サーキュラー・エコノミー

企業資産の調達、製造、販売、利用、廃棄に至る「取って、作って、捨てる」という一方通行型の経済モデルでの成長が頭打ちとなりつつある今、既存の資産を循環的に利用し続ける経済モデル「サーキュラー・エコノミー」が注目されています。アクセンチュアは「無駄を富に変える循環型経済モデル」の実現をご支援します。

サーキュラー・エコノミー:再生の循環による新成長戦略

第1次産業革命(18世紀)以来、人類はそれまでに経験したことがないスピードで資源を消費して製造、利用、廃棄へと至る直線的(リニア)なバリューチェーンを営み、経済と社会を発展させてきました。しかし、この「直線的で一方通行型の経済モデル」の実態は、企業経営においては売り切ることでコストと利益を回収する、遅くて長い"供給者視点"の事業サイクルであり、資産の稼働率・利用率などの観点では非効率的な仕組みであったと言えます。

昨今の市場や社会では、ビジネスの不確実性や変化の速さが、古い価値観と既存のモデルを堅守してきた企業の成長を行き詰まらせています。本論考で解説する「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」は、そうしたビジネス環境の閉塞感を打破し、新たな付加価値の創造とビジネスモデルへの転換を促す革新的な成長戦略です。

サーキュラー・エコノミーのモデルは、利用価値に基づく対価を利用ベースで徴収する"利用者視点"の短期・高速回転のバリューチェーンです。これにより、既存の資産の潜在価値の最大化を図り、マネタイズの最大化と持続的な利益創造を実現します。たとえば役割を終えた製品を回収、再生させて再利用したり、使われていない資産を活用して新たな収益源としたりといった循環モデルへ転換することにより、2030年までに全世界で4兆5000億ドルもの経済価値を生み出すと期待されています。

事業サイクル
「サーキュラー・エコノミー」は、無駄を富へと変え、再生と利益創造の循環を生む新しい成長戦略です。

新たな収益構造を実現する競争優位性「サーキュラー・アドバンテージ」

無駄を富へと変える新成長戦略サーキュラー・エコノミーに取り組む企業が年々増加している事実は、新製品投入で既存商品を強制的に陳腐化させることで買い替え需要を意図的に創出する旧来のビジネスモデルが、すでに通用しなくなりつつあることの証左であるといえます。また、デジタル化の進展によって、循環経済と事業収益を両立させる新しいビジネスモデルが明確化されたことも、企業がサーキュラー・エコノミーにチャレンジする基盤となっています。

サーキュラー・エコノミーへの転換によって企業が獲得できる競争優位性は「サーキュラー・アドバンテージ」と呼ばれます。先進的な企業ではエコシステムの刷新やデジタル技術の活用でビジネスモデルの抜本的転換を進めると共に、この優位性によって全く新しい収益構造の実現を達成しています。

再評価される「三方良し」とサーキュラー・エコノミーへの注目度の関係性

アクセンチュアがダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)で配布したデジタルブックを増補して出版し、世界的な反響を呼んだ『サーキュラー・エコノミー:デジタル時代の成長戦略』(日本経済新聞出版社刊)からすでに5年以上が経過しました。この間、日本企業を取り巻く社会環境には3つの大きな変化が起こっています。

1. 環境負荷の低減に対する、社会的な関心の急速な上昇

2. 「所有」ではなく「利用」を重視する価値観への、消費者の志向転換

3. 企業運営に公明正大さを問う消費者・従業員・投資家の増加(企業のパーパスの重要性の高まり)

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顧客のみならず、従業員や取引先などのステークホルダーを含む社会全体への貢献、いわゆる近江商人の「三方良し」の理念を重視した日本固有の経営哲学が再評価され、企業のパーパス(存在意義)を問い直す機会が増えています。上記の3つの変化や日本固有の社会的背景の文脈と絡み合いながら、日本においてもサーキュラー・エコノミーの注目度が高まっています。

サーキュラー・エコノミーの戦略を実践し、いかにして自社のサーキュラー・アドバンテージを確立して新しいビジネスモデルへと転換していくか。経営者に大胆かつ繊細な舵取りが今求められています。

サーキュラー・アドバンテージ獲得への第一歩

日本企業がサーキュラー・エコノミーを自社の新たな戦略に取り入れ、サステイナブルな成長を実現するには、「自社にとって最適なビジネスモデルの選択」や「競争力を保持しながら実現するための具体的アプローチの実践」が必須です。先進的な企業は、次の3つの取り組みを指針として、サーキュラー・エコノミーを推進しています。

