調査レポート

概略

概略

  • アクセンチュアの最新の調査によると、APAC(アジア太平洋地域)の若者の77%が今後10年以内にグリーンジョブに就きたいと回答していることが明らかになりました。
  • 今後、10年間で創出されるグリーンジョブは3,260万件と予想されますが、6億6,500万人の若者の需要にはまだ及びません。
  • APACで事業を展開する企業は意欲的な若者を惹きつけるため、グリーンエコノミーをCXOのアジェンダに据え、新たなグリーンカラー職をデザインするなど、今すぐ行動を開始する必要があります。
  • 一方、日本においてはグリーンジョブの魅力や重要性が理解されておらず、グリーンジョブに意欲的な若者は多くはありません。そのため、企業はいち早く魅力的なグリーン化戦略を提示することや数少ない希望者の確保に向け迅速に動くことが必要です。


グリーン世代の若者のキャリア志向

企業がグリーンエコノミーへの移行を加速する中で、若い人材を惹きつけることは新たな命題となっています。若者にとって、年収や安定性、個人の成長機会などは従来通り重要な動機ですが、これに加えて、魅力的なグリーンジョブの提供、環境の持続可能性に対する企業の真のコミットメントは重要度を増しています。

今後7年間で、オーストラリア、中国、インド、インドネシア、日本では、グリーンな社会、経済への移行を推進するために必要な新規雇用が62%増加する可能性があります。

サステナブルでより良い未来を創造するという考えは、世界中の若者にとって魅力的に映っています。アクセンチュアの調査によると、グリーンエコノミーで働きたいと回答する若者は7割にも及ぶことが明らかになっています。それはAPACの若者にとっても例外ではありません。APACの若者は、10年以内、更には5年以内にグリーンエコノミーでのキャリアに参画できると考えています。

今後10年の間にグリーンエコノミーで働きたいと考えている若者の割合
回答者の割合
今後10年の間にグリーンエコノミーで働きたいと考えている若者の割合

APACの若者は、グリーンエコノミーで働き、世界的な環境問題を解決することを望んでいます。彼らは、よりクリーンな交通手段への移行や地域の脱炭素化など、長期的な視野での問題解決に取り組んでいますが、これらの解決に密接に関わるグリーンジョブの多くはまだ存在していないという問題があります。

グリーンビジョンを実現するために

果たして、APACの志ある若者たちは、どれだけのグリーンジョブを手に入れることができるのでしょうか。オーストラリア、中国、インド、インドネシア、日本の5カ国に焦点を当て、2030年までに創出が見込まれるグリーンジョブの数をモデル化しました。その結果、この5カ国では今後7年間で3,260万件のグリーンジョブが創出される可能性が見出されました。

グリーンジョブは、①建築の脱炭素化②農業と土地利用のグリーン化③低炭素電力の供給④輸送方法の変化などの4つの幅広い分野で増加し、グリーンエコノミーへの移行が進むと考えられます。

アクセンチュアのモデルによると、輸送の分野では電気自動車の充電スタンドの増設や都市鉄道網の整備などに1,200万人以上の雇用が見込まれます。また、再生可能エネルギーを中心とした低炭素電力の供給拡大により、さらに1,000万人近くの雇用が見込まれます。

10年足らずで3,260万人の雇用を創出するのは素晴らしいことですが、この数字は2020年に労働力人口として働く6億6,500万人の若者(15-39歳)の需要にはまだ及びません。

若者を惹きつけるために企業にとって重要な3つの勝ち筋

グリーンエコノミーへの移行が進む中、企業は何をすべきなのでしょうか。多くの企業は、サステナビリティへの公約を表明することから始めています。また、それを実行に移すためには、入門レベルの技能職から高度なジョブまで様々なスキルレベルにおける新しいタイプの人材が必要です。企業がグリーンエコノミーをリードするためには、この分野での決断力が不可欠です。

調査では、APACの企業が若者を惹きつけるために必要な3つのアクションを明らかにしました。

見識があり批評眼のある若者は、表面的な"グリーンウォッシュ"に非常に敏感です。逆に、グリーンエコノミーへの移行に真摯に取り組む姿勢を示す企業は、若者にとって強いアピールポイントとなります。そこで、下記の2つのアクションが重要です。1 つは、従来のビジネスから切り離された新しいグリーンビジネスを創出すること、もう 1 つは、すべての事業部門においてサステナビリティのための社内能力を構築することです。この実現にはサステナビリティKPIの導入、トラックが必要です。

今日のサステナビリティの課題には、新鮮且つハイブリッドなソリューションが求められています。企業は、このようなソリューションをより迅速に構築するために、さまざまな才能を新しいタイプのチームに取り入れる必要があります。化学工学とイノベーション、気候科学とAIなど、従来とは異なる組み合わせの専門性が求められるようになるでしょう。このような人材プールを構築するだけでは十分ではなく、最も革新的な企業は、高度なデータプラットフォーム、分析ツール、新技術などの最新の機器を用いて、アイデアを実現するための創造的自由を提供することで、さらに一歩前進することになるでしょう。

