「アテンションエコノミー」で勝利する

2020年9月の単月で、動画配信サービス「Twitch」の合計視聴時間は16億時間に、YouTubeのビデオゲーム「Among Us」単体での合計視聴回数は40億回に達し、TikTokユーザーの1日の平均利用時間は45分に上りました。コロナ禍をきっかけに人々の在宅時間が増えた結果、オンラインの利用時間も増えています。したがって、消費者が在宅時間をどこで誰と過ごしているのかを知ることが、新たな「アテンションエコノミー」における勝利のカギとなるのです。

誕生から数年でグローバルな存在に

アクセンチュアの調査では、2020年のストリーミングおよびゲームコンテンツの消費が前年比22%に拡大したことが明らかになりました1。これまでの日常生活が一時休止状態となり、スポーツやライブコンサートといった従来のエンターテインメントが中止になったことで、消費者は別の場所に娯楽を求めるようになっています。

30+

ゲーマーがオンラインコミュニティで1週間にゲームやライブ配信の視聴、交流に費やす時間1

その好例の1つが、TikTokです。2018年に中国外の市場にもローンチされたTikTokは、パンデミック中に成長をさらに加速化させ、今やその前身である中国発のDouyin(抖音)と同様の人気を博しています。また、インドのジョシュ(Josh)をはじめとする多くのプラットフォームが、TikTokスタイルのプラットフォームをローンチし、この新たなエンゲージメントアプローチで収益化を図るようになったのも、当然の動きと言えます。

米国のカメオ(Cameo)は、良心的な料金で好きな著名人からパーソナライズされた個別の動画を送ってもらえるサービスを提供しています。奇抜なアイデアとはいえ、数年前の誕生時にはニッチなサービスだったカメオも今や大成功を収め、2020年には前年比4.5倍の成長を遂げました2。ゲーミング分野もまた成長著しいジャンルで、プラットフォームを横断したソーシャルインタラクションが大きな成功要因として働き、2020年だけでも20%の成長率を達成しました3。ゲーミング業界の需要の急増に押される形で、マイクロソフトとソニーが2020年にそれぞれ発売した新型ゲーム機はいずれも需要が大きく高まり、売り切れる市場も多数出ています4

米国におけるメディアの平均消費時間

カンブリア爆発レベルのクリエイティビティ

では、一体何が起きたというのでしょうか?今の状況は複雑な生命が地上に出現した、大昔のカンブリア爆発にたとえることができます。カンブリア爆発は、複数の環境要因が偶然集中した結果、複雑な種の急激な進化(進化の時間枠で見た場合)が起きたものだと考えられています。

現在のプラットフォームの世界でも、同じような爆発的進化が起きつつあります。たとえば、スコットランドの郵便配達員が舟歌を歌う動画は、世界中のオーディエンスを引き付けました。また、アメリカ人男性がスケートボードで滑走しながらフリートウッド・マックの曲に合わせて口パクで歌う動画はネット上で大流行し、男性が得た知名度はキャリアにもプラスの影響を及ぼしました。中には政治家が「アテンション(注目/関心)」の獲得に成功している例もあり、米下院議員のAlexandria Ocasio-Cortez’s氏はTwitch投票を呼びかける動画を配信し、43万人の同時視聴者数を記録しました5.

ユーザー生成コンテンツは、インターネットと同時期に誕生しました。しかしながら、現在のようなクリエイティビティやバイラリティ、エンゲージメントの爆発により、状況はまったく新しい段階に達したと言えます。私たちが先ごろ世界経済フォーラム(WEF)と実施したメディア業界の未来に関する調査では、コンテンツ生成の大衆化がトレンドとして浮かび上がってきました。つまり、「コンシューマクリエイター」と呼ぶべき新しい層が生まれつつあるのです。

