資生堂インタラクティブビューティー


ビューティー体験を通した価値共創のためのDXと人材育成

スギモト トシロウ 氏
資生堂ジャパン CDO 兼 資生堂インタラクティブビューティー DX本部長
枩崎 由美
Accenture Song マネジング・ディレクター

資生堂 × アクセンチュア



アジア太平洋地域において広告・コミュニケーション業界を牽引し優れた業務実績を残した企業を表彰するAgency of the Year 2021において、資生堂とアクセンチュアが「Agency Marketer Partnership of the Year」を受賞。本賞は卓越したマーケティング活動によりビジネス成果を創出しているパートナーシップに贈られるもので、デジタルトランスフォーメーション加速のために2021年7月に設立した合弁会社 資生堂インタラクティブビューティー株式会社(以下、資生堂インタラクティブビューティー)での活動をはじめ、新しいビューティー体験の実現に向けて両社が強力に推し進める数々の取り組みが評価された。どのような取り組みが進行中か、資生堂ジャパン CDO スギモト トシロウ氏とアクセンチュア ソングのマネジング・ディレクター枩崎由美氏に聞いた。

PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANYのための変革

―中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」で2030年までに「スキンビューティー領域における世界No.1の企業を目指す」と宣言されています。資生堂はどんなビジョンを掲げているのでしょうか。

スギモト 資生堂の企業使命はBEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD (ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」 です。2030年とその先の未来に向けては"PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY"、つまり、お客様一人ひとりが自分らしい健康美(ウエルネス)を実現するための生涯を通じたパートナーになることをビジョンとして掲げています。ウエルネスはスキンビューティーにとどまりません。体内の健康(インナービューティー)も融合することで、健やかな美をサポートすることを目指しています。

コロナ禍で生活の基盤となっていた様々な習慣が失われ、習慣と共にあったポジティブな感情を得る機会もまた少なくなりました。化粧品を購入することも、その習慣のうちのひとつです。これまでは店頭に行き、ビューティーコンサルタント(美容部員)に肌に触れてもらったり、商品を試したりと、五感に刺激を受ける機会が多くありましたが、ビューティーに関するこれら一連の購買体験の機会が失われてしまいました。私たちは新たなビューティー体験を提供することで、ビューティー体験から湧き上がるポジティブな感情でお客様をエンパワーメントし自信を持っていただきたいと思っています。

そのために欠かせないのが、お客様一人ひとりにパーソナライズしたサポートを提供できる体制と仕組みづくりです。そこで私たちが目指しているのが「No. 1 Data Driven Skin Beauty Company」、つまりデータを通してお客様を深く理解し、その理解に基づいて健やかな美をサポートする"オンリーワン体験"を提供すること。そしてお客様から直接いただくフィードバックをさらなるサービス改善に反映させるといった形で、お客様と資生堂で生涯にわたり価値を「共創し合う」という姿を目指しています。
―取り組みのポイントを教えてください。

スギモト デジタルとテクノロジーの力を活用し、次の5つの取り組みに挑戦しています。
  • 店頭とオンラインが融合した体験・オムニエクスペリエンス
  • データの民主化によるスタッフのエンパワーメント
  • お得意先様と共にデータを活用したオンリーワン体験の実現
  • データ活用・CRM強化
  • 組織能力・DX基盤構築
デジタルトランスフォーメ―ション(DX)をより加速化させるために2021年7月にアクセンチュアと設立した合弁会社 資生堂インタラクティブビューティーが担う役割は、革新的なビューティー体験を共創しながらこの取り組みを加速し「No. 1 Data Driven Skin Beauty Company」への変革を牽引すること。すでに様々な活動を進めています。

アクセンチュアの強みであるビジネスをエンドツーエンドで支援できるケイパビリティと戦略、デジタル、テクノロジーの知見を活用し、資生堂だけでは成し得ないスピードでイノベーションを実現していきたいです。

枩崎 新しい体験と驚きを提供するには、「お客様と常につながり、理解し、変化に寄り添うことができる状態」を整えていくことが不可欠です。そのために鍵になるのはデータ。資生堂様にあるデータはサイロ化していたり、ビューティーコンサルタントの皆さんの豊富な経験がまだ数値化されていなかったりと、活用するには統合や深化の点で改善の余地があります。既存のデータからお客様の嗜好・行動・価値観を学ぶと同時に、データを活用するための仕組みづくりに取り組んでいます。

また、お客様の変化に寄り添い続ける立場として、サービス提供する側も常に変化することが求められています。そこで、マーケティングも従来型のマスメディアを通した一方的なものからお客様とのインタラクションを前提としたよりアジャイルなプロセスに転換しています。お客様の肌を確認し、専門知識によって一人ひとりに最適な提案をする資生堂最大の資産であるビューティーコンサルタントは究極のパーソナライズしたサービスを提供してきたと言えます。ビューティーコンサルタントの皆さんに活躍いただく場もお店にとどまらず、ライブ配信やオンラインセミナー、Webカウンセリング、ソーシャルメディアを通したアプローチなど、様々なチャネルに広げています。このように、お客様の生活の変化に素早く対応できる新しい取り組みを展開しています。

