日本発の価値あるビッグクラブを作れるか?

5月30日、第2回となるAccenture Connectにて「日本発の価値あるビッククラブを作れるのか?」というテーマでのMeet Upを開催。以下はグラフィックファシリテータ山田夏子さんの作品と、ごく一部のハイライトをまとめた概要です。Accenture Connectとは、スタートアップ/大企業/アカデミアの現・次世代リーダーが集まり、様々な異なる視点から、これからのビジネスの種や新しいコンセプトを議論するConnect/ネットワーキングの場です。

ACCENTURE CONNECT

世界のスポーツ産業市場規模は右肩上がりの状況で、北米スポーツ市場は、約50兆円*1といわれている中、成長を牽引しているプロスポーツ関連の市場は約39兆円といわれています。一方日本では、政府が成長戦略の一環として、スポーツ市場を2012年時点での約11兆4000億円から、2025年までに15兆円*2の市場規模を目指す中、2012年時点でのスポーツの興行における市場規模は、約0.3兆円に留まっています。また、スポーツ産業の成長を牽引するプロスポーツチームの収益ランキングでは、欧米のプロスポーツチームが圧倒的に上位を占めています。

今回はパネリストとして、参議院議員 朝日 健太郎様、株式会社サーキュレーション 東 俊介様、スポーツ庁参事官 忰田 康征様、ソニー株式会社 執行役員 河野 弘様、サンディエゴ・パドレス球団本部・環太平洋顧問 斎藤 隆様、ONE Championship Japan 秦 英之様、浦和レッドダイヤモンズ前取締役社長 淵田 敬三様、Jリーグチェアマン 村井 満様にお越しいただき、スポーツ業界の第一線でご活躍されている皆様と日本におけるスポーツ産業の発展に向けた議論を行いました。
アクセンチュアからは、沖村 啓太マネジング・ディレクター、中村 健太郎マネジング・ディレクターが参加、アクセンチュア・プリンシパル 大柏 大がコーディネーターとして参加しました。

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成功しているビッククラブの定義とは?
ビッククラブが持つ価値とは何か?
勝敗に依存しない確固たる収益モデルとは…

  • 選び抜かれた大切な「商品」である選手をヒーロー化するストーリーづくりを過小評価してはいけない。高い技術を映像含めた”見せ方”にこだわることでファンを惹き込む
  • VIP席をつくって、試合直前・直後の選手の目の前にいける。F1のコックピットや、NFLも選手入場を目の前で見られる。そうした「体験」のイノベーションが大切
  • 高額でも魅力ある選手を獲得し、放映権収入などでチーム価値を全体的に高める
  • 新設する球場に、ホテルやショッピングモールを併設して、”街全体で”マネタイズ
  • クラブを大きくするために何をするのか。クラブ1つでできるわけではなく、リーグ全体が、国やファンに支持されるようにならないといけない。

リーグ構造の最適解とは?“戦力均衡”か?“弱肉強食”か?
それとも、第3極としてのハイブリッド型か?

  • アメリカは昇降格もなく、企業の投資家などが、企業価値を上げていくために、チームをより高い値段で買うという構造。一方で、ヨーロッパでは、労働移動を制限してはいけない中で、強いチームに選手が集中するなど、構造的に格差が生まれやすい
  • ヨーロッパ型のクラブチームは1強をつくることが良しとされるが、メジャーリーグも日本の野球も、やはりパワーバランスをいかに保つかが重要
  • オーストラリアは、アメリカ型とヨーロッパ型の組み合わせ。トップリーグは、完全に地域独占で、昇降格無。一方で下部カテゴリのアマチュアは、入れ替えが自由。8万人規模のスタジアムを各競技のプロチームで共同のホームにする等、リーグがビジネスとして戦略的にルールメーキングしている
  • チームとリーグと、いわゆる、フェデレーション、インターナショナルのフェデレーション、リージョンのフェデレーションの機能配分やガバナンスは、1つのキーポイントである
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日本に於いて、リーグ・クラブの更なる価値向上の具体策は?
リーグが投資すべきドメイン、「選手育成」「指導者」…

  • ヨーロッパから見ると、日本は極東の島国なので、メッシが急に来るわけじゃない。試合機会を増やし“金の卵”を育てるべき。ビッククラブを作る議論をするよりは、育成を競い合って、よい選手を育てたチームにリーグ分配金を傾斜配分するなどの発想がそろそろ必要
  • ベルギーは、ヨーロッパ5大リーグに選手が多数移籍することで、選手配給リーグとしての地位を確立。結果、サッカーのFIFAランキング1位(2019年4月4日時点)
  • お金が回らないと子供を見る指導者が1年契約になってしまっていたりする。やはり指導者が大事なので、指導者の“育成”にも投資されるべき
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日本における課題とは?「体育」「鍛錬」「根性」…

