ローコード/ノーコード革命を、ユーザーが生み出すイノベーションのきっかけに

相次ぐ技術的なディスラプション(創造的破壊)は、企業が顧客や従業員などのステークホルダーのために価値を創造する方法を劇的に変化させました。クラウド、モバイル、SaaSは、新たなデジタルカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を提供するためのコストとスピードの緩急、即ち柔軟な意思決定に大きな影響を与えています。同時に、コンピューティングパワーはメインフレームから人々の手へと移っています。

人工知能(AI)や機械学習(ML)の普及が進むにつれ、人々の仕事や働き方も変化しています。アクセンチュアのテクノロジービジョン2021で紹介されたテクノロジートレンド「熱望されるリーダーとは」で述べているように、テクノロジーの民主化が進んでいます。こうした動きは、かつてないイノベーションをもたらし、顧客と接点を持つ人々だからこそ生み出すことができる新しい顧客体験の創造へと繋がるでしょう。

IT以外の組織におけるイノベーションの実現

ITオペレーションモデルにおける変化への対応

あらゆる人が、「開発者」になるための可能なスキル

SMB企業のモダナイゼーションの促進

SMB企業の多種多様なニーズに対応 

全て見る

イノベーションの新時代

ローコード/ノーコードプラットフォームの影響と意義を探るシリーズの初回となる本論考では、ローコード/ノーコードプラットフォームの導入が、いかにかつてない破壊的・革命的ムーブメントを生み出すのかについて焦点を当てています。

ローコード/ノーコードプラットフォームは、コーディングの経験がほとんど無い人や未経験の人でもアプリケーションの構築や変更を可能とするソフトウェア開発環境です。これらのプラットフォームを利用することで、ビジネスユーザーは、開発チームに頼ることなく、オンデマンドで迅速かつ容易に新たな機能を構築・提供することができます。

ローコード/ノーコードは、ユーザーがイノベーションや創造性を発揮する契機として期待されています。2021年だけでも、ローコード/ノーコードプラットフォームによるアプリ開発が75%に上ると予測されています。さらに、現在のローコード/ノーコードユーザーのうち60%が、毎週のプラットフォーム利用率が増加すると見込んでおり、中には利用率が30%以上も増加すると予測するユーザーもいるようです。また、当年は投資においても記録的な年となることが予想され、約128件、総額20億ドル以上の取引が行われる模様です。

このような規模のテクノロジーの民主化は、誰が技術革新を行い、どのように価値を生み出すのかという点において、根本的な変化をもたらします。仕事の進め方やテクノロジーをベースとしたイノベーションの管理・運営方法については、全面的な改革が必要となるでしょう。また、プラットフォーム企業のITは、まさにこれから始まろうとしているローコード/ノーコード革命に備える必要があるでしょう。

「持ち込む」時代から「自分で創造する」時代へ

ローコード/ノーコードの導入を加速させている要因としては、これまで以上に、迅速なイノベーションと改革が必要とされていることにあります。約3分の1(28%)の企業が、適切なツールやプロセスを確立しないままスケールの大きなデリバリーが行われていると回答しています。さらに、20%の企業にわたり、50以上のクローズできていない案件が存在しているようです。

こうした状況を踏まえ、企業は顧客や従業員、社会に対して卓越した体験を創造し、提供するための適切なテクノロジーツールを全社的に展開することが重要となってきています。アクセンチュアの調査では、経営幹部(C-suite)をはじめ、すべての部門や従業員など、組織全体に対し優れた体験を提供できる企業は、1年後、3年後、5年後、7年後には、同業他社と比較して収益性が6倍も上回ると見ています。

ITの観点でも、クライアントサーバーからSaaS/クラウドや複合アプリへの移行、IT費用の企業側でのコントロールなど、ローコード/ノーコードを推進する動きは目立ってきています。BYOデバイスなどの分散化の動きは何年も前からありましたが、パンデミックを機に急速に加速しています。

リモートワークで自宅がオフィスとなったことで、セキュアなシステム環境に対する新たな要件が生まれました。同時に、テクノロジーのコンシューマー化によって、より簡単にアプリやインターフェイスにアクセスできるようになり、ユーザーの中で仕事全体のエクスペリエンス(体験)が変化しています。

つまり、閉鎖的なシステムが開放され、全く新しい人々が企業や広範なエコシステムの中でテクノロジーに関わるようになっているのです。新たな開発者たちが、急速に進化するローコード/ノーコードツールを活用する/ことによって、システム開発の世界は「持ち込む」スタイルから、「自分で創造する」スタイルへと変貌しています。

旬なムーブメントとは

'これまでも、ローコード/ノーコードという概念は存在してきました。例えば、Excel が組織全体に普及し、一般のユーザーにデータベース機能を提供して、初めてユーザーが自由にプロジェクトに取り組むことができるようになったこと。同様に、Pegaのようなプラットフォームも、数年前から簡単に設定およびカスタマイズ可能なCRMおよびBPM機能を提供することで、システム構築の民主化を始めました。

しかし、今日の決定的な違いは、大きな価値を生み出す可能性を秘めた新しいユースケースが爆発的に増加していることです。Cレベルのエグゼクティブを対象としたアクセンチュアの調査によると、73%が新しい顧客向けアプリケーションの推進役としてローコード/ノーコードを捉えています。また、55%がパッケージ製品を補完する新たなプロセスフローを創出するものとし、50%が新しいビジネスルールとプロセスコントロールを創出するものとしてみているようです。

