Skip to main content Skip to footer
ホーム

事例紹介

防衛の堅牢さを未来につなぐ。 「今」に呼応する柔軟性と即時性を実現していくDXを支援

わたしたちが普段意識することなく安全に過ごせている日常を「当たり前」とするため、海の防衛を担う海上自衛隊。その機密性の高い情報を扱う業務全般のDXを、アクセンチュアのセキュリティグループのメンバーが中心となり支援しています。

5分(読了目安時間)

課題ー求める変化

「海の防衛」を担う業務の特殊性と、国家機関ゆえの課題

四方を海に囲まれた日本にとっての生命線である、海洋の自由で安全な利用を守る海上自衛隊。「防衛」を主眼において必要となる多種多様な情報を扱う特殊性、国家機関としての伝統的な組織構造、また当然のことながら高度なセキュリティレベルを維持するため、各部門で利用するシステムはサイロ化しており、データ連携も固定的な「ニーズベース」で行われてきました。

それは、データを必要とする側が、データを保有する側とその内容や形式、受け渡し方法等について調整の上、データ取得する手法です。データセキュリティは担保されますが、要件の取りまとめ、関係各所との調整にかなりの時間と労力がかかっていました。また同時に、データのクオリティ、セキュリティ、メタデータ管理等のデータガバナンスも、各部門のシステムごとに閉じた形で運用され、同じデータを複数の部門、システムが異なるフォーマットで保有するという状況も生まれていました。

加えて、システム利用としては、民間でのシステム導入より長い歴史を持ち、その担う業務の特殊性から、改修や機能追加の繰り返しで大胆な刷新は難しく、結果としてそのシステムは堅牢でありながら、巨大なものとなっていました。このような背景から、その刷新には、膨大な時間とコストが必要となると見込まれていました。

国家機関の活動にかかる経費は、国会で承認される予算であり、海上自衛隊もその仕組みが適用される機関の一つです。そのため、システム刷新を実行するにも、当然予算要求が必要です。そのプロセスは、刷新構想から運用開始まで最低3~5年。データ連携を図るシステムは複数にまたがり、それぞれで予算要求タイミングは異なります。これらのタイミングの調整には時間がかかり、技術革新のスピードの速いDXは取り組むことが難しいとされていました。

また、世界の情勢に目を向ければ、他国ではAIを活用した作戦指揮統制処理や事務系処理等の検討や実践へ移行しており、これまで以上に、任務や業務の変化に柔軟・迅速に対応できるデータ連携の必要性が増大していました。

出典:海上自衛隊公式サイト JAPAN MARITIME PHOTOGRAPHY

取り組みー技術と人間の創意工夫

柔軟かつ強固、そして長く活用できる仕組みを構築

防衛機関である海上自衛隊のシステムは、当然のことながら一時的な停止や、それによる業務の中断も認められません。そのため、新たな仕組みの導入も可能な限り低リスクのものが求められました。また、今後のデータ連携の拡大を見据え、そのシステムは運用もメンテナンスも柔軟に対応できるものである必要があります。このような課題と要件について十分な検討の上採用されたのが、API利活用によるデータ連携です。

「ニーズベース」で行われていたデータ連携を担保しつつ、APIの利活用による「シーズベース」のデータ連携を可能とすることで、誰が何を必要とするのかという要件調整が不要となり、任務や業務の変化に応じて柔軟に必要なデータが取得できるようになります。システム利用やデータ連携に柔軟性と即時性を持たせられる上に、これまで要件調整まで至らなかったような潜在的ニーズに対しても、新たなデータの利活用を図ることが可能となります。

このようなデータ連携において要となるのがデータの質であり、その質を担保する仕組みです。

データ品質については、一定品質以下でのデータ連携によって起こりうる悪影響を考慮し、ISOやDAMAのフレームワークをベースにデータガバナンスの検討を進めています。また、データ品質を担保するため、APIの開発方針をまとめた「API開発標準」や、運用周りをまとめた「API基本ガイダンス」を作成しました。この2つのドキュメントは、アクセンチュアのサポートの元、幅広く関連情報を精査し作成され、今後も組織内で長く利用していけるものとして評価されています。

