レガシーモダイナゼーションとDXを手堅く同時に実現する「Two-Way(二刀流)ソリューション」
2022/04/21
所要時間:約10分
2022/04/21
所要時間:約10分
西尾 友善
テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービス グループ マネジング・ディレクター
水上 廣敏
テクノロジー コンサルティング本部 ITソリューション マネジング・ディレクター
中野 恭秀
テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービス グループ アソシエイト・ディレクター
上田 朋佳
テクノロジー コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ マネジャー
上田 朋佳(以下、上田): こちらの記事ではレガシーモダナイゼーションにおける「5つの課題」として、現場で起きている問題点を整理し掘り下げました。本記事では具体論としてアクセンチュアが提供するソリューションへと踏み込んでいきたいと思います。
水上 廣敏(以下、水上): デジタルトランスフォーメーション(DX)を実現するにはモダナイゼーションが不可欠です。しかし、そこには解決すべき5つのポイントがあります。
新しく基幹システムを設計しなおすには、これら5つのポイントを考慮する必要があります。しかし、白紙から作業していると莫大な時間とコストがかかり、迅速な変革が求められる昨今のビジネス環境にも合いません。
こうした課題の解決に取り組んでいるアクセンチュアでは、数々のプロジェクトを通じて得てきた知見やノウハウ、テクノロジーを体系化したソリューション「モダナイゼーション2DX」(以下、Mod2DX)をご提供しています。Mod2DXはレガシーホストのJava変換から最終的なお客様の目指すべきDXの実現までをエンド・ツー・エンドで伴走するソリューションです。
アクセンチュアのMod2DXは、お客様が目指すレガシーの解消とDX実現を一体的に支援します
―水上 廣敏
水上: Mod2DXの特徴は、レガシーモダナイゼーションからDXまでを地続きにして並行対応していくコンセプトで一貫している点です。モダナイズとDXは、別々に順次実行するのではなく一体的に取り組むことが肝心だとアクセンチュアでは考えており、Mod2DXはまさにそれを体現しています。
このソリューションは、具体的には次の3つのソリューションで構成されています。
水上: MAJALIS(マジャリス)は、ソースコード変換から現新比較テストまでの完全自動化を提供します。いわば「モダナイゼーションの自動化」を実現するソリューションであり、お客様が保有するCOBOL資産のJavaへのリライトを支援します。また、MAJALISはモダナイゼーションのプロジェクトで極めて負荷の高い既存データ分析、データ変換、変換前後の一致検証を正確かつ迅速に実現する、アクセンチュア独自のソリューションでもあるといえます。
西尾 友善(以下、西尾): MAJALISはPL/IやEASYといった幅広いレガシー言語や、主要なメインフレーム各社の製品に対応している点が強みです。お客様がお持ちの現在のプログラム資産を分析するとともに、そのプログラムが読み込んでいるデータも一覧化するなど、緻密な見極め作業を行うことができます。時にはAIも活用して「毎回引っかかるマルチレイアウトのデータ」を抽出するなど、正確性や実行力の面でも評価の高いツールです。
MAJALISは全自動処理を基本的なコンセプトとしていますが、まれに自動化できない特殊なデータに遭遇する場合もあります。アクセンチュアでは、そうしたデータに対しても、アジャイルに対応できる体制を整えることで「デジタル化への地続きの取り組み」を維持します。豊富な経験に裏打ちされた柔軟な対応力は、アクセンチュアの総合力が発揮される場面です。
モダナイゼーションとDXを地続きにするソリューション、それがMod2DXです
―西尾 友善
水上: API Conversion & Integration Mediator(AIM:エイム)は、Java変換したシステムのAPI化を支援するソリューションです。既存ロジックや画面設計に手を加えることなく、新規のデジタルサービスとの連携を可能にするツールです。Java変換したシステムは、ブラウザで操作できるようになっても旧システムの機能や画面の多くを引き継いでいます。そのためAIMのようなツールを用いて連携を図ることが有効な対応策です。
従来のように、どの画面にどのようにアクセスするかを1つひとつプログラミングしていては工数が膨大なものとなります。そこでコンフィグレーションで一括して解決できるようにしているのがAIMの特徴です。たとえば、「画面Aと画面Bから情報Cを吸い上げ、それらを1つにまとめたデータDとして、画面Eに返す」といった処理がシンプルな設定で可能となります。もちろん、システムごとに異なる認証なども一元的に管理してクリアします。ソリューション名の「Mediator(仲介者)」とはそのような意図を表現しています。
水上: Accenture Connected Technology Solution(ACTS:アクツ)は、新規のデジタルサービスや外部とのAPI連携を実現するクラウド上のビジネスプラットフォームです。ACTSとAIMが連携することで、マイグレーションされた既存の機能を含む、統合的なDXを実現します。開発から運用まで、マイクロサービス・オーケストレーション基盤と標準化されたDevOps環境で一元的に管理されるため、必要な機能やサービスがすべてクラウド上で完結します。ACTSはアクセンチュアですでに6年以上にわたって多数の実績があり、DXに不可欠なソリューションとなっています。
