課題―求める変化

中電シーティーアイが進める「CTI改革」は容易なものではありません。最大の難所となったのは、社員のマインドチェンジです。中部電力グループのITプロジェクトを牽引し、DX推進に貢献していくためには、従来の要件定義や開発工程にとどまらず、企画や提案といった上流工程で活躍する人材を拡充する必要があります。

高度な価値創造を担うIT機能会社への変革

電力業界を取り巻く状況は、小売の全面自由化や送配電事業の法的分離などを受け、劇的に変化しています。そうした中にあって、中部電力もグループ全体での高い経常利益目標を実現すべく、さまざまな事業や設備運営の効率化に取り組むとともに、昨今のデジタル化の流れに対応したデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。

一方で、新型コロナウイルス禍に対応してテレワークやソーシャルディスタンスの確保など、ニューノーマルな働き方を促進していかなければなりません。

これらの課題に対応するため、中部電力グループ唯一のIT企業である中電シーティーアイは現在、「強化領域へのシフトに向けた機能強化」、「保守運用業務のリソース強化」、「グループIT・管理間接業務の効率化・集約化」、「ニューノーマルへの対応」を4つの柱とする全社プロジェクト「CTI改革」を推進しています。

同社の取締役専務執行役員である野村武氏は「中部電力におけるシステム化案件や運用管理を受け身で請け負ってきた立場から脱却し、より積極的かつ能動的にIT提案を行い、高度な価値創造を担っていくIT機能会社へ変革しなければ、私たちに成長は望めません」と、その思いを強く語ります。

具体的には経験や勘にもとづいた事業運営からデータ(ファクト)にもとづいた事業運営へ転換するとともに、システム構築にあたってはウォーターフォール型でシステム要件をきめ細かく実現するだけでなく、パッケージの標準機能を最大限活用する導入アプローチや、パブリッククラウドの活用、アジャイル開発アプローチの強化に取り組んでいます。さらに、異なる業務や部署の横断的マネジメントやプロジェクト体制を実現していきます。

同社の戦略ディビジョン イノベーション推進室長である植田素史氏は「その結果として、高度なIT業務をより高単価で受注できる企業体質をつくり上げます」と話します。

社員のマインドチェンジをいかに実現するか

とはいえ、CTI改革のような企業全体のリエンジニアリングとも呼ぶべき抜本的な変革は容易なことではありません。最大の難所として立ちはだかったのが、社員のマインドチェンジです。

「当社では約1,250名の社員とほぼ同数の協力会社のスタッフを合わせた約2,500名が一体となって活動しています。このすべての人材の意識を変えなければ、当社が価値創造領域にシフトすることはできません」と野村氏。

続けて植田氏も、「そもそも中部電力のDXに直結するような難易度の高いIT案件を受託するためには、アプリケーションにしてもインフラにしても最新の知識・能力を有していることが求められます。さらに、こちらからソリューションを提示・提供するとなれば、企画力や提案力、交渉力などコンサルティングの基礎スキルを底上げするとともに、その業務にあたる人材層を中堅から若手へと拡大しなければなりません」と話します。

中電シーティーアイ 野村氏

中電シーティーアイ 植田氏

取り組み―技術と人間の創意工夫

機能強化を支える3つの人材育成プログラム

中電シーティーアイは、CTI改革を共に進めていくパートナーとしてアクセンチュアを選定しました。選定にあたっては、「最新ITに関するベンダーニュートラル、グローバルスタンダードな技術を多数保有していること」、「技術指導や要員育成が支援可能であること」、「リソース強化に必要な要員を多数保有していること」、「効率化に関する知見を保有しており技術指導が可能であること」を重視しました。

「これらの要件を満たしたパートナーと緊密に協力し合ってプロジェクトを進めることが、効率という面でも早期実現という面でも得策であると判断し、CTI改革のビジョンを絵に描いた餅で終わらせないためにも、ゴールに至るまでの具体的な戦略と方法論、施策を持っているアクセンチュアをパートナーとしました」と野村氏は話します。

こうして始動したCTI改革において、まず「強化領域へのシフトに向けた機能強化」の観点から大きな効果を発揮したのは、アクセンチュアがコンサルティング人材の育成を目的に開催した社内勉強会です。

同社 営業本部 営業コンサルティング部部長代理の岡田浩二氏は「日常の業務活動の中で感じていたさまざまな疑問に対して、その本質から思考するためのヒントが提示され、通常の研修では得られない多くの気づきを与えてくれました。これが勉強会受講メンバーのマインドチェンジを促し、お客さまへの提案活動の母体となる営業コンサルティングチームを発足させるきっかけとなりました」と話します。

