2020年4月(令和2年度)より、地方創生は新たなフェーズ(第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」)へと入ります。

地方創生における政策の多くで、「スマートシティ」は中心的な存在として掲げられています。しかし、日本には自治体が1700以上あり、各自治体のスマートシティ関連システムが標準化されず、バラバラに構築された場合、日本国民全体の利便性向上にならず、結果的に公益性を損なう可能性があります。(参照記事

日本政府は未来志向の持続的な「まちづくり」実現のために、スマートシティ・アーキテクチャの標準化を推進しています。2020年4月からは広域連携による一元化された行政サービスが段階的に展開されていくものと見込まれています。

アクセンチュアは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」第2期(SIP)/ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術におけるアーキテクチャ構築及び実証研究」の研究開発項目、「スマートシティ分野:アーキテクチャ構築とその実証研究の指揮」(SIP a-1)の委託先として、都市内・都市間で連携や横展開が可能な共通アーキテクチャを構築し、「スマートシティ分野:実証研究の実施」(SIP a-2)の委託先として、福島県会津若松市にて、行政と市民のコミュニケーションポータル「会津若松+(プラス)」を核とする行政サービスの実証実験をスタートしています。

この実証実験の成果は、来年4月から続々と全国展開していくフェーズへと入るでしょう。

実証実験を行う福島県会津若松市

実証実験を行う福島県会津若松市

世界で主流の3つのモデル

会津若松市の取り組みを始め、日本で進行中のスマートシティのモデルの多くは「地域主導」「市民中心」の2つのキーワードに集約できます。この他に企業が都市開発として主導するモデルもあります。

私たちが参照したデンマークのメディコンバレーモデルでは、市民から行政への「自主的なデータ提供」が一種の「文化・習慣」として浸透しており、地域の市民生活の利便性や産業の活性化に貢献しています。こうした市民参画を促進することもスマートシティの取り組みにおいて重要なポイントとなります。デジタルガバメントで先行するエストニアではほぼ100%の国民がe-IDを活用して行政手続きを瞬時に行うことができます。標準プラットフォームが整備され各サービスがすでにAPI連携できています。

海外のケースをモデル別に分類するならば、GAFAのようなプラットフォーマーが存在し「全レイヤーにおいて企業主導」のアメリカ式、「背後に国・政府がついてフロント側は企業が運営」する中国式が挙げられます。日本は「市民中心・地域主導」を基本に進められてきた、ヨーロッパでの取り組みを参考にしていくことが重要だと私たちは考えています。

会津若松市の協力による実証研究事業

先述のSIP a-2において会津若松市の協力のもと、アクセンチュアは株式会社ARISE analytics、TIS株式会社、株式会社アスコエパートナーズとの4社共同で、実証研究事業を推進しています。

この取り組みの目的は、コミュニケーションポータルを基盤とし、行政や企業が提供する様々なサービスを連携させていくことで、地域の市民生活全体を「より良く」していくことにあります。

モデルの中心にいるのは市民です。市民は自分自身のデータを持っています。市民がオプトインで承諾して自分のデータを提供することで、サービス提供者である行政や企業は市民1人ひとりに、よりパーソナライズされたサービスを提供できるようになります。このように、行政のオープンデータと市民の個人データをプラットフォーム上で掛け合わせることで、サービスの利便性をより向上させることができ、そのデータの集合体である地域ビッグデータは地域経営に役立てることができるのです。

実証事業①「医療費支払いのキャッシュレス決済」

TISと共同開発した「会津財布(ウォレット)」は、「会津若松+」のIDを活用する電子決済のアプリです。決済基盤はTIS決済サービスのトータルブランド「PAYCIERGE(ペイシェルジュ)」で構築され、決済サービス事業者、および金融機関と連携して決済を行う仕組みです。

「医療費支払いのキャッシュレス決済」の実証を目的として、一般財団法人竹田健康財団 竹田綜合病院の協力をいただきました。将来的には医療費だけでなく、行政手続きで発生する支払い作業を、ワンストップで実現できるようになる仕組みとして構想されています。

市民は自分のスマホで決済を一元的に管理したり、状況に合わせて使い分けしたりといった活用が可能になり、また個々の生活スタイルに適したサービスを受けられるようになります。

実証事業②「予防医療への貢献」

ARISE analyticsは、行政がもつヘルスケアデータやウェアラブルデバイスのデータなどを活用することで、市民が自らの健康診断結果などを可視化できるサービスを実証します。

目的は、市民が自らの健康状態や生活習慣を把握しやすくすることです。生活習慣病の発症を未然に防ぐ「予防医療」に貢献することで、市民の健康増進はもちろん、医療費の適正化につながるなど行政側にも大きなメリットがあります。

ポイントは「セキュアなデータ連携」と「市民自身の同意によるデータ提供(オプトイン)」の2つであり、都市OSとの連携を通じて検証していきます。

実証事業③「行政手続きの簡便化と、職員の負担減」

アスコエパートナーズとの実証事業では、「会津若松+」を基盤として会津若松市のさらなるデジタルガバメントの推進を目的として実施します。

市民の行政手続きでは様々な申請書が使われます。申請内容によって使われる書式は異なりますが、手続きする市民の「氏名の記入」という1点だけでも、児童手当の申請では「受給者」、一時保育の申請では「保護者」、乳幼児医療関係書類では「申請者」といったように項目名が異なっており、この差異が行政手続きを複雑にしています。

アスコエパートナーズが取得している特許を活用した「ペルソナリンクⓇ」は、これらの差異を吸収するシステムです。市民の個人情報を「ペルソナ」として連携可能なデータとして持つことで、書式が異なっていても重複するデータは1度の操作で一括入力できるようになるなど、市民の利便性が向上。行政の窓口担当者の業務効率改善にもつながります。

アスコエパートナーズではこの仕組みを「行政サービスOS」とし、民と官とが共に進める行政サービスのスマート化、すなわち「スマートパブリックの実現」を提唱しています。

私たちは本実証事業を通じ、地方創生第2期に向けて「日本のスマートシティモデルのあるべき姿」を形にしていきます。

中村 彰二朗

アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括

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