新しい環境関連の仕事のすべてが高度な学位を必要とするわけではありません。

建設業や製造業など、新しいグリーン雇用の76%が創出されると推定される業界では、資格を必要とする入門レベルの職務の割合が大きくなります。調査では、若者は専門的なトレーニングを受けたり、新しく深いスキルを身につけることを熱望していることが明らかになっています。企業はこれをチャンスと捉え、3つのアクションを起こす必要があります。

  1. 半熟練または未熟練労働者向けの基本プログラムに投資し、従業員のためにOJTでのアップスキルおよび専門化への道筋を確立すること。
  2. 大学や職業訓練校との提携により、入門レベルの雇用の道を開くこと。
  3. 従来のビジネスラインと新しいビジネスラインの間で、交流やローテーションのプログラムを作ること。

グリーンエコノミーをCXOのアジェンダに据える

若者の望みを考えることは、企業の将来を考えることでもあります。ビジネスリーダーは、グリーンエコノミーにおける地位を追求するために、3つの重要な質問を自らに投げかける必要があります。

  • 私たちは「グリーンウォッシュ」にならないようにするために、何をすべきか?
  • 環境、社会、ガバナンスなどの非財務パフォーマンスを具体的にどのように測定するか?
  • 意欲的な若者を惹きつけるために必要な新しい「グリーンカラー」 の仕事をどのように創出するのか?そして、既存の人材が将来のグリーンエコノミーで成功できるようにするには、どうすればよいか?

日本の若者におけるグリーンキャリアの認識と企業がとるべきアクション

ここまでグローバルにおける若者のグリーンキャリア志向と将来的に創出されるグリーンジョブについて論じてきましたが、日本の若者もグローバル同様にグリーンエコノミーで働きたいと考えているのでしょうか。

調査によると、グリーンエコノミーで働きたいと考える若者の割合は、APACの77%に比して35%と半分以下の水準に留まっています。

今後10年の間にグリーンエコノミーで働きたいと考えている若者の割合
回答者の割合

今後10年の間にグリーンエコノミーで働きたいと考えている若者の割合

なぜ日本の若者は世界の若者と比較して、グリーンエコノミーに魅力を感じていないのでしょうか。その答えとして、一つは産業が環境に与える影響を深刻には受け止めておらず、環境に良い企業で働くことが重視されていないということ、もう一つは企業戦略としてグリーンエコノミーへの移行が明確に提示されていないため、グリーンジョブの魅力が十分に理解されていないことの2つがあげられます。

前者の産業が環境に与える影響について、日本の若者は世界の若者と比較して全ての産業でその影響を小さく見積もっており、その差は最大20ptにも及びます。環境への影響が相対的に軽微だと認識しているため、環境に良い企業で働くことの重要度も小さいのだと考えられます。

各産業が環境に与える影響が深刻/大きいと考えている若者の割合
回答者の割合

各産業が環境に与える影響が深刻/大きいと考えている若者の割合

環境に良い企業で働くことが重要だと考えている若者の割合
回答者の割合

環境に良い企業で働くことが重要だと考えている若者の割合

日本においては、企業戦略としてグリーンエコノミーへの移行を明確に提示している企業は多くないため、日本の若者におけるグリーンジョブの認識はグローバル・APACの若者とは大きく異なっています。 調査において、グリーンエコノミーのジョブは高い学歴や専門的なスキルを必要とする魅力的なジョブであるとグローバル・APACの若者の5割が回答する一方、日本の若者においては3割に留まります。

グリーンエコノミーのジョブには大学などの高い学歴が必要だと考えている若者の割合
回答者の割合

グリーンエコノミーのジョブには大学以上の高度な学歴が必要

グリーンエコノミーのジョブには大学などの高い学歴が必要だと考えている若者の割合

グリーンエコノミーのジョブには専門的な訓練が必要だと考えている若者の割合
回答者の割合

グリーンエコノミーのジョブには専門的な資格が必要

グリーンエコノミーのジョブには専門的な訓練が必要だと考えている若者の割合

日本において、グリーンジョブに魅力を感じる若者は多くはないものの、将来的に世界中のあらゆる企業がグリーンエコノミーでの人材確保に尽力することは必然であり、企業間の競争は激化すると考えられます。

日本のビジネスリーダーはグローバルのリーダーに求められる「グリーンエコノミーへの移行を明確にする」「イノベーションを生み出す”グリーンカラー”職をデザインする」「すべての人をグリーンシフトに参加させる」というアクションに加え、「魅力的なグリーン化戦略を提示し、他社との差別化を図る」こと、また「少ない希望者の確保に向け迅速に動く」ことが必要です。

著者について

海老原 城一

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ 公共サービス・医療健康 プラクティス日本統括 兼 サステナビリティ プラクティス日本統括 兼 アクセンチュア・イノベーションセンター福島 センター共同統括 マネジング・ディレクター


佐藤 雅望

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ シニア・マネジャー


ジャンフランコ・カサーティ

成長市場担当CEO


Dr. Vedrana Savic

Managing Director – Thought Leadership, Accenture Research


Valentin de Miguel

Senior Managing Director – Strategy & Consulting and Sustainability Services Lead, Growth Markets


Trevor Gruzin

Senior Managing Director – Growth & Strategy, Growth Markets

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所要時間:約20分

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