73%

新しい顧客向けアプリケーションの推進役

55%

パッケージ製品を補完する新たなプロセスフローの創出

50%

新しいビジネスルールとプロセスコントロールの創出

このことから、「使いやすさ」、「既存ソリューションやテクノロジーとの統合の容易さ」、「価値創造」という3つのメリットにより、ローコード/ノーコード導入を促進していると言えます。

それだけではありません。ローコード/ノーコードには、あらゆる種類の企業の価値創造とイノベーションに大きく貢献する可能性があるだけでなく、多くの根深い課題にも対処することが可能です。多くの企業がITスキルの不足を成長の阻害要因として挙げている中(CXOの46%が、スキルギャップの拡大が人材戦略に影響を及ぼす要因であると回答)、ローコード/ノーコードはその溝を埋めるべく大きく貢献できる可能性があります。

46%

スキルギャップの拡大が自社の人材戦略に影響を与える最大の要因であると述べているCXOの割合

技術的なバックグラウンドが少なくても、開発者が独自でアプリケーションを構築することで、高い生産性と組織全体のコラボレーションを実現します。

ローコード/ノーコードは無秩序、ユートピアどちらをもたらすのか

ローコード/ノーコードという革命には、より良い新世界をもたらす可能性がある一方で、無秩序でカオスな状況に陥る恐れもあります。後者のような世界を防ぐためには、ローコード/ノーコードプラットフォームの展開においてIT部門が新たな役割を担う必要があり、そのためには具体的かつ新たな運用設計が必要です。

イノベーションの障壁が低くなることは、ローコード/ノーコードがもたらす非常に大きなプラスの効果となるはずです。しかし、開発業務が一般ユーザーに移っていく中で、IT部門はどのような開発がどこで行われているか網羅的に把握する必要があります。シャドーITはすでに大きな課題となっており、83%の企業が、今後 2 年間でシャドーITが増加すると予測しています。

83%

シャドーITの運用が今後2年間で増加すると予想する組織の割合

ローコード/ノーコードは、適切に管理されなければ、システム構築を乱発させる恐れがあります。このようなリスクを回避するために、IT部門がイノベーションのパートナーや資金提供者となり、門番ではなくベンチャーキャピタリストのような役割を果たす必要があります。次回の論考では、  ローコード/ノーコードにおいてIT部門がどのような役割を果たすべきかについて考察します。

セキュリティは常に最優先事項であり、多くのローコード/ノーコードのソリューションプロバイダーは、ITセキュリティとガバナンスが最大の障壁であるとしています(プロバイダー全体の88%、プロバイダー企業のC-suiteの72%が指摘)。また、より民主的でオープンなアプローチは、脆弱性や攻撃対象を拡大させるリスクがあることは間違いありません。これにより、セキュリティフットプリントは、境界線を基本とした管理から、組織全体にセキュリティ態勢を浸透させることへと変化しています。

人材とスキルにおいても、ローコード/ノーコードプラットフォームを採用する企業では、新たな局面を迎えています。ビジネスリーダーの5人に1人が「職場における技術者の不足」を主な制約事項として挙げていることからも、CIOやCTOは従来の技術者の枠を超えて、より広いコミュニティに目を向け、新たな人材ネットワークを構築・育成する必要があります。

つまり、組織全体の技術指数(TQ)を高めるという、より広範なミッションを担っているのです。アクセンチュアの最高戦略責任者であるBhaskar Ghoshは「先進的な企業は、テクノロジーへの投資効果を最大化するために、技術指数(TQ)を向上させており、卓越した能力を発揮する組織の構築にとどまらず、企業全体の変革を実現するための戦略を実施している」と説明しています。

クリエイティブ・テンション

全体として、ローコード/ノーコードは、顧客や業務上の差し迫った課題を解決するためのイノベーティブで強力な新しい方法を提供します。一方で、適切なガバナンスとセキュリティがなければ、ローコード/ノーコードは、CIO/CTOやCISOにとっての次なる頭痛の種としてなってしまうかもしれません。ただ、そこにこそチャンスがあります。このチャンスをつかむために、企業はローコード/ノーコード導入についてより入念な計画を立てていく必要があるのです。

次回の論考では、ローコード/ノーコードがSMB企業にもたらす変革の可能性に着目します。ポイントは、ローコード/ノーコードの導入による、SMB企業の成長の加速と競争力を向上についてです。

RELATED: Watch a replay of The Information’s Live Video Summit on “The Future of Engineering: How Tech is Fueling Growth” where Accenture discusses how engineering support is now being replaced with low-code/no-code software solutions.

著者について

古嶋 雅史

通信・メディア・ハイテク本部
メディアエンターテイメント統括
兼 デジタルビジネス統括
マネジング・ディレクター


川崎 文裕

テクノロジー コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク グループ シニア・マネジャー


Christian Kelly

Managing Director – Accenture Strategy, Software & Platforms


Dwight Lee

Managing Director – Strategy, Internet, Software & Platforms


Paul Johnson

Senior Principal – Accenture Research


Sriram Sabesan

Senior Manager – Technology Strategy, Software & Platforms

関連コンテンツはこちら

次なるスーパープラットフォーム
信頼構築を通じたSMB消費促進(英語)

ニュースレター
ニュースレターで最新情報を入手(英語) ニュースレターで最新情報を入手(英語)