そして、この社内勉強会は、その後、「企画力・提案力・交渉力向上のための短期集中塾」、「PMワークショップ」、「高度IT(メジャーパッケージ)塾」といった人材育成プログラムに発展しています。

「企画力・提案力・交渉力向上のための短期集中塾」は、これからの中部電力グループのDXを牽引していく能力を育成するもので、従来の要件定義や開発工程だけでなく、より上流の企画工程や提案ができるコンサルティング人材へのシフトを実現していきます。「社内勉強会の頃から作成・蓄積されてきたテキストやコンテンツが、この短期集中塾でもフルに活用されています」と岡田氏は話します。

PMワークショップ」は、プロジェクトマネージャーとして必要なマインドの醸成や実施すべき事項を理解し、プロジェクトへの参画姿勢の変化を促すことを狙いとするものです。

そして「高度IT塾」では、基幹システムの基盤となる「SAP S/4HANA」のほか、電力業界で豊富な実績をもつ設備保全(EAM)ソリューションの「IBM Maximo」など、主要なアプリケーションのITスペシャリストを育成し、資格取得を推進しています。

高度IT領域への人材シフトに向けて定型業務を中国・大連に移管

保守運用業務のリソース強化の観点からは、中国の大連に新たな拠点を設けて定型化・標準化された保守運用業務の移管を進めています。さらに大連では、移管された各業務について効率化やRPAを活用した自動化が順次行われています。

「これによって余力のできた人的リソースを、より高度なIT業務にシフトしていくことが、この取り組みの最大の狙いです」と野村氏。

これまで行われてきた保守運用業務の多くが属人化しており、定型化・標準化するのは困難と思われていたのも事実。これを可能としたのが、アクセンチュアが実施したプロセス変革のアプローチです。

「ベテラン技術者の匠の技で行われていた各業務を細かく分解して可視化、定型化していきました。この結果として、プロセスの自動化が拡大していったのです」と植田氏は話します。

さらに、「今後も順調に大連への業務移管が進めば、運転監視業務を現在の30人体制から20人体制へ削減できると見込んでいます」と話すのは、同社 プラットフォームリージョン IT・プリントサービスセンター所長の高田国彦氏です。

こうして生み出された10人分のリソースを今後どう活用するかというと、セキュリティ監視・対策の専門部隊であるSOC(Security Operation Center)への配置転換が進められています。ますます悪質化・巧妙化していくサイバー攻撃の脅威は中部電力グループのすべての企業にとっても深刻な問題となっており、「24時間365日体制の運転監視業務に携わってきた人材の経験とノウハウをセキュリティ対策に活かすことで、お客さまにより高度なITの価値を提供することが可能となります」と高田氏は話します。

中電シーティーアイ 岡田氏

中電シーティーアイ 高田氏

成果―創出された価値

中部電力グループのDX推進に合わせてCTI改革もさらに前進

上記のようなCTI改革の一連の取り組みにより、中部電力グループにおける高度IT業務、なかでも上流工程に対する急速な需要の高まりに応えることが可能となりました。

「実際に高度IT業務に従事した社員の人数は2020年度の実績で159人に達しており、さらに2021年度は200人の目標に向けて拡大中です」と、植田氏はこれまでのプロジェクトで掴んだ大きな手応えを示します。

そして「高度IT人材の育成は座学だけでなく、実践の場での経験が非常に重要であることが判りました。そうした数々の現場でアクセンチュアのコンサルタントは常に横に張りついて的確なコーチングを行っていただきました」また、「私たちは最新の技術や効率的な手法を含めた仕事の回し方を学ばせていただいて、この中で社員のマインドチェンジやリスキリングを進めています」と、植田氏はアクセンチュアの貢献を高く評価しています。

こうして、より多くの社員を着実に高度IT領域へシフトしていき、高単価な仕事の受注につないでいくことで得られた収益を社員に還元していくため、「新たな人事評価や処遇の制度づくりも検討しています」(野村氏)と、今後を見据えています。

中部電力およびグループ各社におけるDX推進への取り組みはこれからが正念場であり、CTI改革も歩みを止めることはできません。野村氏は「最新技術や業界トレンドを含めた当社人材のさらなる高度化やリソース強化活動へのアクセンチュアの支援が求められます。今後も強力なタッグを組みながらCTI改革を前進させていきたいです」と述べています。

*写真撮影時のみ 、 衛生面に配慮した上でマスクを外しております

chuden CTI

左:中電シーティーアイ 植田氏 右:中電シーティーアイ 野村氏

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左:中電シーティーアイ 高田氏 右:中電シーティーアイ 岡田氏

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