調査レポート

概略

概略

  • R&D部門は増加する一方のデータ量や次々と登場する新技術、イノベーションに邁進する競合相手などに圧倒され始めており、業務モデル変革は喫緊の課題
  • R&Dのデジタル化によりイノベーションのスピードが最大15%アップするなど経済価値の向上が期待できる
  • R&Dのデジタル化推進では関連するすべてのステークホルダーが求める要件を洗い出した上でプラットフォームを設計し、進化へのパスに取り組む必要がある


化学産業ではラボラトリーオートメーションや人工知能(AI)など、先端テクノロジーの導入が急速に進んでいます。これは化学産業におけるR&Dプロセスに大きな変革が起きていることを示唆しており、リーディング企業では既にデジタル化によるデータアナリティクスやデータディスカバリーが推進されています。

AI分野におけるデジタル技術の著しい進歩により、最先端のデータアクセスソリューション、自動化や機械学習を活用したデータインジェスチョン(データの取得/取り込み/加工)、仮想エージェントやチャットボットを介した人間中心に設計された直感的なデータアクセスなどのテクノロジーは実用段階にあり、既存のR&Dシステムが刷新されるとともに、化学産業の研究所における働き方や仕事内容が大きく変わる可能性があります。

レガシーからデジタルへ

化学産業でも多くの企業がデジタル戦略を策定し、一部の事業領域では変革の指標とするための「ライトハウスプロジェクト」(lighthouseは「灯台」の意)を進めているものの、R&D領域では従来の実験計画やデータ処理をデジタル化するといったアプローチにとどまっているようです。従来のR&D業務モデルでも業務は遂行できるため、最優先すべき課題ではないと感じるかもしれません。しかしR&D部門の従業員は、増加する一方のデータと次々に登場する新しいテクノロジー、イノベーションに邁進する競合相手からのプレッシャーなどに圧倒され始めており、業務モデルの変革は喫緊の課題と言えます。今こそ、R&D部門の情報管理を再構築し、多種多様なデータソースから創出される研究成果の迅速な価値化と改善の基盤となるデジタル技術の積極的な活用を追求すべき時です。

ビジネスケースがもたらす経済価値

R&Dのデジタル化は、プロセスのスピードを高めるだけでなく、ビジネスケースの策定を強力にサポートします。デジタル化(ソフトウェア、ハードウェア、インフラストラクチャの構築など)や運用プロセスの変更には相応のコストが発生しますが、効率性が大幅に向上することでコストを上回る成果を獲得できるでしょう。
R&Dにデジタル度合いを適用した場合、次の3つの具体的な成果を通じて経済価値を高めることができます。

イノベーションスピードが最大15%向上

ラボラトリーオートメーションとロボティクスを導入することで開発準備や実験の作業スピードが上がり、いつでも、どこからでもデータアクセスが可能であれば、情報収集プロセスを短縮でき研究開発における効率性が向上します。

プロジェクト成功率の向上

R&Dデータの可用性や解析力が向上することで、開発プロジェクトの技術的な実現可能性の見積もりやリソース配分の最適化が容易になり、プロジェクトの成功率が高くなります。

R&Dポートフォリオの価値増大

デジタル技術を駆使してイノベーションファネルにおける意思決定をより的確に下すことができれば、R&Dポートフォリオの価値を増大させることができます。

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R&D(研究開発)のデジタル化への期待

R&D(研究開発)のデジタルデータ化を推進するための技術的プラットフォーム構築の計画・設計を行う際には、ユースケースアプローチに従い、本質的な利益に直結しないソリューションを十分に検討せずに採用することは避けましょう。単に取得可能なデータだけを統合して表層にAIとアナリティクス機能を付加するような形だけのイノベーションではなく、R&Dに関連するすべてのステークホルダーが求める要件を洗い出した上で、プラットフォームを設計して進化のパスに取り組むことが大切です。

技術の急速な進化とビジネスケースがもたらす潜在的利益の大きさを考えると、R&D事業のデジタル化はあらゆる企業にとって「must-do(必須の)」アジェンダです。データに秘められた価値をどのように解き放ち、R&Dパフォーマンスをどのようにして次の次元に導くかを真剣に検討することが、化学産業におけるすべてのプレーヤーに求められています。

ミハエル・ウルブリヒ

アクセンチュア 戦略コンサルティング本部マネジング・ディレクター


田中耕平

アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部 マネジング・ディレクター


前田琢磨

アクセンチュア株式会社素材・エネルギー本部シニア・マネジャー

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