課題―求める変化

Distribution(分散化)、Deregulation(自由化)、Depopulation(少子高齢化)、Decarbonization(脱炭素化)、Digitalization(デジタル化)のいわゆる“5D”の影響を受け、電力・エネルギー産業は大きく変容し、異業種との競争が迫られています。関西電力グループも、デジタル技術の活用なくして新時代を生き抜くことはできないとの危機感を抱えていました。

日本初/発のデジタルユーティリティを実現

2016年4月に施行された電力小売りの全面自由化を契機に、関西電力グループにおいても、かつて経験したことがない大きな事業環境の変化が起こっています。一方で、デジタル技術の発展は社会や産業、生活のさまざまな領域に変革をもたらしており、これは電力・エネルギー業界にとっても例外ではありません。短期的には新たなサービスの創出や既存事業の収益力向上といったインパクトをもたらし、中長期的には系統電力を中心とした電気事業のビジネスモデルそのものを変えていく可能性があります。

これらの変化に対して、関西電力の経営陣にはある種の危機感も高まっていました。そうした中、2018年8月に関西電力とアクセンチュアによる協働を目的とした合弁会社「K4 Digital」は設立されました。K4 DigitalCEO 北原寛千氏は、その狙いを次のように話します。

「もはやデジタルの活用なくして関西電力グループはエネルギー事業者として生き残れないという認識のもと、変革を牽引する高い専門性を持った組織体制を早急に立ち上げる必要がありました。こうして設立されたK4 Digitalは、日本初/発のデジタルユーティリティとなって、関西電力グループのデジタルトランスフォーメーション(DX)を質(技術力)と量(マンパワー)の両面から支援していくことをミッションとしています」

スピード感をもってDXの推進へ

K4 Digitalの設立にあたり、パートナーとしてアクセンチュアを選んだ理由には次のような点が挙げられます。

まずは、デジタルおよびエネルギー領域における世界最先端の知見とともに、グローバルで影響力を持つ主要なエコシステムへのアクセスを有していることです。加えて、先端デジタル技術の実装や運用を主導するエンジニアやAI活用に長けたデータサイエンティストなど、高度デジタル人材を豊富に擁していることも大きな決め手となりました。

さらに関西電力にとってアクセンチュアは、もともとK4 Digitalの設立以前から長い付き合いがある気心の知れた同志でもありました。

「アクセンチュアには発電部門から送配電部門、営業部門、管理間接部門まで、あらゆる部門の戦略策定や業務改革、システム構築で支援をいただいており、関西電力およびグループ各社の事業内容や課題も熟知しています。そんなアクセンチュアと手を組むことで、スピード感をもってDXを推進できると期待しました」と北原氏は話します。

K4 Digital CEO 北原寛千氏

取り組み―技術と人間の創意工夫

4つの観点からの成果創出を目指す

K4 Digitalでは現在、「財務」「人財」「組織」「基盤」の4つの観点から成果を創出することを目指して、次のような活動を行っています。

「財務」では、例えば、機械学習を用いたマーケティングデータ分析結果に基づく効果的な販売施策の導出、あるいは、燃料や卸電力の高精度な取引価格予測などのデジタル施策により「売上拡大 ・コスト削減」へ貢献します。

「人財」については、さらに2つの取り組みに分かれます。ひとつは社員向けの研修プログラムである「関西電力グループアカデミー」に対する支援で、データ分析や可視化ツールなどに関する研修を実施し、データサイエンティストなど高度デジタル人材の育成・拡充を図ります。もうひとつはK4 Digital自身のスキルアップです。関西電力のデジタライゼーション推進グループとアクセンチュアメンバーが合流し、関西電力グループの「デジタルCoE」として当初42名で発足したK4 Digitalですが、現在では約100名まで体制が拡大しています。グループ各社から出向してくる新規メンバーに対しても、年間に達成すべき定量的な目標(スキルスコア)を設定し、育成を図っています。

「組織」については、関西電力グループにおけるデータアナリティクスやAIソリューションを中核としたデジタル技術のCoEとしての役割を果たし、先進的なワークスタイル等も実践・情報発信し、「デジタル革新文化」を醸成していきます。

そして「基盤」では、デジタル施策推進に不可欠となるデータマネジメントの整備にあたるとともに、データ分析基盤などのインフラ整備、デジタル化方法論の確立、知財の蓄積などを推進していきます。

DX推進事例:

関西電力送配電におけるデジタル化施策を支援

K4 Digitalの取り組みの一環として、関西電力送配電に向けたDX推進の支援が行われています。関西電力送配電は2020年4月に実施された「発送電の法的分離」に伴い、関西電力から分社化された、文字どおり送配電を専任で営む専業会社です。

関西電力送配電の理事である松浦康雄氏は「人々の生活や社会産業を支える電力とエネルギーを、安全かつ安定的、低コストでお届けすることが私たちのミッションです」と話します。

