調査レポート

概略

概略

  • アクセンチュアは世界経済フォーラムと共同で、産業集積地のゼロエミッション達成に向けた調査を実施しました。
  • 世界経済のほぼ70%が、温室効果ガスの実質ゼロ化、すなわち「ネットゼロ」を目指しています。このコミットメントを達成するためには、産業集積地が果たすべき重要な役割があります。
  • ソリューションの全体的なフレームワークとの統合されたアプローチにより、二酸化炭素排出量を削減し、経済的、環境的、社会的な利益をもたらします。
  • まずはクラスターレベルの目標に合わせて複数のステークホルダーの協力が必要となり、続いてネットゼロに向けたロードマップの設定とその実行が必要です。


数字で見るインダストリー排出量の削減

ネットゼロへの道を歩む産業集積地にはいくつかの課題がありますが、低炭素ソリューションを実施するための統合的なアプローチは、大きな経済的機会を創出することができます。

37%

2018年の世界の最終的なエネルギー使用量に占める産業部門の割合は37%でした。

11

ギガトンにもおよぶ産業用のCO2排出量は、世界中の温室効果ガス排出量の30%を占めています。

2~3倍

ゼロカーボン投資を支援するために、現在のカーボンプライスを現在の水準(2020年の平均24ユーロ)から2030年までに欧州で最大89ユーロまで引き上げます。

$40B

インダストリーにおける効率化への世界的な投資額は400億ドル、2018年は中国と北米が約47%を占めます。

40%

市販の技術を用いた軽工業の電化により、産業部門の排出量を2050年までに40%に削減することができます。

$175B

2019年の世界の水素市場の価値は1,750億ドルです。

産業集積地の特徴

産業集積地は、単一または複数の産業を代表する企業が集積している地理的な地域として特徴づけられます。複数の産業用エネルギー消費者が近接して存在し、需要を集約して市場を形成することで、低炭素技術をスケールアップさせる機会が生まれます。産業集積地は、複数のパートナー間でリスクとリソースを共有することができるため、よりクリーンで信頼性の高い統合されたデジタルシステムの構築を可能にします。

産業集積地には、排出量削減のための潜在的な解決策の適用可能性、影響、経済的実現可能性に影響を与える、差別化された特徴があります。

産業の構成:クラスター内の産業の構成(重工業対軽工業)とその特定のエネルギー要件は、潜在的な解決策の規模、実現可能性、経済性に影響を与えます。

地理的・地質学的特性:クラスターの中には、海底での炭素回収・貯蔵(CCS)、岩塩洞窟での水素貯蔵、風力発電や太陽光発電のための環境特性など、特定の解決策が追求できる地理的または地質学的な優位性を持つ場合があります。

既存のインフラ : 既存のインフラの存在、年数、品質、再利用の可能性は、クラスターのソリューションの実行を可能にしたり、妨げる場合があります。

エネルギーコストと政策:化石エネルギーとクリーン電力の相対的な経済性は、特定の解決策の追求に影響を与える可能性があります。

産業集積地のためのネットゼロソリューション

産業界には、特定の技術や特定のセクターに焦点を当てた、産業界の排出量削減に特化した多くの取り組みがあります。これらの取り組みは重要です。しかし、産業集積地のためのネットゼロの未来に向けて、共同で建設されたプラントの潜在的な相乗効果と、複数のステークホルダーと統合されたアプローチがもたらす機会にフォーカスする必要があります。

デジタル化とステークホルダーとのコラボレーションを中心に、全体的なアプローチで排出ソリューションを最適化し、システム価値の成果を高める統合的なエネルギーシステムを構築することができます。