昨今の情勢から求められているのはスピード感と変化への対応力。アクセンチュアと海上自衛隊が相互理解を促進することにより、物事を進めるスピードも上がり、効率的にもなる。このような実践を一つの良い例として、今後もIT 利活用を推進し、隊員が効率的に少ない負担で任務遂行できる環境づくりをしていきたい。

防衛省 海上幕僚監部 指揮通信情報部長 海将補 吉岡 猛氏

情勢の緊迫化や少子高齢化に伴う人材不足の状況で、業務の効率化がより必要になっている。そのため、デジタル推進を始めとした新しい取り組みに対するハードルは下がっており、今が走り時。海自の強みを活かしながら、専門的な知見が得られることで、「変えていける」という実感もあり、面白味とやりがいを感じている。これを共有できる仲間を増やしていきたい。

防衛省 海上幕僚監部 指揮通信情報部 指揮通信課長 1等海佐 澁谷 芳洋氏

成果―創出される価値

AI利活用テーマの短期PJTチームで次の飛躍を

今回のDXの取り組みにより、データの質が向上し、しかもリアルタイムで各システムとの連携・処理が可能となります。その波及効果として、今後様々なケースで幅広いデータの利用が期待されています。

これにより、海上自衛隊では、これまで以上に質の高いデータを利用し、正確な情報分析・判断の礎となる情報の提供や、それに基づく業務の推進が可能となるのです。

また、事務的な部分に目を向ければ、連携するシステムごとの個別対応が不要になったことで、システム改修の経費削減と、予算調達の時間短縮を実現していけます。これにより、業務の大幅な効率化や生産性の向上拡大を望める環境が整ってきています。

海上自衛隊では今後、この環境を背景にデータセキュリティ、メタデータ管理を始めとするさまざまなデータ管理を実現するための専門組織を設立し、そのデータマネジメント組織を中心に海上自衛隊全体のデータコントロールを推進しようとしています。その一つとして、始動しているのがAI利活用をテーマとした短期プロジェクトチームです。募集人員に対し40倍の応募を記録したこのプロジェクトでは、AI利活用に係るガバナンスルールの策定を始めとして、AI利活用推進の流れを作り、1年の活動を経た後、次の展開につなげようとしています。

「まだ道半ばだが、ここまでできたからこその”伸びしろ”が見える」(澁谷指揮通信課長)、「海自というと、船や飛行機に乗ることを思い浮かべる方も多いでしょう。それだけではなく、我々のようにITやDX、AI利活用を推進している部署もあります。それをもっと皆さんに広く知っていただければ」(吉岡指揮通信部長)。この言葉と想いを形にするDXは、今、着実に推進されています。

「プロジェクトを進めていく中で、こちらからもいろいろな新しいアイディアが出てきている」(防衛省 海上幕僚監部 指揮通信情報部 指揮通信班長 1等海佐 水野 達彦氏)。「新しいアイディアや取り組みに対し、共に挑戦させていただくことがメンバー一同の刺激となっています」(アクセンチュア大井田)。

アクセンチュアは、お客様へのご支援を通し、ひとつのチームとして相互に刺激し合い共に成長できることを誇りに思い、海上自衛隊のさらなる価値創造へのご支援を推進していきます。

「ワンチームとして一緒に」(左から:榎本、海上自衛隊 水野班長、吉岡部長、澁谷課長、大井田)

リーダー紹介

藤井 大翼

執行役員 テクノロジー コンサルティング本部 セキュリティ日本統括

増元 竜二

公共サービス・医療健康本部 マネジング・ディレクター

大井田 祐二

テクノロジー コンサルティング本部 セキュリティ グループ マネジング・ディレクター