  • オランダ・アルメラ市では、町の小学生を体力測定しデータベース化して、どのスポーツに向いているのかをレコメンド。ドイツでは、ナショナルレベルで実施。日本はそういう場があまりない
  • 日本では一つの競技に縛られがち。アメリカでやられている「マルチスポーツ」は、一つのキーポイント
  • アメリカの強いチームは指導者が抜群。公立校でも素晴らしい施設があり、選手も選択肢が持てる。例えば日本のサッカーでは、チームが多く選択肢はあるが、指導のクオリティにばらつきが見られる
  • アメリカは、常にオープンで、近所のおばあちゃんが結構厳しいコメントをするなど、人の目にさらされるため、日本のように指導者が天皇みたいになることはない
  • アメリカでは、競技レベルごとに目的別のリーグがあり、みんなその競技が好き。日本では競技がうまいことが”かっこいい”という感覚の中で、部員を削る練習など、競技レベルが上がれば上がるほど、選手が振り落とされていく
  • 日本では、マイナースポーツから、メジャースポーツに共通な傾向として、競技で成功するほど人生で失敗。プロを引退した後のセカンドキャリアは結構重要な課題
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日本が目指すべき方向性とは?

  • エンタメ性やファンサービスをもっと追求すべき。例えば、ジャニーズってめちゃくちゃ面白い。スポーツはもっと好きになってもらうよう必死にがんばらないとエンタテインメントとして勝てない
  • ファンや、ファン以外にもっと知ってもらう努力が必要。例えば、アメリカのリトルリーグワールドシリーズは、アメリカが必ず残る仕組みを作り、メジャーリーグワールドシリーズと変わらないコンテンツを作り上げ、観ている側を惹き込むなどの努力がある
  • 日本では、ファンを惹き込む導線が弱い。リーグとチームで何を自由に委ねるか、何を規制するのかが重要で、日本は1つ1つのデザインはきれいなものの、全体としての美しさにかける
  • レギュラー以外の選手でも、分析などプレイ以外の役割を定義すると、チームに必要な人材になり、チーム全体も力を発揮。プロでも、フロント・チームの現場との結束力が成績に影響する傾向あり

テクノロジーの深化とともにスポーツでどのように活用していくのか?

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  • ロシアのワールドカップでは、ビデオ・アシスタント・レフェリー(以下、VAR)の判定により、フランスは得点を決め、この試合を勝って、最終的に優勝するに至るといった出来事も起こっている(2018/6/16, 対オーストラリア代表、VARで獲得したPKをアントワーヌ・グリーズマンが決める)。テクノロジー活用という文脈では、判定支援。もう一つはコーチング。ゲーム戦略立案、コンディショニング(怪我予防)などの競技水準向上や、ファンが喜び、レベルを上げることに活用できる大きな可能性を秘めている
  • 選手のフォームから、目の動き、心拍数などの精神状態、観戦者の脳波に至るまでデータ解析。スポーツに限らず、ピアノ二ストなどでも実験している
  • ヘルスケア分野への応用も可能。スポーツアスリートの健康な腸内で培養した細菌を、ストレス状態にある人の腸へ入れることで治癒するなど、臨床分野応用の事例もあり

本日の議論を踏まえ、日本に於いて、競技に限らず、クラブを支えるリーグと、その構造は、第3極としての日本らしい構造を作っていくことが必要。また、“強化”“育成”のためのピラミッド構造を機能させるためにも、競技レベルが上がれば上がるほど、競技を好きな人を“削っていく”日本のスポーツ環境を変えていくべき。競技人口の裾野を広げていくとともに、ずっと競技が好きで、選手をやめてもその競技に”熱量”をもって携わる受け皿を作り、その受け皿が、フロントだったり、競技の魅力を伝えるメディアだったりという、日本の課題に則したEcosystemを作っていくこと。そして、そのEcosystemから生まれた選手を育成して、資金に変え、育成に更なる投資をしていく…、というような好循環を作っていくことが、今後の日本のスポーツ産業の発展に寄与する一考察になるのでは?

グラフィック・ファシリテーション ご協力: しごと総研 山田夏子様

Accenture Connectとは:
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出典1:*1)米国スポーツ市場・産業動向調査(2018年3月 日本貿易振興機構)
*2)日本再興戦略 2016(2016年6月2日 内閣府)

大柏 大

通信・メディア・ハイテク本部
プリンシパル​

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