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調査レポート

Accenture Life Trends 2024

人々の世界は目に見える・見えない影響によりどう変化しているか?

10分(読了目安時間)

2024/02/29

概略

  • 人々、テクノロジー、ビジネスの関係は揺らぎ、社会は流動的になっています。

  • Accenture Life Trends 2024では、顧客志向の減退、生成AIの影響、「クリエイティブ不況」の姿、テクノロジーの恩恵と負荷のバランス、そして人々の人生における目標の変化を5つのトレンドで探ります。

  • 今後12か月間とそれ以降にビジネスとブランドにとって機会となり得るインサイトの詳細をレポートでご覧ください。

解体と再構築の始まり

何を考え、何を感じ、世界とどのように関わるか…人々は生活を送る中でテクノロジーツール、ストーリー、ブランド、他者などさまざまな外的要因から影響を受けます。​

各トレンドでは、社会の流動化も促すそれらの外的要因の変化を掘り下げています。人々は流動的な社会の中で、自分が何者であるのかを見極めようとあらゆるものを解体再構築していることが分かりました。

デジタル上のインタラクションにインテリジェンスの新たな層が加わりつつある一方、人々はこれまでの経験からテクノロジーとの関係を見直しています。人々、テクノロジー、ビジネスの間の調和が揺らぎ始めているのです。

Accenture Life Trendsでは、人々がブランド、企業、政府、そして社会システムに関わる方法を変え得るさまざまな要因を探っています。

さて...どこから始めましょうか?

5つのトレンド

1. 愛を取り戻せ

多くの企業でコスト削減が必要とされ、顧客志向であることの優先順位は下がりました。顧客はそれに気づいています。

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2. インターフェース革命

生成AIは人々のインターネット体験をトランザクション的なものからパーソナルなものへとアップグレードし、これまで以上にデジタル上で理解され、つながりを感じられるようにしています。

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3. 創造性の逆境

クリエイティビティはかつてオーディエンスのためのものでしたが、いつの間にかテクノロジーに依存するようになりました。これが「クリエイティブ不況」の姿でしょうか?

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4. テクノロジーの飽和点

テクノロジーは人々のために存在するというよりも、むしろ人々に対して一方的に起こっているもののように感じられます。自らの日常生活にテクノロジーが及ぼす影響に対して、人々が主体性を取り戻すような転換は始まるのでしょうか?

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5. 成功神話の解体

人生におけるニーズや機会、そして私たちの生活を制限する要素は大きく変わりました。従来の生き方は過去のものになり、生活者像にも変化が現れています。

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トレンド1:愛を取り戻せ

多くの企業でコスト削減が必要とされ、顧客志向であることの優先順位は下がりました。顧客はそれに気づいています。

優れた顧客体験は収益成長につながるため、企業は長年にわたりあらゆる意思決定の中心に顧客ニーズを据えてきました。成長のために顧客体験が重要なことは変わりませんが、経済的に困難な状況を受けて企業は妥協を強いられ、その結果として顧客も打撃を受けています。不当な扱いを受けていると感じる顧客もいる中、ブランドにとって「自社の商品を顧客の買い物カゴの中に入れ続けてもらう」ことは大きな挑戦となります。

「企業は値上げを顧客に転嫁することなく、コストと利益のバランスを取る方法を見つけるべきです」

Yaotao(30~39歳、中国)/ Accenture Life Trends調査(2023年8月)

収益性なしに企業は長く生き残れません。緊迫した経済状況の中でコスト削減と利益確保に奔走し、生き残るために厳しい決断を下した結果、顧客体験を犠牲にせざるを得ませんでした。

質やサイズの低下(シュリンクフレーション/Shrinkflation)、サービスの簡略化(スキンプフレーション/Skimpflation)、カスタマーサービスの不足、望まないサブスクリプションなどが重なり、ブランドが顧客志向の約束を静かに反故にしているのではという疑いが広がっています。このトレンドの中心には、重大な認識のずれが存在します。企業が見出した生き残るための戦略を、企業のエゴと捉える顧客がいるのです。

