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調査レポート

トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造):新たな企業価値創出の道筋を探求する

所要時間:約5分

概略

  • 多くの大企業が、未だかつてないほど広範かつスピード感をもった変革に取り組んでいます。

  • なかでも、先進的なグループである「リインベンターズ(再創造企業)」は、「トータル・エンタープライズ・リインベンション」と呼ぶ、強力なデジタルコアを中核とした、綿密に練り上げた戦略を採用しています。

  • リインベンターズ(再創造企業)は、収益成長で10%、コスト削減で13%、そしてバランスシート改善では17%高い成果を実現しています。

あなたは、リインベンターズ(再創造企業)ですか、トランスフォーマーズ(変革途上企業)ですか、それともオプティマイザーズ(部分最適企業)ですか?

新たな価値創出を探求するリインベンターズ(再創造企業)と呼ばれる企業は、依然として少ないものの徐々に増えています。

「トータル・エンタープライズ・リインベンション」戦略を導入しようとしているリインベンターズ(再創造企業)はわずか8%です。リインベンターズは、より高い財務成果、画期的なイノベーションを生み出す能力、あらゆるディスラプションに対するより高いレジリエンス、そして多様な利害関係者に対する価値提供の向上といったメリットを享受できます。

多くの企業 (86%) は トランスフォーマーズ (変革途上企業) に留まり、ビジネス全体ではなく部分的な変革に焦点を当て、変革を継続的なプロセスではなく断続的プログラムとして扱いがちです。

また、我々がオプティマイザーズ(部分最適企業)と呼ぶ6%の組織で取り組む範囲と野心は、限定的な機能変革を主眼としています。このような組織では、テクノロジーは変革の重要な手段と位置付けられていません。

それぞれのタイプの企業に関する詳細は、エグゼクティブサマリー(英語)をダウンロードして詳細をご覧ください

様々な環境変化が創造的破壊を加速

200%

グローバルディスラプション指数に基づく全体的な創造的破壊の増加率。2011年から2016年までを見ると、指数はわずか4%しか上昇していません。

図表:総合スコア ディスラプションレベル
図表:グローバルディスラプション指数
図表:グローバルディスラプション指数
図表:以下の外的要素は、あなたの組織のリインベンション戦略をどの程度加速させたか
図表:以下の外的要素は、あなたの組織のリインベンション戦略をどの程度加速させたか

トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)とは

経営幹部のみならず、すべての事業部門・機能部門が改めて連帯すること。

トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)とは、企業、ひいては属している産業において、新たな価値創出の道筋を探求し続けることです。強力なデジタル・コアを中核に据え、成長と業務の最適化をもたらします。リインベンション(再創造)を成し遂げるためには、次の6つの特徴を内包した企業になる必要があります。

1. リインベンションを戦略に設定

トータル・エンタープライズ・リインベンションは、あらゆるビジネスが再創造されるべき、という考えを出発点にしています。競合企業とのベンチマークによる改善は、テクノロジー起点の発想により実現できる価値とは次元が異なります。「あまりにも困難な変革ではないか?」という考え方から、「私たちが変化を起こすのだ」という考え方への転換と言えるでしょう。

パンデミックの初期には、急激な経営環境の変化により企業の旧来型デジタルの限界が露呈し、コンプレスト・トランスフォーメーション(短期間での全社変革)が盛んになりました。例えば、多くの消費財企業が消費者とデジタルで直接つながることに注力しました。しかし、後になって、モダンでクラウドベースのERPとIT基盤を持たないことが、多様化する決済手段への対応や、柔軟性をもったサプライチェーン、ロジスティクスを実現する上での制約となることに気づきました。

それを踏まえ、多くの消費財企業はクラウド型ERPへの移行を加速し、事業機能を横断した取り組みを強化しています。トータル・エンタープライズ・リインベンションを戦略の中核に据えることは、トランスフォーマーズ(変革途上企業)にとっては”次の採るべき手”であり、オプティマイザーズ(部分最適企業)にとってはリインベンターズ(再創造企業)へと一気に転換し、最前線に躍り出るための”青写真”となります。

リインベンターズとしての6つの特徴を内包することは、過去3年間のコンプレスト・トランスフォーメーション(短期間での全社変革)から得た多くの教訓に対応することにもなります。

