人間のパラドックスはビジネス成長の鍵：顧客起点からライフ起点へ

顧客起点からライフ起点へ

企業はかつて機能を重視する製品を起点としたアプローチに注力していました。そしてその後、体験を追求する顧客起点の戦略に移行しましたが、より複雑な力学が働く現在、停滞の兆しが見えています。顧客を過度に単純化することをやめ、予測不可能な外的要因の影響を強く受けながら常に変化を続ける多面的な存在であることを受け入れなければ、企業のビジネスは行き詰まってしまうでしょう。

企業はライフ起点の戦略に移行する必要があります。

ライフ起点の戦略をとる企業とは、人々の生活や人生を形作る異なる要因を深く理解し、状況に合わせて最も適した解決策を提供することができる企業です。人々の行動に影響を与える予測不可能な外的要因を考慮しながら顧客の人間性を捉えることができる企業こそ、未来の成功を掴むことができるでしょう。

ライフ起点の戦略に移行するために、次の3つの取り組みが必要です。

1. See : 顧客のライフ全体を捉える

アクセンチュアの調査によると、消費者は自立心を高めながら避けがたい矛盾を受け入れるようになり、あらゆる慣習から抜け出しています。型にはまったセグメンテーションモデルだけをもとに直線的なカスタマージャーニーを描いてしまうと、人々の行動を支える深いインサイトを見逃し、新たな価値の創出や顧客との関係構築の機会を失うリスクがあります。

企業は、顧客が単なる「購入者」以上の存在であるという認識に基づいて、どんな人物で何を動機に行動するのかを包括的かつリアルタイムに捉え、関係を再構築するべきです。

2. Solve : 変化するニーズに応える

ライフ起点の戦略をとる企業は、生活や人生に影響する外的要因の変化に顧客が対応できるよう、製品とサービス全体で適切な選択肢を提供し続けられる体制を備えています。

時間と意思という2つの主要な要因から、顧客の状況と心理を考えてみましょう。意思決定の場面では、時間に基づく考慮事項（短期的なニーズか長期的なニーズか、緊急の予定か期限のない予定か、など）はその時々で変わりますが、常に選択に影響しています。また、顧客自身のその時々の意思も重要です。ある時は非常に具体的なものを欲し、ある時は他者からのインスピレーションや新しいアイデアを求めます。

価値観や優先事項を新たな方法で組み合わせた選択肢を提供することで、自らが何を欲し、何を必要としているかを見直している人々の心を掴むことができるでしょう。最終的に企業は、「誰にとっても万能な製品・サービス」という考えを捨てて「柔軟な選択肢」を重視することが必要なのです。

3. Simplify : シンプルを実現し顧客と価値ある関係を築く

外的要因によるプレッシャーや日常生活の混乱の中に身を置いている顧客が最終的に欲しているのは、「シンプルさ」です。日々の"雑音"を取り除き、意思決定と生活をよりシンプルにしてくれるコト・モノを求めているのです。顧客との関係を深めるためには、企業は人々がより歩みやすい道を切り開くための方法を見つける必要があります。

そのためには、データや人工知能（AI）の力を借り、専門家の意見も得ながら、顧客ニーズとそれに影響を与える外的要因とのつながりを導き出すことが重要になります。同時に、思い切った優先順位付けと絶え間ない進化を続けることで、企業の内部からシンプルを実現することも欠かせません。

レポートでは、ライフ起点の戦略を実践している企業の事例を紹介しています。

人々のライフを中心に考える

世界的な不安定さは解消されることはなく、このような状況を乗り切ろうとしている人々と共にあるためには、企業は常に変化する顧客の状況や優先順位に対応できなければなりません。そのために採用すべきなのが、ライフ起点の戦略です。そうすれば、将来いかに困難な外的要因が作用したとしても顧客と価値ある関係を築き、ビジネス成長を実現することができるでしょう。