スギモト これまでビューティーコンサルタントは店頭でお客様を待っていましたが、デジタルを通じてお客様をこちらから迎えに行く力を手にしました。共感を生み出す場を広げていければと期待しています。

人材こそ成長の源泉-歴史とビジョンをつなぐ文化を社員と創る

―データ活用と同様に人材育成を重視されています。

スギモト 実は当初は「明確なデジタル戦略こそ変革を牽引する」と思っていました。しかしそれだけでは不十分だとすぐに分かりました。特にリモート環境で働く中、人々は戦略をそれぞれに解釈し、時には計画が拒まれることもありました。そんな中思い出したのが、ピーター・ドラッカーの言葉「Culture Eats Strategy For Breakfast」、つまり企業文化は戦略に勝るということ。変革に向けた新しい文化を共に創っていく姿勢が欠けていたことに気づきました。

そこから、未来に向けたビジョンを示すだけではなく資生堂の豊かな150年の歴史と共にあった初代社長・福原信三の哲学「ものごとはすべてリッチでなければならない」とリンクさせ、時代に合わせた変化を社員と共に創造するためのデジタル人材開発プログラムと社員からのフィードバックを聞くセッションをアクセンチュアと共に開始しました。ビジョンに息を吹き込むのは社員一人ひとりです。その社員のために、デジタル・IT分野のトレーニングプログラムを資生堂のニーズに合わせて最適化いただいています。社員には、ビューティー領域に特化した高度なデジタル・ITの専門家に成長してもらうことで自信を持って新しい価値を届けてほしいと思っています。

枩崎 迅速かつ柔軟にお客様に対応するには、ITシステム構築を含めたデジタル対応の内製化が欠かせません。そこでまずは求める人材像を詳細に定めて、デジタル・ITの専門スキルを身に着ける教育を進める計画を策定しました。具体的には、IT領域で16の人材像、デジタル領域に14の人材像、計30の項目を定義。2021年に全社員に対してスキルアセスメントを実施し、その結果に基づいてレベルを高めていく育成計画とプログラムを進めています。アクセンチュアの総合的なデジタルの知見を資生堂様のDXに最大限活用いただきたいです。
―全社的な変革の土台としての文化を創る社員一人ひとりのために人材開発プログラムがあるのですね。取り組みを進める中で課題はありますか。

枩崎 はい、DXが成功するには推進するグループだけでなく、様々なチームが実行力を持って組織横断的に推進する必要があります。しかし、過渡期はどうしても既存の業務と新しい取り組みが並行して走るため追加の負荷かかってしまいます。プロジェクトを主導する側はスケジュールもあり気持ちが先に走ってしまいがちですが、体制や推進プロセスの整理・調整はもちろんのこと各スタッフメンバーまで同じ気持ちで実行するまでには様々な活動やアプローチをしながらではないとうまく進まないことを学びました。企業全体、部門、1to1等様々なレイヤーでのアプローチや、月一ペースのデジタルオフィス全体でのコミュニティ会議、資生堂インタラクティブビューティー採用サイト構築、DXを推進するグループでのグッズ制作等で、文化醸成の面でも取り組み全体がポジティブに変化していくように努めています。

資生堂インタラクティブビューティー -多様なプロフェッショナルが創出するイノベーション

―資生堂の変革は化粧品業界に大きな影響を与えるだけでなく、ウエルネス全体への取り組みを通して業界の枠も超えていきそうです。

スギモト 資生堂ならではの研究開発技術力を活かし、肌のDNAの分析を活用するカウンセリング「Beauty DNA Program」を現在テスト展開しています。DNA分析から分かる生まれ持った肌質に基づいたビューティーコンサルタントによるカウンセリングと、生活環境を含めた後天的なサポートを組み合わせて、よりその人のなりたい肌を支援することができるようになり、個別なオンリーワン体験を実現していくことができます。

枩崎 一人ひとりのお客様に寄り添ったサービスを実現していくために、生まれ持った肌に着目し、カウンセリングのあり方を含めた体験設計・事業化への立て付けを支援し、テスト展開を2022年4月より開始する運びになりました。今後もさまざまな体験ベースのサービスを展開する予定です。

―今後の展望をお聞かせください。

枩崎 資生堂インタラクティブビューティーでのDX推進には、資生堂様の様々な部門の社員の皆さんに参画いただいています。そこにアクセンチュアのメンバーも加わって多様性を高めています。データ、顧客体験、業務刷新、マーケティング、クリエイティブなど様々な領域のプロフェッショナルが協働するからこそ生まれるイノベーションに、期待が寄せられていると思っています。多様なプロフェッショナルが創出するイノベーションが資生堂インタラクティブビューティーのアイデンティティとなり、ウエルネスビジネスを牽引する事業やサービスを生み出していきたいと思っています。

スギモト お客様のビューティー体験にポジティブな変化をもたらすいかなる取り組みにおいても、「小さな成功」を皆で共有し称え合う文化を社員と築き続けていきたいです。資生堂がお客様と共創する価値に共感する社員全員で、生涯を通じてウエルネスをサポートするパートナーを目指していきたいです。

アクセンチュア ソングは企業のブランド価値が持続的に向上するようご支援しています。

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