再生可能エネルギー産業は力強い成長が始まっています。2017年には、世界の再生可能エネルギーへの投資額が3,335億ドルに上り、なかでも風力発電は最大シェアを占めています。また欧州にとっては、風力発電が唯一の大規模テクノロジーであり続けるだろうと考えられています。再生可能エネルギーの生産量は過去10年で2倍以上も拡大しており、IEA(国際エネルギー機関)では、世界の再生可能エネルギーの生産量は2040年までにおよそ3倍の6,000GW以上まで拡大し、その増分の31%を風力発電が占めると予測しています。

再生可能エネルギー産業は明らかに強力な成長シナリオを持っているため、世界中から投資が集まっています。その一方で、市場や運用の複雑さが増しており、企業は変革を迫られている状況にあります。再生可能エネルギー産業における可能性を最大限引き出すためには、生産の最大化、リソースの最適化、そしてタイムリーかつ迅速に意思決定を行うためのエネルギー管理およびO&M(運用および保守)の緊密な統合、という3つの主要な課題の改善が必要不可欠です。

改善を実現するために、企業はデジタルアプローチを採用する必要があります。新しいデジタルツール、データ、アナリティクス、高度なモニタリングおよびコラボレーションテクノロジーなどの要素を組み合わせてデジタル化を推進することで、3つの主要な課題すべてにおける全体的な改善が実現できます。

企業のデジタル成熟度にもよりますが、アクセンチュアでは、電力事業者はこれらの要素を統合するデジタルハブを開発して運用することで、1GWあたり年間400~1,300万ユーロの利益を上げることができると予測しています。

デジタルアプローチによる具体的な改善効果

デジタルアプローチによる改善効果は、具体的にどのようなものでしょうか?
例えば、さまざまな人々がデータやインサイトにアクセスし、連携して作業を進められるようなオープンな「デジタルハブ」を構築することにより、新しい運用モデルと業務モデルの確立と促進が可能になります。デジタルハブの持つ可能性をより多く引き出して活用することで、真のデジタル変革がもたらされるでしょう。

多くの企業では、運用オペレーターが複数の製品メーカーから提供される個別のSCADAシステムを使って電力運用を行っており、設備が増設されるたびにオペレーションの複雑さとコストが増えていく状況にあります。もし、製品メーカーの違いを意識することなく、デジタルハブを介してすべての設備を統合的にモニタリングできれば、大幅なコスト削減とパフォーマンス改善が実現できます。この全発電設備の横断的なデータ監視・統合は、事後保全から予知保全へアプローチの切替えや要員計画と業務システムを統合したメンテナンスへのシフトを可能にします。更には無人施設や遠隔地の設備には、IoT(モノのインターネット)を介したセンサーデータの取得や、ドローンによる設備の検査やモニタリングを導入することで、メンテナンスにおける課題を未然に特定して対処することが可能になります。

発電所のパフォーマンスや電力需要、天気、経済情報に至るまで、様々なジャンルのデータソースから必要な情報を取り出して分析できる機能を実装することで、正確かつタイムリーな生産予測が実現できます。より正確な予測は、より良い意思決定を促し、新たなビジネスや収益の拡大につながります。

デジタルの効果をさらに高める2つの変革

デジタルハブの構築がもたらす多くの恩恵を享受するために、企業は2つの重要な変革を実践する必要があります。1つはデータ駆動型の組織への変革です。これは企業の行動様式や文化、運用プロセスおよび、デジタルプロセスを再構築するという、難しい変革になります。そしてもう1つはIoTからビッグデータまで、最新のデジタルテクノロジーを包括したマルチスピード型のITアーキテクチャへの移行です。運用業務のコアテクノロジーの真価を引き出して、社内外のステークホルダーに新しいアプリやサービスを迅速に提供できるようになるために重要な変革です。

一部のデジタル成熟度の高い企業は、すでにデジタル化による恩恵を享受しています。まだデジタルジャーニー(デジタル化を探求する旅)に踏み出していない企業は、すぐに行動を開始する必要があります。再生可能エネルギーの需要とビジネスの複雑さは今後も増すばかりです。企業が持続可能な成長を維持するためには、新しいテクノロジーとデジタルハブを組み込んだ新たな運用モデルが不可欠です。デジタル化に向かう速くて強い変革の風は、今まさに吹き荒れているのです。

クリスチャン・コルベッティ

アクセンチュア
素材・エネルギー本部
マネジング・ディレクター


山崎 智

アクセンチュア株式会社
素材・エネルギー本部
マネジング・ディレクター

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