ブランドも顧客もコストの削減を迫られています。もしブランドが質の低いものをより高い価格で提供し続ければ、顧客の不満はすぐに蓄積し、長期的に健全で成長性があり持続するブランドの実現は難しくなります。家計が圧迫されればブランドへのロイヤリティは弱まり、価格と価値が最も影響力を持つ要素となります。そこでは、「流動的な疑念」という新たなリスクも浮上します。「流動的な期待」(目の前のサービスに対して常に最高のデジタル体験と比較した期待値を持つ)と同様に、「流動的な疑念」は顧客があるブランドによって失望させられると他のブランドすべてに対して警戒心を抱くようになる、というものです。

47%

の人がカスタマーサポートにつながらなかったり、カスタマーサポートの対応が悪かったりしたときに「顧客として大切にされていない」と感じる

顧客を遠ざけてしまうほどの効率性は、もはや効率的とは言えません。企業は成長への道筋を拓くために顧客体験に改めて焦点を当てなければなりません。部署横断で顧客体験のオーナーシップを共有することで、サービス、マーケティング、デザインにおいて一貫した価値を提供するための最適なチームを編成しましょう。顧客の不満につながる課題を取り除き、ブランドの価値を示すために投資し、マーケティングの4P(price、product、promotion、place)に立ち返ることで新たなバランスを見出すことが前進への道です。

考えるべきこと

マーケティングファネルのタッチポイント全体で顧客体験を犠牲にしたことによって、顧客からの信頼、コンバージョン率、長期的なロイヤリティを危うくしていませんか?

すべきこと

顧客の感情面でのフィードバックを反映する仕組みを作りましょう。顧客の感情の変化を把握するためにどのようなツールを導入していますか?

トレンド2:インターフェース革命

生成AIは人々のインターネット体験をトランザクション的なものからパーソナルなものへとアップグレードし、これまで以上にデジタル上で理解され、つながりを感じられるようにしています。

情報や意見の収集、コミュニケーション、買い物…人々がインターネットを何に使うのであれ、その方法は大きくアップグレードされようとしています。生成AIは大規模言語モデル(LLM)を使って双方向のインテリジェントな会話を提供し、人々の「I want a(私は~が欲しい)」ではなく 「I want to(私は~したい)」の答えを提供しています。このようなやり取りを通して人々はより的確な言葉を選ぶことができるため、AIは人々への理解を深められます。

「新しいAIによって新しい働き方や調べ方が可能になり、世界を発見する新たな方法が生まれたことを感じます」

Pedro(22~29歳、ブラジル)/ Accenture Life Trends調査(2023年8月)

オンライン上で人々が自分を深く理解してもらっていると感じながら、個人にとって適切な製品、サービス、体験を見つけることがかつてなく容易になるでしょう。企業にとってこのように柔軟でニュアンスに富んだテクノロジーは、共感できる人間らしいブランドの姿を形作り顧客と有意義な関係を築く格好の機会になります。

39%

18~34歳の回答者の39%が、標準的なインターネット検索よりも会話による回答に期待を寄せている

42%

回答者の42%は会話型AIによる商品のレコメンデーションを受け入れられる​

ブランドは自らに、「自社ブランドの化身はどうあるべきか?その個性は?それはどのように具現化されるべき?」と問わなければなりません。この問いに答えるには、ブランドの特性に関する深い知識が必要です。

変化のペースは落ちそうもないため、ブランドは大規模言語モデル(LLM)で何ができるかを考えるべきです。このテクノロジーを上手く活用するブランドこそ、人々がかつてないほど「理解されている」と感じると同時にブランドへの理解も深めるような関係を築くことができるでしょう。

考えるべきこと

すべてのデジタルインターフェースにおいて、ユーザーが検索して製品やサービスを見つけ、それを利用する中で感じる一般的なペインポイントは、ブランドやプラットフォームにとってチャンスを見出す場所になります。

すべきこと

生成AIは単なるテクノロジーのイノベーションではなく、人間の行動や期待の変化を意味します。企業にとって適応することがとても重要です。急速な変化であることを念頭に、すぐに行動に移しましょう。

トレンド3:創造性の逆境​

クリエイティビティはかつてオーディエンスのためのものでしたが、いつの間にかテクノロジーに依存するようになりました。これが「クリエイティブ不況」の姿でしょうか?

