グローバルと比べてデジタルヘルスの利用率が低い日本の現状

まず調査項目ごとの結果をもとに、グローバルとの比較を通じた日本におけるデジタルヘルス活用の現状と課題についてご紹介します。

デジタルヘルスの利用は、グローバル平均60%に対して日本は37%

COVID-19の流行の前後で医療アクセスが改善したか」という調査項目では、グローバル平均では約20%がCOVID-19の前後で医療アクセスは改善したと回答したのに対して、日本はわずか6%にとどまっています。コロナ禍により多くの人々が外出を控え、感染防止のために直接的な医療機関へのアクセスが難しくなる中、諸外国と比べて日本ではオンライン化・リモート化の動きが遅れており、デジタル化の進展の差が表れているものと考えられます。

実際、過去1年以内におけるデジタルヘルスの利用状況についても、グローバル平均では60%の人が利用しているのに対して、日本は37%と低めです。日本では健康管理にデジタル技術を使う機会が少なく、特にオンライン診療や電子健康記録、ウェアラブル技術の活用という点で諸外国と大きな差があります。

過去1年以内で、健康管理にデジタル技術を使用した人の割合

60%

グローバル平均

37%

日本

【図表①:日本では、健康管理にデジタル技術を使う割合が4割弱と小さく、特にオンライン診療・電子健康記録・ウェアラブル技術の活用状況でグローバル平均との差がついている】

デジタルヘルスの利用状況

医師に対する信頼度は高く専門性よりもサービスの満足度を重視

こうしたデジタルヘルスの利用状況を踏まえて、そもそも日本人はヘルスケア領域におけるデジタル利用に対してどのような意識を持っているのかを探ってみると、データセキュリティへの信頼という点での諸外国との違いが浮き彫りになりました。日本では第三者が個人のヘルスケアデータを管理することに対して、諸外国と比べて信頼度が全般的に低くなっています。ただし、医師や病院に対しては20%以上の人が強く信頼していることもわかっています。

【図表②:介護経験のある人はデジタルヘルス経験割合が高く、特にミレニアル世代以下の若い世代に顕著であった】

データセキュリティへの信頼

また医療機関に期待する要素としては、「効率的な診療」や「快適な診察室」といったサービスの質、さらにコストを挙げる比率が諸外国と比べて高い傾向があります。その反面、医療機関から治療に関する適切な説明を受けていると感じている人は約30%、自分が服用している薬の目的などを理解している人は50%弱にとどまっています。

デジタルの利用経験と医療での活用意欲の間にみられる相関関係

では、日本におけるデジタルヘルスの利用意向や利用経験はどうなのでしょうか。

「ミレニアル世代」とそれ以上の世代で大きく異なる意識

グローバルと比べると、日本ではヘルスケア領域におけるデジタルの利用意向は14カ国中で最下位となっており、また利用経験も非常に低いことがわかりました。しかし、ある年代を境にこの結果は大きく異なることが判明しました。

いわゆる「ミレニアル世代」と呼ばれる18~41歳と、それより上の42歳以上を比べると、デジタルヘルスの利用意向はミレニアル世代が約98%、それより上が約95%とそれほど開きは見られませんが、デジタルヘルスの利用経験がある人は、前者が40%以上に対し、後者は約半分の20%強にとどまっています。この結果は、若い頃からインターネットやスマートフォンなどの利用環境が整っていたことが、デジタルヘルス利用意向や経験に大きく影響していると推測されます。

【図表③:インターネット環境の整備が飛躍的に進んだ時代に育った「ミレニアル世代」を境にデジタル利用経験について明確な傾向差がある】

世代によるデジタルヘルス利用経験の差

また、医療にAIを活用することに対しては、患者の診療に直接関わる「AI による診断支援」、バックオフィスの管理業務に近い「AIによるカルテ記載補助」のいずれについても、日本は諸外国と比べて不安を感じやすいことがわかっています。

日本における医療へのAI活用に対する不安

46%

AIによる「診療支援」に不安があると答えた人の割合

35%

AIによる「カルテ記載補助」に不安がある割合があると答えた人の割合

デジタルヘルスの利用を促す上で有効な医師や専門家のアドバイス

上記を踏まえて、日本におけるデジタルヘルスの利用を促進していくには何が必要なのでしょうか。

まず、日本人がデジタルヘルスを利用する可能性を高める上での重要な要素としては、データの安全性やプライバシーへの信頼度、さらに医療機関からのアドバイスなどが上位に挙がりました。ここからは、日本ではデータ利用に対する抵抗感や不安はグローバルと比べて強いものの、一方で医師や医療機関に対する信頼度は高いことから、「不安はあるが、医師や病院から推薦されれば使うかもしれない」という人が多いことがわかります。

これに加えてミレニアル世代では、一定の割合の人が質の高いデバイスやアプリといったサービスを低価格で利用できることが重要だと回答しています。また、この世代では「自分の健康に関するより良い情報」を求めている人が39%に達しており、このことはデバイスやアプリへの期待度の高さを裏付けています。

【図表④:データの安全性やプライバシーへの信頼度、医療機関からのアドバイスは世代を問わず重要との声。加えて、ミレニアル世代以下はデバイスの質と価格、ミレニアル世代より上の世代は健康に関するより良い情報の入手を重要視】

デジタルヘルス利用促進に必要なもの

介護経験者と疾病予防におけるデジタル活用への高いニーズ

日本におけるデジタルヘルスの利用を促進する上で重要となる、よりデジタル活用のニーズが高い人の属性を見ていきましょう。ここではデジタルヘルスの利用経験の割合が高い人を対象に、疾患の治療を受けている人と、介護に携わっている人の2グループに分けて調査しました。まず疾患の種別では、デジタルヘルスの利用経験があると答えた31%の人の中には、循環器系疾患の治療を受けている人が14%ともっとも多く、次にメンタル系疾患の13%が続きます。一方、介護経験のある人はデジタルヘルスの利用経験者が48%と約半数に達しており、そのうちミレニアル世代である18~41歳の割合が極めて高くなっています。

【図表⑤:デジタルヘルス経験割合が高い人の属性をみると、循環器疾患およびメンタルヘルス疾患の罹患者が多い】

日本人におけるデジタルヘルス利用率が高い疾患

また、デジタルヘルスをどのような領域で利用したいかという調査項目に対して「疾病の予防」を挙げたのは、調査対象となった国の中で日本が37%ともっとも多く、予防領域でのデジタルヘルス利用の関心が高いことがわかりました。

「診療の効率化」が求められている一方でオンライン診療が進んでいないという現状

また、診療の効率化を求める人の割合は高いが、オンライン診療を経験したことのある人の割合が低く、対面診療・治療分野におけるオンラインによる効率化へのニーズが高い状態であることがわかりました。

【図表⑥:診療の効率化を求める人の割合は、オンライン診療経験の割合と負の相関がある。日本は、診断・治療分野でのオンライン化が進んでおらず、診療効率化へのニーズが高い状態】

診療効率化のニーズ

では具体的にどのようにして、その課題に対して対応していくべきでしょうか。本論考の後編では、調査の分析から得られた知見をもとに、日本におけるデジタルヘルスの普及に向けた考察を行っていきます。



著者について

石川 雅崇

執行役員 ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ日本統括 兼 ライフサイエンス プラクティス日本統括


藤井 篤之

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター


小川 貴久

ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジャー

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