2. 競争優位の源泉としてデジタルコアを確立・強化

あらゆるビジネスは、もはや全てデジタルビジネスであるとの認識に立てば、テクノロジーは企業が優れた体験を創造し画期的イノベーションを実現するうえで、重要かつ根本的な競争優位性の源泉であると言えます。テクノロジーこそが、企業の成長や業務最適化の取り組みを一段上のステージへと引き上げるのです。

この世の中で勝ち抜いていくには、リインベンションの礎となる強力なデジタルコアを確立することが求められています。

どの経営幹部も、テクノロジーがリインベンションにおいて重要な役割を果たすという認識はありますが、リインベンターズ(再創造企業)においては、テクノロジー活用力が変革実現における強力なドライバーであると考えています。我々の調査では、リインベンターズの39%がテクノロジーこそリインベンションの実現に最重要な要因であると述べています。一方、トランスフォーマーズ(変革途上企業)では21%、オプティマイザーズ(部分最適企業)に至っては3%にとどまっています。

97%

の経営幹部は、テクノロジー全般が組織の改革戦略や変革プログラムにおいて重要な役割を果たすことに同意しています。

40%

の経営幹部は、リインベンターズ、トランスフォーマーズ、オプティマイザーズのいずれに属するかによらず、過去2年間における変革の最重要テーマとしてテクノロジーを挙げています。

61%

のリインベンターズは、今後1年間でクラウドサービスへの投資を増やす予定だと回答しています。また、65%は次世代コンピューティング技術を注視し、スクリーニングしています。

リインベンターズは、デジタルコアへの投資を梃子に変革を推進

Siam Commercial Bank(SCB) は、デジタルバンクになるための礎として、彼らのテクノロジーインフラと能力を高めることに力点を置きました。レガシーアプリケーションから脱却し、新しいクラウドベースのデータレイクに移行したのです。また、デジタルファクトリーを設立し、銀行のアプリや新しいデジタルスタックを構築しました。これにより、SCBはデジタルアプリ上のユーザー基盤を2022年には変革前の250万人から1300万人以上に増加させています。

SCBのリインベンションの次のステージは、「フィンテックビジネスグループ」となることです。これは、銀行業務も含めて顧客起点でサービス群を提供するテクノロジーカンパニーへの転換を意味します。同社は新たな組織であるSCBxに再編され、ユーザー数2億人達成を目指し、ブロックチェーン、メタバース、Web 3.0といった新しいテクノロジーへの投資を積極的に行っています。

3. 社会の潜在価値を具現化し、業界内ベンチマークを超えた成果を探求

これまで多くの企業は、同業他社の業績をベンチマークし、業界のベストプラクティスをもとに、変革により自社が獲得できる果実を見極めてきました。しかし、これらの指標はテクノロジーや新しい働き方がもたらしうる潜在的価値や可能性を折り込んでいないため、リーダーの野心に制約をかけることになりかねません。

テクノロジーの進化・浸透や顧客変容の速さにより、今日のベストプラクティスが明日には陳腐化しているということが往々にして起こっています。事実として、競争優位性の持続期間がますます短期化しているのです。私たちの調査では、2011年から2022年までの間に、業界トップ企業と平均的(中央値)業績の企業の株主総利回りの差は、各業界の平均で15%ポイント縮小していることが明らかになりました。

世界の上場企業のうち、売上高上位2,000社による決算発表を見てみると、「ベストプラクティス」という表現が使われた割合は、2020年第1四半期以降、24%減少しました。しかし、私たちが調査した経営幹部の半数以上(55%)は、依然として自社が属する業界のベストプラクティスに習う姿勢を維持し、それが自社が実現すべき最も高い目標だと考えています。

4. 人材戦略と人材のもつ能力が、リインベンションを実現

机上では良さそうに見えるリインベンション戦略も、カルチャー変革の欠如、リーダーシップの能力と連携不足、そして事業機能間の分断など、多くの人的要因によって形骸化してしまいます。逆に言えば、より多くの人々がリインベンションに能動的に関与する状況を作り出すことができれば、障壁を克服することが出来るのです。