クリエイティビティの最も重要な目的は想像や共感を通じて人々の心に働きかけることでしたが、テクノロジーがクリエイターとオーディエンスの間に入るようになった今、クリエイティビティはいかにアルゴリズムが定義するルールを攻略するか、もしくは見つけてもらえないというリスクを取るかという二択になり、アウトプットに(時には悪い)影響が出ています。文化の停滞期の兆しが見え、エンターテインメントやブランドコンテンツが目新しさを失ったように感じられる今こそ、オリジナリティを発揮する時です。

「オリジナルコンテンツがないことに苛立ちを覚えます。元の作品を作り直すリブートや、シリーズものばかりでつまらなくなったし、製作者たちが怠けているようにも見えます」

Matt(22歳、英国)/ Accenture Life Trends調査(2023年8月)

経済状況が苦しいとき、大抵最初に削減の対象になるイノベーション予算ですが、目新しさはどの市場でも興奮と感情的なつながりを促進する重要な差別化要因です。すでに実績のあるものが手堅く感じるかもしれませんが、諺にもあるように「幸運は勇敢な者を好」みます。

この平凡さの問題が自然に解決されることはなく、生成AIがクリエイティブのプロセスでより大きな役割を担うにつれて悪化するかもしれません。オリジナリティとクリエイティブ人材への投資に意欲のある者こそ、見慣れたものが溢れる中で際立つためのチャンスを見出すでしょう。

35%

回答者の35%は「ブランドのSNSコンテンツがどれも似通って見える」と感じており、その割合は18〜24歳では43%に上る​

Algorithm and Blues

クリエイティビティを守るための原則

「愚か者」であるための投資は重要​

クリエイティビティとは、クリエイターがアイデアを出し、検証し、育て、それを試す時間を意味します。クリエイティビティにはお金がかかりますが、その投資は通常、成果物の質の高さや豊かさとして報われます。

リスクと友達に

時には失敗するかもしれませんが、成功に向けてクラフト、クリエイティビティ、楽しさ、細部へのこだわりを取り戻しましょう。斬新なものの可能性を再び信じることが鍵です。

テクノロジーのテンプレートを打ち破る

効率優先でコンテンツが繰り返し使われることを避けるために、生成AIの使用には熟練のクリエイターが関与すべきです。

汝自身を知れ

自身のブランドを深く理解することによって、クリエイティブなリスクを取って新しいことに挑戦したり、あらゆる指標ではなく必要な指標に注力したりすることが可能になります。​

考えるべきこと

ブランドのアイデンティティとポジショニングに忠実でありつつ、大胆に差別化を図るにはどうすればいいでしょうか?

すべきこと

新しいツールは、クラフトに取って代わったり、平均的なものへと変換させたりするためではなく、クラフトの限界を超えるために使いましょう。

トレンド4:テクノロジーの飽和点​

テクノロジーは人々のために存在するというよりも、むしろ人々に対して一方的に起こっているもののように感じられます。自らの日常生活にテクノロジーが及ぼす影響に対して、人々が主体性を取り戻すような転換は始まるのでしょうか?

人類はテクノロジーとの関係において、極めて重要な岐路に立っています。過度な要求をする一方、自らのウェルビーイングに必ずしもポジティブな影響ばかりをもたらさないテクノロジーに苛立ちと疲れを募らせる人々に背を向けるのは、企業にとって得策ではありません。最善の方法は、テクノロジーとの関係においてコントロールを取り戻そうとする人々のためにソリューションの一端を担うことです。

「テクノロジーが人間を凌駕する映画を見るだけでも圧倒されますが、それはすでに現実にも起こり始めています」

Maxime(25歳、フランス)/ Accenture Life Trends調査(2023年8月)

デジタルテクノロジーの中には、人々の注目を得ようとしたり、人々と目標・タスクの間に立ちはだかったりするものがあります。新たなテクノロジーやプラットフォームが登場するたび、人々は自分にとって有益なものか邪魔なものかを見極めなければなりません。変化はあまりに速く、管理どころか理解することも難しく、悲観的な見通しがあるのです。

