ケミカル・(リ)アクション:サーキュラー・エコノミーにおける成長
2019/08/30
2019/08/30
世界の化学業界全体で、川上に位置するアップストリーム企業には絶え間ない圧力がかかるのと同時に、川下市場は混乱に直面しています。資源の制約や環境意識の高まりが、化学製品に対する消費者の考え方を変えつつあり、消費者の購買力も変化しています。アクセンチュアは、サステナビリティに対する考え方の変化を詳しく調べるために、11ケ国の消費者6000人を対象にした調査を実施し、以下のことを明らかにしました。
81%
の消費者が、今後5年間で環境に優しい製品を購入することを予定しています。
83%
の消費者は、企業は再利用やリサイクルが可能な製品を製造すべきだと考えています。
77%
の消費者は、プラスチックが最も環境に優しくない包装材料だと認識しています。
50%
の消費者は、平均して、再利用やリサイクルが可能な製品により高い金額を支払う意志があります。
不況を別にすれば、世界の化学業界は数十年にわたり、比較的安定した成長を遂げてきました。しかし業界は今、転換期にあります。新たな規制やインフラの老朽化、消費者からの信頼の欠如により、大きな混乱が生じるリスクが非常に高まっています。化学企業は、この状況に備えねばなりません。
アクセンチュアの調査では、一つのポジティブな傾向に着目しています。それは長年の定説に反し、消費者はサステナブルな製品に対しては、コストを多く支払う意志があるようだ、という傾向です。それでも、消費者による購買決定は依然として極めて重要です。自動車や衣料品、電子機器、玩具、家具といった分野のブランドや小売業者は、ブランドロイヤルティを維持するため、特に使い捨てプラスチックなどの問題に関して、増大する消費者の懸念に対処しようとしています。
化学企業は将来を見据え、製品のライフサイクル全体に循環性を組み込むため、製品の設計や包装、化学物質の使用を再考しています。ブランドや小売業者は、よりクリーンな原料を使用したサステナブルな製品を多くの人々に提供する方法を検討し、支援を必要としています。これこそが、化学企業が参入し、進化に貢献できる領域です。
化学業界は、サーキュラー・エコノミーへの移行を主導する立場にあります。機会はあふれており、化学企業には迅速な行動が求められています。今すぐ行動を始めましょう。
化学企業は、サーキュラー・エコノミーへの移行を恐れるのではなく、受け入れるべきです。これは自社の価値の新たな源泉を解き放ち、成長を促進し、サステナビリティへのコミットメントを実現する、革新的なソリューションを顧客に提供する絶好の機会です。循環性を実現することで、化学企業は製造業者、供給業者、小売業者の強力なパートナーとなり、消費者の嗜好の変化に迅速に対応できるようになります。また、そのリターンも多大なるものです。では、化学企業がこの成長可能性を最大限活用するには、いかなる方法があるのでしょうか。
アクセンチュアは、2030年までに循環型経済の価値は4兆5000億米ドルに達すると予測しています。
循環経済は、原材料から製品を作り、使用し、廃棄するという今日の線形的な「取り出し、作り上げ、消費する(take-make-waste)」モデルは、廃棄物を無くすというアプローチで実現可能です。製品、部品、材料を最大効率で使い続けることで、新たな価値が生み出されます。材料や分子をバリューチェーン内で継続的に循環して再利用することで、必要なエネルギーや資源の削減につながり、コスト削減によって更なる成長を生み出す事業への再投資が可能となります。これは、循環性を内部および川下企業にて取り入れることによって実現されます。
内部的な循環を採用する
原料は総コストの大半を占めています。よって、使用済み製品から分子を再循環させることで、価格に左右されにくい再生可能な代替品の使用が促進され、再利用製品を設計するインセンティブが生じます。また、有害物質の開発と使用を削減するグリーンケミストリー原則の採用によっても、内部循環の採用による利益が得られます。
川下企業での循環を有効化する
サステナビリティをサポートする耐久性が高く環境に優しい製品を開発するために、従来の手法を改め、材料の使用方法を再考する化学企業は、川下企業を主導する理想的な立場にあります。大きな差別化要因になるのは、ブランドや小売業者と提携し、循環経済における製品の再設計に必要な、重要なコンサルティングや技術力を提供することです。
化学業界の進化に伴い、化学企業が循環的なバリューチェーンのあらゆる段階で価値を獲得し、破壊的イノベーションを利益へと転換する、新たなビジネスモデルが出現し始めています。
消費者の意識が変わり、サステナブルな製品に多くのコストを支払う意志を持つことは、循環的な未来への転換を準備する化学企業にとって、刺激的で新たな機会をもたらします。本調査では、循環型経済で自社の価値の新たな源泉を解き放ち、成長を加速し、サステナビリティを推進するためのアプローチについて、具体的な始め方に関する有益な指針と価値ある考察とともに紹介します。
準備は整っていますか? 今こそ、サーキュラー・エコノミーへの移行を始めるときです。