コンシューマクリエイターは、創造性とバイラリティを組み合わせて数百万規模の世界中のオーディエンスにリーチしています。たとえば、英国の放送局ITVは、ユーザーが作成した人気CMのリメイクバージョンを放映し、オリジナル版よりも大きなブランドインパクトを生み出しました。YouTubeでは今や5,300万人以上の登録者数を誇るミスター・ビースト(MrBeast)が、リアルタイムで1から10万まで数を数える動画がバイラルになったのがアテンション獲得の最初の例です。ミスター・ビーストは現在、10万ドルのアイスクリームを食べる動画など、予算をかけたバイラル動画を配信しています。さまざまなコンテンツクリエーターに直接アクセスできる新たなプラットフォームが生まれた結果、プロフェッショナルとアマチュアの境界線は曖昧になりつつあります。そしてクリエーターの成否は、その人のキャリアではなく、エンゲージメントの能力によって決まるのです。

世界中の「とらわれの聴衆」をターゲットに

コロナ禍はクリエイティブなプラットフォームに対するニーズを高め、明るく楽しいコンテンツに対するニーズに影響を及ぼしました。TikTokは短いながらも奇抜な動画コンテンツを、簡単に配信する場をユーザーに提供しています。アテンションを引くコンテンツでなかった場合には、ユーザーはお勧めリストを参照することなく次の動画に移動できます。とりわけ、TikTokは登録する必要も、いくつもの項目を設定する必要もなく、アプリをダウンロードするだけですぐに利用を開始できます。他のプラットフォームと同じく、TikTokもアルゴリズムがユーザーの「いいね」「よくないね」に応じてコンテンツを提供しますが、各コンテンツの中身を高度なアルゴリズムによって把握し、ユーザーへの関連性を高め、パーソナライゼーションを行うという点で優れています。また、広告もユーザー体験を阻害することがほとんどありません。これはTikTokが広告主に、プラットフォームのトーンとスタイルに合った広告を提供するよう推進しているからです。

こうした施策がTikTokのコンテンツのトーンを作り上げ、それがユーザーの心に響いているのです。要するに、ユーザーはロックダウンという不愉快な現実や悪いニュースからの気晴らしを求めているのであり、TikTokのコンテンツはまさにこうした時代のニーズを上手く満たしていると言えます。

とはいえ、他のメディアに目を向けてみれば、国境を越え世界中のオーディエンスにリーチする新しいコンテンツへの欲求が、ますます高まっていることがうかがえます。ロックダウンの最中、ネットフリックスで最大のヒットとなった作品の1つ『ブリジャートン家』は、82カ国でランキング1位を獲得しました6。『Lupin/ルパン』(フランス語ドラマシリーズとして米国で初めてトップ10入りを果たした作品)は2021年1月8日のリリース以来、すでに世界で6,000万回の視聴数を獲得しています7。結果として、消費者のアテンションを獲得すべく既存のメディアと新興のライバルが競争を繰り広げるようになり、コンテンツ消費量が著しく拡大しました。

Netflixのオリジナルコンテンツ年間制作時間


次に予想される動き

では、コロナ禍の収束後には何が起こるでしょうか?12カ月以上にわたる自粛生活と、デジタルエンゲージメントの増加によって形成された現在の消費者行動は、今後どのように変化していくのでしょうか?

永続的な成功を収めるための主な原動力は、スピーディかつグローバルな規模拡大を実践する能力です。たとえば、TikTokの収益の大部分は依然として中国で生まれていますが、グローバルでのユーザー数が数億人に達した今、広告収入に大きなポテンシャルがあることは明白です。プラットフォームビジネスにとってのユーザー1人当たりの平均収益は、従来のメディアやエンターテインメント企業に比べると確かに低いですが、成功の加速化要因はオーディエンスの規模にあります。「オーディエンスファースト」のマインドセットをもとに、莫大な数のユーザーのアテンションを永続的に獲得できる企業は、これからも繁栄し続けられるはずです。

1 Accenture research, 2020

2 Cameo app hits growth and download milestones in 2020

3 Accenture Gaming research 2020

4 Still Looking for a New Gaming Console? Here’s Why

5 'We are here to vote Blue': AOC's Twitch stream of video game Among Us attracts 430,000 viewers

6 Bridgerton crowned Netflix's most popular show of all time

7 'Lupin' beats 'Bridgerton' and 'The Queen's Gambit' in Netflix viewing figures

Robin Murdoch

Managing Director – Software & Platforms, Global Lead

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