調査レポート

概略

概略

  • 再生可能エネルギーの需給が増えるにつれ送配電系統は不安定化する、という考えが一般化しています。
  • フレキシビリティとは、電力の変動性と不安定性を管理して需要と供給をバランスさせる送配電系統の能力を指します。
  • 従来の送電網における安定性の管理では化石燃料によるバックアップ体制が重視されてきた一方で、新たな送配電系統ではバリューチェーン全体のフレキシブルな需給管理が重要になります。
  • 本レポートでは、既存のフレキシビリティを活用して送配電系統にフレキシビリティサービスを提供するための、斬新なアプローチ事例を取り上げます。


フレキシビリティとは、電力の変動性と不安定性を管理して需要と供給をバランスさせる送配電系統の能力を指します。フレキシブルに管理するためには、「潜在的フレキシビリティ(タリフ)」、「ネットワークフレキシビリティ(スマートグリッド)」、「フレキシビリティサービス(蓄電、デマンドレスポンス、ジェネレーション)」の大きく3つの方法があります。本レポートでは、既存のフレキシビリティを活用して送配電系統にフレキシビリティサービスを提供するための、斬新なアプローチ事例を取り上げます。各アプローチは次の各ポイントにおけるエネルギー需給の不安定性に着目しています。

  • 需要ポイント:Behind-the-Meter(需要家サイド)ストレージ、デマンドレスポンス(DR)、スマートチャージなどのツールを活用することで、消費者から送配電系統に投入される再生可能エネルギーの量を最小化します。
  • 配電ポイント:電力のプーリングやバッテリーを利用して送配電系統へ到達する前に電力需要を制御します。具体的には、独立した、もしくは特定のエリアでの需給管理(マイクログリッド、コミュニティ規模電力の貯蔵、コミュニティブロックチェーン、バーチャル発電所)の活用により、送配電系統への依存を減らし、再生可能エネルギーとメイングリッドにおける双方向のフローを最小化します。
  • 送電ポイント:電力供給を円滑に行うために、風力や太陽光などによる各発電所は送配電系統への接続やストレージの調達を個別に行い、送配電系統では発電フリートの集約や発電コミットメントのプールなどの管理を行います。
  • 供給ポイント:スタンドアロン型バッテリー、風力や太陽光発電一体型バッテリー、太陽光発電を管理するスマートインバータ、V2G(車両からグリッドへの電力給供)、再生可能エネルギーから生成される水素エネルギーなど、様々なストレージソリューションを利用して送配電系統をバックアップします。

既存のUtility事業者だけでなく、大手自動車メーカーや商社、新興企業などの企業や団体が参画しています。新しい多様なアプローチとビジネスモデルにより、電力の購入と売電のシステム、リソース管理、送配電系統のアンシラリーサービス、電力のローカルバックアップサービス、需要家と供給者の連携、付加サービスなど、新たな仕組みやサービスが創出され、電力市場には様々な収益の源泉が生み出されています。

新たな送配電系統ではバリューチェーン全体のフレキシブルな需給管理が重要になります。

5つの重要な知見

エネルギー市場で現在何が起きているのかを解き明かすため最適な35もの事例を厳選し、地域集約に向けて特化した大規模なグリッドスケールストレージに投資した場合と、Front-of -Meter(供給サイド)におけるDERと需要の管理を強化した場合の対比や、需要を集約してオフグリッド供給に投資している様々な領域の組織について検証しています。 アクセンチュアによる調査の結果、次の5つの重要な知見が明らかになりました。

  1. バッテリーと革新的な商業向け最適化モデルが収益の源泉を生み出し、送配電系統の安定性と安全性を向上させる。
  2. 産業用及び家庭用需要に対し、再生可能エネルギー、自家発電からの供給が徐々に増加している。
  3. 新規参入企業が新たなアプローチでエネルギー需給を管理し、エネルギー市場に創造的破壊をもたらし始めた。
  4. 多くの事業者がフレキシブルに管理するために多種多様な試験運用を行っている。
  5. フレキシビリティ管理モデルは、地域特性を考慮した多様な姿へと進化を続けている。

進化を続けるエネルギー市場における電力事業者は、市場全体の動きを注視する必要があります。複数の試験事業を実施してコンセプトやテクノロジーを検証し、「追求すべき収益の源泉は何か」「成長戦略のカギとなる投資は何か」を理解する必要があります。また、新たなアプローチには新しいケイパビリティが必要となります。自らの強みを磨くとともに、最適なビジネスパートナーを選び、協働することが重要になります。電力企業、T&D(発電/送配電)企業、電力小売事業者は、戦略の策定にあたって次の重要な成功要因を十分に考慮しなければなりません。



重要な成功要因

すべてのプレーヤーが考慮する必要がある重要な要素はそれほど多くはありません。迅速な変化を前提にして市場全体の動きをトラッキングすること。実施する試験運用は目的とする価値プールで実現可能なものであること。大きな賭けとなる投資と試験運用によるニーズを明確に区別すること。市場変化の最大の要因である消費者に寄り添うこと。そして最後が、パートナーシップやアライアンスによって協働体制を整えることが重要になります。

市場全体の動向をトラッキングする

フレキシビリティのポイント、成長領域、プレーヤーは誰か、影響するテクノロジーは何かを知る。

選択した収益の源泉にフォーカスする

どのビジネスモデルがどの市場で成長しているかを理解し、ターゲットを決定。ポートフォリオ、ケイパビリティ、投資の一致を確認。

空中戦になるような成果に結びつかない内容と、想定される成果を確認する試験運用とを区別することが重要

戦略の実現に必要な投資は何か、どの試験運用(が拡張性の高い事業モデルとなり得るか、ということを正しく判断。

消費者のトレンドと購買行動の動向に寄り添い耳を傾ける

市場変化の速度は消費者が望む変化のスピードに影響される。新たなサービスは消費者が他の生活領域で親しむデジタルサービスを採用。

パートナーシップとアライアンスにより協働体制を整える

誰と何のために事業連携または、コラボレーションするのか。試験運用以降のパートナーシップを考慮する。

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