だからこそ、経営幹部はまず変革を自分事化するよう惹きつけることから始めることが重要です。CEO自らが先頭に立ち、経営幹部と連帯しながら、トータル・エンタープライズ・リインベンション戦略を主導する必要があります。

リインベンターズ(再創造企業)は、チェンジマネジメントが最重要なコンピテンシーと考えています。彼らは、ビジョンの提示と呼びかけが人々に共感を生み出し、それにより個々人が一体となることで企業全体として高い目標を実現できることを理解しています。また、リーダー自身が、より頻度高く説得力のある変革ストーリーを伝えています。

全社的テクノロジー指数(TQ)の向上

TQ(テクノロジー指数)とは、革新的なテクノロジーを理解し、人間とテクノロジーの創意工夫でまだ見ぬ未来を実現する能力です。リインベンションを成功させるためには、経営幹部から現場の第一線まで、すべての従業員が高いTQを持つ必要があります。

アクセンチュアでは、全従業員に個々のTQスコアを付与し、継続的にトレーニングを行っています。アクセンチュアのTQラーニングシリーズは、全てのメンバーがテクノロジーについて学び、実践的な活用方法や重要性、他のテクノロジーとの関係性を理解するためのシンプルで効果的な方法として展開されています。

5. リインベンションの取り組みスコープを限定しない

本来的なスケールでトータル・エンタープライズ・リインベンションを実現するためには、組織内外の垣根を越えて、人々、プロセス、データを融和させ、”境界なき組織”を作り上げることが重要です。

新たな企業価値創出の道筋を探求する能力を具備するには、事業軸・機能軸を横断して繋がる全体観を持ったアプローチが必要です。例えば、消費財企業や小売企業において、バリューチェーン変革やインテリジェント・マニュファクチャリングなどの能力を獲得するためには、組織全体で一貫性をもったエンドツーエンドのアプローチが必要です。

リインベンターズ(再創造企業)は組織間の繋がりを重視

オペレーティングモデルの変更は、人々の働き方を変えることを意味します。アジャイルの考え方を取り入れることで、従業員の持つ力を引き出し、部門横断的な働き方を実現できます。多様な専門家を集めたチームでは、以前であれば各々人が個別に行っていた複数タスクを組み合わせた複雑な役割を果たす必要があります。

一方、境界がないことは管理が困難であることを意味するわけではありません。リインベンションを採用する企業は、専任のトランスフォーメーション・オフィスの必要性を認識しています。このチームはスケジュール策定と進捗確認を行い、各ワークストリームごとの財務面の見通し、明快な成果指標と目標設定された全体の作戦を構築します。それにより、組織全体の最も信頼ある一元的な情報源としての役割を発揮します。

6. 絶えずリインベンションが進められる態勢を用意している

一般的に企業変革は、期間を区切って順番に行われるものでした。しかし、リインベンションは激変するテクノロジーや市場環境と同じくダイナミックに展開されます。変革実現のスピード感と、完璧さよりも前に進めることを優先する継続的な変革を目指す必要があります。少しでも早く価値を実現するほど、新たな企業価値を探求する更なる取り組みをより迅速に行えるからです。

したがって、成果創出に最も大きな影響を及ぼす取り組みに焦点を当てる発想が不可欠です。常に取り組みの優先順位を見直し、付加価値のないものは適切なタイミングで停止する備えが必要です。また、定期的に新しい取り組みをパイプラインに追加する発想も求められます。

リインベンターズ(再創造企業)はエコシステムパートナーの力を取り入れる

パートナーは、事業資産、アイデア、スキルなどのリソースを持ち込み、コンプレスト・トランスフォーメーション(短期間での全社変革)を加速します。時には、成果報酬による投資負担の軽減や継続的なリインベンションに必要な能力の提供も期待できます。実際、トータル・エンタープライズ・リインベンション戦略を採用しようとしている企業のうち69%は、ソリューションやプラットフォームの選択と構築を支援するパートナーが戦略の実現に重要であると述べています。

例えばVerizonは、バリューチェーンを横断して強力なパートナーシップを結ぶことで、5Gエコノミーの発展を支えるエコシステムを体系的に構築しました。デバイスメーカーは、すべてのデバイスがVerizonのネットワークで稼働することを担保し、協力しています。

