら、UPSA社のITシステムに対し、グローバルスタンダートと照らし合わせた上でのTo-Beシステムの妥当性や、システムのマニュアル化、統廃合の余地を検討しながらデザインを行いました。また、その後はベンダー選定に向けたRFP(Request for Proposal:提案依頼書)の作成及び国内・国外を含むITベンダーの選定を行った上で、グローバルでの複数ベンダー管理をしながら、大規模かつ複雑度の高いシステムについて、システム間の依存関係なども把握し、要件定義から開発、テスト、移行、稼働までのプロジェクト管理及び稼働後支援を行いました。

また、ITオペレーティングモデル設計についてもアクセンチュアが支援を行い、統合後のIT組織のガバナンス及びITオペレーションの設計や、グローバルでのセキュリティポリシー策定について支援を行いました。

成果―創出された価値

大正製薬ではアクセンチュアの支援のもとにプロジェクトを推進した結果、TSA期間内にUPSA社の運営に必要なITシステム・ITオペレーションを立ち上げすることに成功し、ITシステムの本番運用開始後も、大きな業務影響・システム障害なく安定稼働を続けています。

また、大正製薬にとっての大きな成果は、BMS社傘下時と比較し、UPSA社のITシステム数を大きく削減できたところにあります。買収前と比較して約60%のシステム削減に成功しています。これにより、大正製薬が負担するITコストの大幅な削減につながりました。

更に、ITオペレーティングモデルの設計・構築により、予算管理・ベンダー管理・IT運用管理・セキュリティ管理等の各オペレーション毎の職務内容・役割分担が明確化され、大正製薬・UPSA社間でのITガバナンスが構築されたことにより、今後グループとして一体でIT部門の運営が可能な体制が整いました。

今後の展望

大正製薬では今後も、UPSA社の更なるITシステムの簡素化・最適化に向けた取り組みを進める方針です。また今回のUPSA社で立上げを行ったシステムをベースにしながら、グローバルでのシステム基盤共通化を図っていくことも視野に入れています。

アクセンチュアは大正製薬の成功事例を参考に、今後もグローバル展開を目指す日本企業のM&A戦略を支援していきます。

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