以下はインダストリー排出量の削減に役立つ4つのソリューションです。

1. 産業システムの効率性と循環性

組織を超えた廃棄物の利用を通じて循環性を高める。プロセスを統合して、エネルギー、材料の流れを共有し、費用対効果の高い利益を提供します。

2. プロセスの電化と熱の再利用

低~中温・中加圧プロセスを電化する。また、再生可能エネルギー由来の電力と熱を低コストで生産する設備をオンサイトに構築し、インダストリークラスター内で共有します。

3.炭素の回収・利用・貯蔵

エネルギー/水素の生産過程から排出される炭素を回収し、工業および製造プロセスに使用します。炭素は可能な限り地下に貯蔵することもひとつの選択肢として存在します。

4. 水素

最も経済的な調達源から低炭素またはゼロ炭素の水素を生成する。特定の活動や貯蔵/グリッドバランシングのための代替燃料として使用する。

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産業集積地は、ネットゼロエミッションを達成するために最適なソリューションを組み合わせるだけでなく、経済、社会、環境、エネルギーシステム全体にわたってシステム価値の利益を最大化するために、これらの特性を考慮しなければなりません。



コラボレーションによる機会

複数のステークホルダーの協力により、産業集積地は排出量の削減だけでなく、雇用創出、生産性向上、グリーン認証、技術展開の加速など、その他の便益をもたらす機会を提供します。価値ある機会のいくつか挙げましょう。

産業界 : 排出量の削減は、炭素税やその他の関連する制裁金が課せられることを防ぐことができます。また、環境問題を克服したいわゆる「グリーンスチール」や低炭素セメントなど、国内外の市場で使用されるプレミアム製品の創出にもビジネスチャンスがあります。

各国の政府 : 排出量ゼロ目標の達成に向けた断固とした行動をとる上で、世界的なリーダーシップを発揮します。政府は、産業集積地の変革を促進する産業政策の知見を輸出することができ、それによって雇用創出や大気質に関連した健康の改善などの、システム価値の利益をもたらすことができます。

研究開発イノベーションとデジタルサービス : 産業集積地は、新しい低炭素技術をスケールするためのプラットフォームを提供し、それによって実現可能性を検証し、コスト削減、パフォーマンス向上の機会を提供します。

エネルギー企業 : 様々なエネルギー源に対する産業界の需要の可視性が高まり、設備投資計画や戦略的展望に役立つようになります。CO2輸送や貯蔵を含む新しい種類のユーティリティー事業など、ビジネスライン、製品の拡大や再生可能エネルギー、需要の最適化、統合的なエネルギーマネジメント・サービスの大幅な拡大の可能性があります。

金融機関 : CCSや水素などの低炭素技術への投資を通じてESGアセットを拡大し、株主を含むステークホルダーへの気候変動へのコミットメントと誓約を果たします。

産業集積地は、排出量を削減し、新たな雇用を創出し、大気質の改善や健康増進などの重要な利益をもたらします。

産業集積地のネットゼロ化を加速するためのアクション

政府と産業界が協力し、目標/目標を調整し、産業排出量を削減し、ゼロ目標を達成するためには、クラスター単位でロードマップを作成し、実施することが不可欠です。

政府のための選択肢

  • 産業集積地に対して、指定された期間に排出量ゼロを達成するための拘束力のあるコミットメントを設定します。
  • 温室効果ガス削減イニシアティブへの投資を奨励するために、税額控除や課徴金の設定などの施策を設けます。
  • 短期的に財政的にはメリットのない技術に対して、開発向け融資や助成金の形で財政支援を行います。
  • 低炭素インフラを支援するための新たな経済モデルを開発します。
  • 排出量削減の取り組みへの研究開発投資を支援します。
  • 排出量削減ソリューションのために既存のインフラを活用します。

産業界への取り組み

  • 共通の目標に沿って調整し、特定の年までにネットゼロ目標を達成するためのクラスター固有のロードマップを作成します。
  • すべてのステークホルダーの代表者が参加するワーキンググループを結成し、クラスターパートナー間の信頼関係を構築します。
  • 地域内の産業の集中度を評価し、多様なニーズを理解します。
  • ロードマップの実施を加速するためのビジネススキームとリスク共有の取り組みを開発します。
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