  1. コアビジネスの変革:投資能力を押し上げるために、無駄を取り除き、事業全体の価値を損なわないモデルを維持しながら既存のバリューチェーンを変革する。
  2. コアビジネスの成長:成長への動機を持続させるために、循環型の製品/サービスを扱っている事業のオーガニックな成長を実現させ、コアビジネスへと昇華させる。
  3. 新規ビジネスの拡大:新しい成長領域を特定し拡大し続けるために、より高次元でのサーキュラー・エコノミーの実現につながる創造的破壊をもたらす成長機会へ投資する。

そして、上記の指針を踏まえ、企業が具体的にとるべき手法は、以下の4領域で新たな変革を興し(「新興」)、事業を「定着」させながら、「先行」したモデルを創出し、最終的に「究極」の形を目指していくという4段階のアプローチです。

  1. オペレーション:エネルギー、CO2排出量、水、廃棄物を削減し、再利用を促進する。
  2. 製品とサービス:ビジネスの核となる製品やサービスのポートフォリオを変革し、無駄をなくした製品やサービスのデザイン・開発に注力する。
  3. 文化と組織:サーキュラー・エコノミーの原則を自社のパーパスやコアビジョンへ浸透させ、全社員がインセンティブを得られる組織変革を実行する。
  4. エコシステム:サーキュラー・エコノミーの実現に向け、業界の枠を超えた協業、産学官連携を推進する。

持続可能な未来を創るために、あらゆる企業が無駄を削減し、自然環境に対してポジティブなインパクトを生み出すことが求められています。これらの4領域の成熟をビジネスベースで成立させることが、サーキュラー・エコノミーの取り組みにおいては不可欠なのです。

企業が取るべき4つのアプローチ

先進企業のサーキュラー・エコノミー事例

サーキュラー・エコノミーによるビジネスモデル転換の代表的事例といえるのが、大手タイヤメーカーのミシュラン(フランス)と、建機メーカー大手のキャタピラー(アメリカ)の実践です。

ミシュランでは運送会社向けのサービスとして、従来のタイヤを売り切るビジネスから走行距離に応じてタイヤのリース料を請求する「サービスとしてのタイヤ(Tire as a Service: TaaS)」へ転換しました。製品としてのタイヤの販売ではなく、走行距離という"成果"で料金が決定されるという新しいビジネスモデルを打ち出しました。また、タイヤのメンテナンスも提供サービスに含んでいます。ミシュランはタイヤの製造から廃棄までのバリューチェーン全体に責任を持つことで、利用済みタイヤの再生・再資源化に取り組んでいます。

このサービスは走行距離の算出やタイヤの状態検知を行うセンシングやIoT、データアナリティクスなどのデジタル技術に支えられているほか、使用済み製品の回収率を100%へと高めたことで製品の再利用率の劇的な向上と環境負荷低減を達成しています。なお、2017年時点でTaaSの契約車両は欧州だけで50万台にのぼると言われます。この事例は「製品のサービス化」の代表例として認知されています。

一方、キャタピラーは、先進的なプロセスと製品のイノベーションによって、摩耗・損傷したコンポーネントを新品同様に機能する状態へ再生させることに成功しました。これまでは使用不能とされていた製品の再利用を実現することで、同社ではコスト削減と生産性向上を両立しています。サーキュラー・エコノミーによって、キャタピラーは粗利を1.5倍に増加させ、30億ドル以上の収益獲得を実現しました。

これらの事例からも、サーキュラー・エコノミーは、まさに次なるビジネスの競争力創出と新たな収益源を企業へ提供する成長戦略であることが明らかです。アクセンチュアでは、日本企業がサーキュラー・アドバンテージを獲得するための考え方やフレームワークをはじめとする、実践のために体系化された「ツールキット」を提供しています。

本論考が経営者の皆様にとって、サーキュラー・エコノミーのエコシステムへのいち早いご参画の検討と、成果に至る道へ針路を定める一助となれば幸いです。

ニュース

事例で学ぶ サーキュラー・エコノミー

2030年に4.5兆ドルの経済効果が見込まれるサーキュラー・エコノミーで、いかにしてビジネスとして成立させ、持続的成長を実現するか。『競争優位を実現する サーキュラー・エコノミー・ハンドブック』(日本経済新聞出版)の監修者が解説します。(日経ESG掲載)

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