ただし、そのためには解決しなければならない課題がありました。同社は近畿2府4県に約280万本の電柱を所有していますが、この中には高度成長期からバブル期にかけて短期間で設置されたものがかなりの割合を占めています。実はそこに潜在的な問題があり、設置から60~70年の耐用年数が経過すると、これらの電柱にはほぼ同時期に、改修や取替えのピークが到来してしまうのです。

「少子高齢化によって保守要員が慢性的に不足している現在、高度成長期と同じマンパワーを確保することは不可能です。点検の結果、健全なものは改修の時期を延ばし、逆に劣化が進んだものは前倒しで改修するというように、可能な限りピークを平準化し、現状のマンパワーでも効率良く工事を回せる改修計画を立てなければなりません」と松浦氏は話します。

もちろん関西電力送配電としても、今日までただ手をこまねいていたわけではありません。関西電力から分社化する以前の7~8年前から、同社の作業者はモバイル端末を持って定期点検に回っており、各電柱の状態を入力することでデータ化を進めてきました。約280万本の電柱に対して、2巡目の点検データを蓄積しており、同社はこのデータをもとに改修計画を立てることを考えたのです。

「そこでK4 Digitalを通じてアクセンチュアのデータサイエンティストの手を借りることにしました。各電柱の点検(状態)データだけでなく、その電柱はどんな場所に設置されているのかも考慮し、例えば塩分を含んだ潮風の影響を受ける海の近くにある、といった立地環境を組み合わせたビッグデータ分析を実施しました」(松浦氏)

具体的には、アクセンチュアのデータサイエンティストが外部のオープンデータから気象情報や河川情報などの環境データを集め、関西電力送配電の設備データとあわせて約180種にも及ぶデータの中から試行錯誤を重ねて約100種類のデータを厳選。各電柱の点検データと組み合わせ、勾配ブースティングと呼ばれる機械学習アルゴリズムを適用することで、改修計画のベースとなる精度の高い予測モデルを実現しました。

関西電力送配電は引き続き、この予測モデルのブラッシュアップに注力していきます。今後において作業者のマンパワーがさらに低下した場合でも、対応可能な改修計画の自動的・自律的な立案および改修業務そのものの改革、働き方改革、ペーパーレス化によるメンテナンスコストの削減など、本格的なDXを見据えてステップを進めていく意向です。

モバイル端末を活用した電柱の点検

成果―創出された価値

グループ全体の組織にマインドチェンジを促す

関西電力送配電に見られるようなデジタル施策の取り組みは、いまや関西電力グループ全体に広がりつつあります。「それぞれ規模や開発期間は異なりますが、総数としては400件以上のプロジェクトが動いています」と北原氏は話します。

もちろん、これらのプロジェクトのすべてにK4 Digitalが関与しているわけではありませんが、K4 Digitalが「財務」「人財」「組織」「基盤」の4つの観点から推進してきたさまざまな取り組みが、ここにきて結実しつつあるのは間違いありません。

「例えばK4 Digitalで活動中のアクセンチュアのエンジニアから学んだ『小さなPoC(実証実験)をアジャイルに回してブラッシュアップしていく』という手法は、従前の関西電力にはなかった考え方で、関西電力送配電のみならず、多くのグループ企業にマインドチェンジをもたらしています」と松浦氏は話します。

そして、これらのプロジェクトには新たな価値の創造や生産性の向上、業務プロセスの最適化、コスト削減などが期待されており、「そのトータルな効果は年間数百億円規模を目指しています」(北原氏)

関西電力送配電 理事 松浦康雄氏

期待できる効果

400件以上

関西電力グループ全体で400件以上のデジタル化施策のプロジェクトが始動

数百億円

デジタル化のさまざまなプロジェクトからもたらされる効果はK4Digital設立以降の3年間累計で数百億円に匹敵

中期経営計画に示された3つのトランスフォーメーションを推進

関西電力グループでは2021年から2025年までの中期経営計画において、「エネルギー、送配電、情報通信、生活・ビジネスソリューションを、改めて中核事業に据えその周辺に、その重なり合うところに、新たな価値を創出し続けます。こうした取組みにより、様々な社会インフラ・サービスを提供するプラットフォームの担い手となり、お客さまと社会のお役に立ち続け、持続可能な社会の実現に貢献することを目指します。」というグループビジョンを示しました。

そして、そこでの取り組みの柱として位置づけているのが「ゼロカーボンへの挑戦(EX:Energy Transformation)」「サービス・プロバイダーへの転換(VX:Value Transformation)」「強靭な企業体質への改革(BX:Business Transformation)」という3つのトランスフォーメーションです。

K4 Digitalは関西電力グループ各社との緊密なコラボレーションにより、これらの変革を実現していこうとしています。

※写真撮影時のみ、衛生面に配慮した上でマスクを外しております

左: K4 Digital CEO 北原寛千氏 右: 関西電力送配電 理事 松浦康雄氏

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