AI戦略はビジネス戦略そのもの

AIをビジネス全体に導入するためには、最初に万全の準備を整えておくことが重要になります。1)自社にとってのビジネス価値とは何かを理解し、2)それをビジネス戦略に落とし込み、3)戦略の最も重要な要素を確実に実現できるAIソリューションに絞り込む、というシンプルな手順で準備を進めます。もし、すでに独自のビジネス価値が明確に定義されているのであれば、ビジネス戦略における優先事項とAIを真に整合させることで、ビジネス価値を高めるAI活用によるかつてない成果を得ることも可能になります。 戦略的スケーラー(AIの本格導入に成功している企業)はこの原則を十分に理解しており、戦略的スケーラーの71%がビジネス戦略に紐づけた明確なAI戦略とオペレーションモデルを持っています。(一方、同様の回答をした日本企業は35%と低水準にとどまっています)

最も優先順位の高い課題を注視する

AIアプリケーションは日々増え続けています。多くの選択肢の中から、企業に最適な価値を実現するアプリケーションをどのように選定すればよいでしょうか。

真価を見いだすには、まず、ビジネスにとって何が本当に重要なのか定義し、最高位レベルの戦略プランに沿ってAI導入を考える必要があります。短期および長期的に検討すべき最重要課題は何か、組織的な成長、新規事業の拡大、新製品の開発など、経営幹部が目標を達成するためにAIをどのように活用できるのか、といった点について考えることから始めましょう。

将来ビジョンを見据えて、現在価値を定義する

AIがビジネスにもたらす短期的な効果を評価する必要がある一方で、幅広い視点でAIが生み出す価値、つまりビジネスの最重要課題ついても検討する必要があります。「人間+マシン(Human+Machine)」時代に企業は何を目指すべきか、産業全体の未来はどうあるべきか、価値定義の評価と手法は3~5年後にどのように変化しているか、などについて十分に検討しましょう。

AIはビジネスの枠組を破壊するほどの大きな力を持っています。AIはすでに業界における従来の境界線を曖昧にし既存産業を脅かす一方で、俊敏性に富んだ新規参入企業にとっては大きなインパクトを迅速に生み出せる機会をもたらしています。今、産業全体に起きている破壊がどのようなもので、産業および世界全体がどのように変化しているのかを注視し、状況に応じて戦略を調整して大胆に行動しつつ、継続的な活動を支える資金を確保するために投資を行う必要があります。マクロ視点で見てみることで新たな選択肢が見つかるかもしれません。

93%

の経営幹部が、「今後5年以内に産業に創造的破壊が生じるだろう」と考えているものの、「破壊に対処するための十分な備えができている」と回答した経営幹部はわずか20%にとどまります。 1

AIプロジェクトをポートフォリオとして捉える

AIの本格導入を成功させるためには、AIプロジェクトを企業目標のポートフォリオとして捉える必要があります。 企業の目指すべき方向を総合的に考え、AI導入プロセスにおける反復性をうまく操作しながら戦略と価値との整合性を維持することが重要です。企業が AIロードマップを正式に定義し、業務への落とし込みを厳格かつ迅速に行い、いち早く実用段階に移行することが、価値拡大における成功のカギとなります。

ライフサイクルの最初のステップは、「アイデアのパイプライン」を作成し、実証前のビジネスの実現可能性と価値をAIコンセプトとして実装していく作業になります。実用化のゴーサインを判断する前に、アイデアの形成、展開、検討のサイクルを迅速に反復することが大切です。アイデアは思わぬ形で成功する可能性があるため、AIプロジェクトの成功には総合的な視点が不可欠になります。

AIをビジネス目標に組み込むことで、アイデアや実証実験のごく一部だけしか実用段階に進めないという新たなリスクが生じる可能性もあります。しかし、AIロードマップは、効果的なアイデアを素早く見極めることができるため非常に有用な手法です。失敗しそうなアイデアを早い段階で破棄し次の段階に進ませないことで、無駄な投資を最小限に抑えることができます。

戦略的スケーラーはAIロードマップによるアプローチを有効に活用しています。戦略的スケーラーは他の企業に比べてより多くのAIプロジェクトに取り組み、より速いペースでAIの実装に成功しています。概念実証(PoC)段階にいる企業が過去3年間で実装したAIアプリケーション数は53であるのに対し、戦略的スケーラーでは114にのぼります。

AI戦略を支えるデータ戦略

AI導入におけるすべての変革がデータから始まります。戦略的スケーラーの75%近くが、AIの本格導入の成功要因のひとつに強固なデータ基盤を挙げており、「何のデータをどのように収集し、何の目的で活用するのか」といった運用設計と目的を明確にしたデータ戦略を策定することの重要性を理解しています。データ戦略もまたAI戦略と同様に価値を高める原動力なのです。

データが急増し、データがさらなるデータを生む現代では、膨大なデータを集めることができます。しかし、収集するデータが多いほど効果が高まるということはありません。強固なデータ戦略に基づいて成果に必要なデータを適切に収集・分析し、その結果得られるインサイトを活用することで、迅速かつ広範な成果を実現するAI戦略を推進することができるようになるのです。

データ戦略を策定することで、データ分析が可能になり、組織戦略とAIシステムの質を高めるために必要なインサイトが獲得できます。データ駆動により得られる連続的なインサイトを最大限に活用するためには、AIの導入と同時にビジネス戦略の調整を行い、調和の取れたアプローチで「フィードバックループ」を構築し、意思決定に明示的に組み込むことが重要です。そのためには、データを中心に据えて、俊敏性を備えたインタラクティブな意思決定とAI開発を行う新たな手法が必要になります。

出典:1 Accenture, “Disruption need not be an enigma,” February 26, 2018.

保科 学世

ビジネス コンサルティング本部 AIセンター長 アクセンチュア・デジタル・ハブ統括 アクセンチュア・イノベーション・ハブ東京共同統括 マネジング・ディレクター 博士(理学)

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