41%

常に多くのテクノロジーを使う回答者の41%が、「テクノロジーは生活をシンプルにしたのと同じくらい複雑にした」という意見を持つ

37%

回答者の37%が「テクノロジーを選ぶ際に批判的思考を働かせることがこれまで以上に重要」と考える

テクノロジーの飛躍的な発展のペースが一向に衰える気配を見せない中、人々は遠くないうちに自分自身と地球の両方がウェルビーイングでいられるような未来をどのように創造するかについて重要な決断を下さなければならなくなるでしょう。比類のないスピードと規模で課題が山積みになる中、新たな調和をデザインし、達成し、維持できるでしょうか?社会とテクノロジーの関係を再構築しようとする動きが盛り上がることが見込まれますが、規制も追いつく必要があります。

企業はテクノロジーが人々の生活にどのようにフィットするか、時間やスキルなど何を要求するのかについてよく考えなければなりません。ブランドはテクノロジーを使って(あるいは使わずに)ブランドと接する多様な選択肢を提供することで、人々が待ち望んでいた主体性を取り戻させ、信頼されるパートナーになることができます。

考えるべきこと

新しいテクノロジーはタスクを軽減していますか?それとも単に顧客や従業員の精神的な負荷を増やしていないでしょうか?

すべきこと

重要性を増す精神的ウェルビーイングにまつわる自社のレピュテーションリスクをチェックしましょう。

トレンド5:成功神話の解体​

人生におけるニーズや機会、そして私たちの生活を制限する要素は大きく変わりました。従来の生き方は過去のものになり、生活者像にも変化が現れています。

学校を出て、就職し、出世の階段を上り、結婚し、家を買い、家庭を築き、退職する ―過去において「人生の成功」を定義していたのはこれらの節目でした。今、必要に迫られてか新たな機会に導かれてか、これまで当たり前と考えられていたことすべてに疑問が投げかけられています。人生の選択肢がより柔軟になることで、生活者像も変化しようとしているのです。

「自分の将来を設計するとき、遠い未来ではなく1~3年先に焦点を当てるようになりました」

Jiangfeng(22~29歳、中国)/ Accenture Life Trends調査(2023年8月)

従来の人生のテンプレートは、テクノロジーや科学が今ほど発展しておらず、女性の役割も現代とはかなり異なり、終身雇用が一般的で、平均的な家族を養うには一人の給料で十分な時代に形成されました。

その後、医学を含むさまざまな領域の発展があり、多様性を受け入れる土壌も育まれて社会はより平等になりましたが、同時にコストの上昇や価値観の変化に伴って人々は自らの優先事項の調整を余儀なくされています。

50%

回答者の50%が「パンデミックと以降に起こったあらゆることをきっかけに人生の選択を見直した」

48%

回答者の48%が人生設計について「まったく考えていない」「1年先までしか考えていない」​

年齢、ジェンダー、職業、社会経済的なセグメントは、もはや有益な予測をするのに十分ではありません。新たなマインドセットによって、人々が製品・サービスに求めるものは再定義されるでしょう。ブランドはライフ起点のアプローチで、常識を覆すシームレスな体験を作り出すことができます。企業は柔軟に適応し、それぞれの異なる歩みをサポートする機会に最大限注力すべきです。

考えるべきこと

マイホームの購入、結婚や家庭を持つことといった大きな節目について人々が考え直す中、消費力や自社のブランドと関わる意欲はどのような影響を受けるでしょうか?​

すべきこと

変化する顧客の状況に応じて、ブランドメッセージと製品・サービスを柔軟に合わせられる体制を整えましょう。

年次レポートAccenture Life Trendsは、アクセンチュア ソングに所属する世界中のデザイナー、クリエイター、技術者、社会学者、人類学者の知見を結集して作成しています。

筆者

Mark Curtis

Global Sustainability and Thought Leadership Lead – Accenture Song

Katie Burke

Global Thought Leadership Lead – Accenture Song

Agneta Björnsjö

Global Research Lead – Accenture Song

Nick de la Mare

North America Design Lead – Accenture Song

Alex Naressi

Managing Director, Global R&D Lead – Accenture Song