クラウドプロバイダーやシステムインテグレーターは、Verizonのモバイルエッジコンピューティング(MEC)エコシステムに参加しています。顧客による新しいユースケースの探索に対して、パートナーがVerizonをサポートしています。VerizonとMetaは、メタバースの礎を築くために相互補完できる能力を出し合い、拡張現実の基盤としてMECインフラストラクチャを活用しようとしています。

トータル・エンタープライズ・リインベンション戦略は、成果を迅速に発現させる

トータル・エンタープライズ・リインベンション戦略には、明確な財務上のメリットがあります。リインベンターズ(再創造企業)は、トランスフォーマーズ (変革途上企業)に比べて、より高い収益成長、コスト削減、バランスシート改善を報告しています。

しかし、リインベンターズが享受する価値は、財務面の成果だけに留まりません。リインベンターズは、非財務成果に対しても貪欲に取り組み、私たちが「360°バリュー」と呼ぶものを生み出します。つまり、短期目線の財務成果のみならず、長期的かつ持続的な価値を獲得しているのです。

リインベンターズは、顧客や従業員とより親密な関係を作り、持続可能性へ対応し、イノベーション創出力を強化することで優れた成果を上げています。さらに、リインベンターズはイノベーションにおいて11%、人材の「能力向上」において11%、インクルージョン&ダイバーシティにおいて7%高いスコアを獲得しています。

リインベンターズ(再創造企業)を特徴づける要素について詳しく知りたい方は、インフォグラフィック(英語)をダウンロード

図表:どの程度の財務成果を実現/期待していますか?
図表:どの程度の財務成果を実現/期待していますか?
図表:2023年に景気後退が起こった場合、あなたの組織はインベンション戦略を加速させますか?
図表:2023年に景気後退が起こった場合、あなたの組織はインベンション戦略を加速させますか?
図表:非財務価値に関するインデックススコア
図表:非財務価値に関するインデックススコア

リインベンターズ(再創造企業)になるために考えるべき4つの要素

野心と戦略

1. 自社は今、リインベンターズ(再創造企業)、トランスフォーマーズ(変革途上企業)、オプティマイザーズ(部分最適企業)のどれに該当しますか?

2. 自社のパフォーマンスは、自社が属す業界や他の関連業界における最高水準と比較して、どのような位置にいるでしょうか? リーダーと肩を並べていますか? それとも、新しいベンチマークを設定していますか?

3. 現在の変革プログラムの成功について、経営者が説明責任を負っていますか? それとも、事業やファンクションのリーダーが主に説明責任を負っていますか?

デジタルコア

1. 現在のデジタルコアをどう評価していますか? 成熟度はどの程度で、既知の課題はどのようなものがありますか?

2. テクノロジー投資判断に際し、従来のように既知の課題や制約を排除することに加えて、持続可能性や全方位型(360°)の価値目標を達成することも含めていますか?

人材

1. 経営者は、テクノロジーのもたらす可能性を追求し、リインベンション(再創造)にどう貢献できるかを模索する十分な洞察力を持っていますか?

2. 自社は、継続的に変革を実現し続けられるチェンジマネジメント能力を有していますか? それとも、変革プロジェクトごとにこれらを立ち上げていますか?

3. 変革の測定にデータを使用していますか? また、すべてのプログラムに同じ形式の測定手法を適用していますか?

現在進行中のトランスフォーメーション・イニシアチブ

1. 現在の変革イニシアティブのリーダーは、企業全体に生じる変化を明確に説明することができ、部門横断的な視点でその状況を評価できていますか?

2. 経営者は、各変革プログラムにおけるパートナーシップ戦略を明確に説明できますか? また、その戦略がどうやって早期・確実な成果創出を実現し、自社の人材戦略にどう適合しているかを説明できますか?

筆者

Julie Sweet

Chair and Chief Executive Officer of Accenture

Jack Azagury

Group Chief Executive – Strategy & Consulting

Bhaskar Ghosh

Chief Strategy Officer

Trevor Gruzin

Growth Markets Growth & Strategy Lead

Oliver Wright

Senior Managing Director – Consumer Goods & Services, Global Lead

Mike Moore

Principal Director – Accenture Research