消費財業界の最高マーケティング責任者(CMO)は、その優れたブランディング構築力で、これまで高い評価を得てきました。ブランドを消費者の日常生活の一部にすることで、他のあらゆる業界を凌駕してきました。しかし、この偉業自体が過去のものになりかねない時期に来ています。

新たな消費者を獲得する上で有効だったこれまでのマーケティング業務に関しては、消費財業界のCMOは依然として他の追随を許しません。とはいえ、彼らは得意とするマーケティング業務に重点を置くあまり、新たな成長に目を向けない傾向があります。しかし、最高経営責任者(CEO)が事業の最優先課題に掲げているのは、新たな成長です。

消費財業界のCMOは、今こそこれまで自社で定着してきた従来のマーケティングから脱却し、変化し続ける顧客ニーズに対応する「リビングビジネス」企業へと新たに舵を切る必要があります。つまり、従来のデジタルマーケティングも重要ですが、もはやそれだけでは不十分であり、モノから体験を提供するという、エクスペリエンス・マーケティング組織にチームを導くことが重要です。

他業界のライバルと比べて、消費財業界のCMOは新たな収益成長源を発掘することに大きな関心を持っています。しかしながら、彼らの多くがディスラプティブな成長の実現に投じる時間は、2年前に比べて減っているのが実情です。これは単に努力が不足しているのではなく、従来の業務と新たな業務への優先度が拮抗しているのです。

52%

「企業のディスラプティブな成長をするのはCMOに依存する」と回答した消費財企業のCEOの割合。

65%

「重要なテクノロジーやツールの欠落が、パフォーマンスの向上を妨げる最大の要因である」と回答した消費財大手のCMOの割合(業界平均を16%上回る数値)。

55%

「自社にイノベーションや試験的取り組みを推進する文化がない」と回答したCMOの割合。

61%

「急速に変化し続ける今日の環境で求められる、より俊敏な組織とオペレーションモデルを構築することができない」と回答したCMOの割合。他業界のCMOの平均を12%上回る数値。

「リビングビジネス」企業を目指す

今後CMOは、日々のニーズに注力する従来のアプローチではなく、自社に価値を生み出す新たな手法を実現する必要があります。つまり、プラットフォームプレーヤーとの協働や、部門間のサイロの解消、人工知能(AI)、アナリティクスといった先進テクノロジーを賢く活用していく必要があります。これらの手法を統合的に用いることで、消費者との距離を縮め、高いレリバンスを大規模に提供できる組織へと変革することができるはずです。

消費財企業のCMOが今後も高い評価を得ていくには、自社に適したさまざまな変革アプローチを統合的に用いて新たな成長を支える収益源を生み出すことが何よりも重要になります。それには、「リビングビジネス」企業となり、自社で従来のマーケティングを見直し、自社の未来の成功を支えていかなければなりません。

別の方法か、より良い方法か

私たちの調査では、消費財企業のCMOは他業界の企業に比べて、新たな収益源の発掘にあまり注力できていないことが明らかになりました。 消費財企業のCMOが他業界の企業に劣っているのではなく、単に従来のタスクに多くの時間を取られていることが原因とみられます。現に消費財企業のCMOに今の優先課題を尋ねたところ、イノベーションの実現ではなく、マーケティング業務のコスト削減であることが分かりました。イノベーションに焦点を当てているCMOは、消費者にとって最適な製品・サービスを開発し、消費者とのレリバンスを高めていかなければならないと認識しています。

新たな価値提供の可能性を見極め、そこに投資するのは簡単なことではありません。従来の業務と新たな取り組みを並行して進めることができず、新たな取り組みを犠牲にしてしまうCMOもいます。その理由は、より良い方法を模索するのではなく、別の方法を試そうとしているからです。つまり、両者の最適なバランスを見極め、新たな取り組みを従来の業務よりも優先して行えるようにすることが、成功のカギを握ります。新たな価値からは、豊富な機会がもたらされます。ただし、その機会を活かしきるためには、消費財企業のCMOには最新の「工具一式」が必要です。

マーケティング変革には適切なツールが必要

新たなマーケティングモデルを実践するには、適切なツールが必要です。しかし、消費財企業のCMOの多くは、未だに新たな成長に寄与しないレガシー・システムとプロセスに依存しています。テクノロジーは新たな価値を提供する基盤となる俊敏性を高める上で大きな役割を果たします。消費財大手のライバルである小規模なデジタルネイティブは、こうした俊敏性をすでに身につけています。また、CMOが消費者との距離を縮めていく過程では、テクノロジーだけではなく、適切な人材も必要となります。さらに、組織内のサイロの解消も欠かせません。



新たな取り組みの実践に向けたマーケティング組織全体の変革は、そう簡単にはいかないはずです。しかし、リビングビジネスの原則を活かし、その主な価値の創造に注力できるCMOは、自社の魅力を最大限に高めることができるでしょう。

将来的な成長をテーマに取り組む

真のリビングビジネス実現を目指す企業は、絶えず変革を推し進めていく必要があります。CMOは組織全体に目を向け、オペレーションモデルを見直しながら顧客中心の文化を育んでいくことが重要です。

旧来のマーケティングにとらわれない

AIやアナリティクスといった先進的なテクノロジーを導入することで、CMOは旧式のテクノロジーから解放され、新たなオペレーティングモデルを実践できるようになります。そうすることで、顧客に応じてカスタマイズされた魅力的な体験を生み出せるようになります。

役割と働き方の再考

従来の業務から新たな取り組みへの変革に合わせて、スキルと役割を見直すことも大切です。また、新しいスキルを導入するには、顧客とのより緊密なつながりを確立するために、新たな人材とCMOのスキルアップが必要です。

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調査について

本調査は、さまざまな業界の935名のCMOおよび564名のCEOを対象としたオンラインアンケートおよびインタビューで得られた回答をまとめたものです。回答者には、消費財企業の経営幹部116名が含まれます。

著者について

Marcello Dalla Costa

CPG Practice Lead, Managing Director – Customer Insight and Growth


Nicholas Diamond

Managing Director – Accenture Strategy


Renee Sang

Managing Director – Consumer Goods and Services


Nevine El-Warraky

Co-CEO – Brand Learning, Managing Director – Accenture

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