SMBのためのテクノロジーの民主化
2021/09/23
2021/09/23
ローコード/ノーコード(LCNC)技術は、ユーザーが生み出すイノベーション「カンブリア紀(爆発的進化)」の起爆剤となっています。このLCNCの革新は、SMBに力を与え、イノベーションから運用まで、ビジネスニーズへの対応をより早く実現させることができます。
今回の論考では、SMBにとってのLCNCの価値と、LCNCがソフトウェアおよびプラットフォーム企業にとってどのような意味を持つのか深く掘り下げていきます。
今日の経済にとって非常に重要なSMBは、テクノロジーの高まりによってその成長を加速させています。たとえば、数年前までは、オンライン販売を行おうとするSMBは、eコマースのインフラ構築に多額の投資をする必要がありました。しかし、こうした状況をShopifyは一変させました。このプラットフォームにより、COVID-19の影響で実店舗が閉鎖された際にも、ベーカリーからアパレルブランドまで、さまざまな起業家がオンライン販売を始められるようなりました。
アクセンチュアは、LCNCがSMBの成長に与える影響はそれらテクノロジーの高まりによる好例であると考えています。今日、顧客の獲得からバックエンドプロセスまでを有効化、簡素化することでビジネスのあらゆる側面に価値を提供するため、LCNCを採用するSMBが増えています。その背景には、SMBがプラットフォーム企業や他のSMBと競争し、差別化する方法を模索している重要な時期に来ていることがあります。
今日のビジネス環境において、LCNCがSMBにとって極めて重要な意味を持つのは次の3つの要素です:
アクセンチュアの調査によると、世界のSMBの70%以上がデジタル化を加速させており、SMBの93%がCOVID-19によってテクノロジーへの依存度が高まったと回答しています。
アクセンチュアの調査では、対象となったSMBの5社に1社が、デジタルに強い人材の不足を理由にLCNCプラットフォームの検討を行ったと回答しています。
ソフトウェア&プラットフォーム企業の多くは、SMBを念頭に置いたソリューションを設計しているわけではありません。一般的には、プラットフォーム企業や消費者向けの製品を開発し、それをSMB向けに微調整することで、ITの俊敏性、市場への迅速な投入、コスト意識といったSMBのビジネスニーズに対応しています。LCNCは、技術的な経験が乏しいビジネスユーザーでも、ビジネスニーズを真に満たすプラットフォーム企業クラスのソリューションを開発できる可能性を秘めており、プラットフォーム企業のソリューション開発の取り組み方に変化を与えました。
二次抵当市場に特化した社会的インパクトのある投資会社Crowd Capitalの創設者兼CEOであるChristian Rotter氏は、LCNCがいかに彼のビジネスの利益と合致しているかについて語っています。
コストと市場投入までの時間は大きな要素でしたが、LCNCソリューションが提供する柔軟性も非常に重要な要素でした。LCNCの開発により、費用対効果の高い方法で早い段階で失敗し、その教訓を借り手の要求に応じて実行することができるのです。
LCNCを活用するSMBの見解は、Rotter氏のものと一致しています。これらのSMBは、同業他社の中で差別化を図り、市場で競合他社より優位に立ち回ることができます。
ローコード/ノーコードの活用でSMBが得られるメリット:
79%
ビジネスの俊敏性が向上した
53%
個人やチームの生産性が向上した
56%
市場投入までの時間が短縮された
34%
SaaS/COTSソリューション機能の問題を克服した
まだ広く普及しているわけではないものの、LCNCはSMBの間で注目すべき市場牽引力を持っています。今回の調査では、SMBの半数近くがLCNCを使用していると回答しています。そのうち56%のSMBが、プラットフォーム企業が提供するソフトウェアと比較して、LCNCプラットフォームの週当たりの使用量を増やすことを計画しており、この傾向はさらに加速すると予想されます。さらに、現在LCNCを使用しているSMBの58%が、LCNCプラットフォームへの投資額の増加を見込んでいます。現在の予測では、2024年までにアプリ開発全体の65%がLCNCになるとされています2。
LCNCの動きがすでに活発化していることは明らかです。話題性はさらに高まることでしょう。プラットフォーム企業にとってのクラウドと同様に、SMBにとってもLCNCは大きな存在になると考えられます。SMBにサービスを提供する企業は、LCNCにより注目する必要があります。
49%
新しいビジネスルールやプロセスコントロールの作成
44%
パッケージ製品(SaaS/COTS)の機能を補完するための新しいプロセスフローの作成
41%
新たなユーザー体験の創造
37%
新たなビジネスアプリケーションの開発
37%
新たな顧客向けアプリケーション(ウェブおよびモバイル)の開発
LCNCには勢いがあるものの、すべてのSMBのニーズに理想的な形で対応できるようになるのは、まだ先の話です。
その理由として、SMBにはセキュリティなどの参入障壁があるためです。
LCNCプラットフォーム導入の障害となっているもの
45%
データの安全性と答えた割合(例:データがハッキングされる可能性があるなど)
39%
パブリッククラウドソースのデータの可用性/信頼性と答えた割合
35%
データ管理と答えた割合
35%
データ漏洩対策不足と答えた割合
また、LCNCの利用については、比較的高い解約率が見受けられます。約20〜25%のSMBが、過去に購入したLCNCプラットフォームの使用を中止しています。LCNCプラットフォームがSMBのニーズを理解し、それに対応するまでにまだいくらか時間を要するためです。LCNCプロバイダーが自社のプラットフォームの最大の差別化要因と考えるものと、SMBが重視する機能との間には、まだ乖離があるようです。
しかし、現在、多くのLCNCプラットフォームに欠点があることや、多くのSaaSアプリケーションやソフトウェアアプリケーションにLCNC機能がないことは、大きなチャンスが潜んでいるとも言えます。SaaSプロバイダーやソフトウェア&プラットフォーム企業はこのチャンスを即座に活かし、自社のLCNCサービスをSMBのニーズに合わせて適応させることができるのではないでしょうか。顧客主導でSMB向けのLCNCソリューションを構築することで、SaaSプロバイダーやソフトウェア&プラットフォーム企業は、SMB市場を活性化させ、広くLCNCの価値をもたらすことができます。これまで、その規模や多様性から、SMB市場への対応に大きな課題を抱えてきましたが、これは大きな可能性といえるでしょう。SMBにとっても、自社のビジネスニーズをより的確に捉えたソリューションを手に入れることができるというメリットがあり、Win-Winの関係となるのです。
SMBのニーズ対応において、多くの小規模LCNCプロバイダーが大規模なプラットフォームよりも先行している現状をふまえると、大手のソフトウェア&プラットフォーム企業は選択を迫られています。SMB中心のLCNC製品戦略を追求するか、SMBをターゲットにした小規模LCNCプラットフォームを買収するか、そのいずれかを選択することになります。いずれにしても、多くのソフトウェア&プラットフォーム企業の顧客は、遅かれ早かれLCNCに投資することになるでしょう。
SMBは今日の経済において強力な力を持っています。SMBは、先進国のGDPの半分以上を占め、雇用の60〜70%を担っています3。また、LCNCは、SMBのテクノロジー利用の方法を再構築しようとしています。次回の記事にご注目ください。
次回の論考では、LCNCがプラットフォーム企業のCIOの意思決定に与える影響について考察します。LCNCがどのようにオペレーティングモデルを再構築し、プラットフォーム企業のプロジェクト遂行に影響するか着目します。
出典:
2 Gartner, "Magic Quadrant for Enterprise Low-Code Application Platforms,"
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