デジタルのアプリケーションは、その多くがモバイルまたはWebアプリケーションです。それらのアプリケーションの開発効率性を重視し、必須となる機能を事前に組み込んでいるのもACTSの強みの1つです。昨今ではエンドユーザーが何に興味を持っているのかを把握し、パーソナライズされた情報を配信する取り組みが当たり前となっています。当然、ACTSでもユーザー理解のための分析基盤が実装されています。
変化の激しい現代のビジネス環境に適合するには、クイックな開発とリリースが不可欠です。ACTSはアジャイル開発を支援し、お客様のビジネススピードを加速させる基盤であるともいえるでしょう。
水上: 上で説明したようなスピード感のあるビジネス変革のケーススタディとして、ACTSの代表的な事例をご紹介します。
事例1 第一生命様事例
生命保険はビジネスモデルの構造上、保険加入者と営業担当のタッチポイントが契約時や更新時といったタイミングに限られています。第一生命様では、そうした接点の少なさを課題として認識されており、新たに「利用者の健康増進サービスの提供」(モバイル用アプリケーション)に取り組まれることになりました。
アクセンチュアは基盤としてACTSの利用をご提案するとともに、アプリ開発の各領域で高い専門性を持つ20社以上のベンダーとの協業をマネジメントし、わずか4カ月という短期間で構想からリリースまでを成し遂げました。このアジャイル開発の実現に大きく貢献したソリューションがACTSでした。
本事例の詳細はこちら。
事例2 伊予銀行様「AGENT」事例
愛媛県松山市に本店を構える伊予銀行様では、口座開設や住所変更手続きといった窓口業務のあり方を課題として捉えており、変革を検討されていました。伊予銀行様では紙の申込書をタブレット端末へと置き換える「AGENT」システムをアクセンチュアと共同開発し、口座開設がわずか6分で完了できるなど、劇的な時間短縮による顧客体験の向上を達成されました。このシステムの基盤もACTSが担っています。
従来は申込用紙への手書き記入から始まっていた入力作業を、本人確認証(運転免許証など)をタブレットのカメラに写すだけで住所情報を自動で読み込む、チャットに答えるだけで手続きが完了できるなど、銀行窓口業務のあり方そのものを刷新(デジタル化)しているユニークな仕組みです。
本事例の詳細はこちら。
モダナイゼーション+DXではレガシーと先端デジタル技術、両分野の専門家の協働が重要です
―中野 恭秀
水上: Mod2DXは、MAJALIS、AIM、ACTSの各ソリューションを統合し、データや機能の整合性をカバーしている包括的なソリューションです。モダナイゼーションとの組み合わせで、お客様のDXをエンド・ツー・エンドでご支援可能なところに、Mod2DXの真価があるといえます。
西尾: たとえば、裏側はメインフレームで稼働しているシステムも、フロント側ではモバイルアプリとして利用するケースもあります。ユーザーはインタラクティブに操作できるアプリの裏側で、黒画面のシステムが動作しているとはまったく感じないでしょう。そのようなシームレスな連携の実現が可能となります。
この場合も、モバイルアプリの基盤はACTSです。基幹側ではMAJALISがプログラムを変換し、AIMが連携部分を担っています。モバイルアプリはコンシューマー分野だけでなく、業務現場の業務変革にも貢献します。工場やプラント、建築現場などでは、いちいち据え置きPCのある場所まで戻らなくても、モバイル端末で様々な入力作業や確認作業を行えます。すでに多くのお引き合いをいただいています。
中野 恭秀(以下、中野): 従来の技術でも、黒画面のメインフレームにAPI連携でスマートフォンからアクセスすることはなんとか可能でした。しかし、メインフレームをインフラとし、COBOLで書かれたプログラムを維持しながらDXに取り組もうとすると、IT部門のメンバーには「レガシー分野に関するスキル」と「先端デジタル分野に関するスキル」の両方が要求されてしまいます。現実問題として、その両方に対応可能なオールマイティなエンジニアは、ほぼ存在しません。
MAJALISでJavaリライトし、インフラはACTSでクラウドを活用しつつ、接続はAIMで行う。守りのITと攻めのITを同時に実行し、最終的にデジタルの世界へと基幹システムを進化させること。そして、足を引っ張ってしまうレガシーが残存しないようにすることが重要です。
モダナイゼーションとDXの同時並行は、いわばTwo-Way(二刀流)アプローチです
―上田 朋佳
水上: デジタルを使ってビジネス変革を実現したい、新しいチャレンジを実行したい、業務のあり方そのものを次のステップへと進化させたいといったニーズにお応えするには、アクセンチュアではモダナイゼーションとDXを同時並行的に進める「Two-Wayアプローチ」が有効だと考えています。いわばシステム開発におけるリアル二刀流こそが、最短距離でDXを実現する方法なのです。
中野: 私も30年にわたって、数多くのモダナイゼーションの取り組みを経験してきましたが、従来のアプローチとMod2DXとの間には発想レベルでの違いがあり、Mod2DXの有効性は極めて高いと感じています。
西尾: 2000年頃にトレンドだったSOA(サービス指向アーキテクチャ)の考え方などが、ようやく技術的に実現可能になったのだと思います。有効なソリューションが出揃った今こそ、最大のチャンスでしょう。古いシステムを単に刷新するモダナイゼーションではなく、モダナイズとDXを地続きで一直線に実行できるのは、その知見と経験を持っているアクセンチュアの強みであるといえます。
上田:地続きのモダナイゼーション&DXとは、このようなアプローチで実現可能であることがよくわかりました。事例の詳細やデモについてはぜひアクセンチュアへお問合せください。