近年、自動車業界に大きな変革の波が訪れています。
ガソリン/ディーゼル車からxEV車への転換、完全自動運転化(レベル5)※に向けた技術革新、移動関連サービス(TaaS) ※の台頭、などがこれにあたります。
具体的には、環境問題解決への圧力などから、各国の環境規制がより一層厳しくなりその煽りを受けた自動車メーカーもこぞってxEVへの戦略転換を図り、その中でも電気自動車(EV)においては、自動車業界外(例えば、家電製品業界)のプレイヤーも開発に乗り出しています。
第3次人工知能ブームの火付け役となったDeep Learningなどソフトウェアの技術革新により、今まで限界と考えられていた壁を超えた高度な学習が可能となりました。AIの技術革新に伴い、各企業はレベル5を目指した技術開発・業務提携を加速させ、各政府は自動運転普及を目的とした規制緩和に取り組んでいます。
Airbnbなど、物売りからサービスを提供するビジネスモデルが台頭し、認知/許容度が高まるにつれ、自動車業界においてもUber、Didiなど移動そのものをサービスとするビジネスが勃興しています。このサービス化の動きは今後さらに加速することが見込まれ、アメリカでは自動車産業の市場規模は1/5に縮小、一方で640億ドルの移動関連サービス市場が生まれると予想されています。
これらの自動車業界における変革は、素材・化学業界にとっても対岸の火事ではなく、大きな変革を強いられる可能性が高くなります。
例えば、EV車への転換により、性能評価指標が従来の燃費から航続距離に取って代わり、バッテリーの高品質化/低コスト化や、軽量素材・部材への対応が急務となります。
完全自動運転車の製造に際し、従来のガソリン/ディーゼル車を前提とした部材の一部は陳腐化する一方、センサー部材など新素材の供給ニーズが高まっていきます。
サービス売りが勃興することで、今まで通りただ素材を自動車メーカーに提供するだけでなく、サービス売りと直接やり取りするスピード感が求められます。
例のように自動車業界の変革はサプライチェーンの上流に位置する素材・化学業界にも影響を与えることが予想され、対応の遅れにより、企業経営に深刻な影響をもたらす可能性も孕んでいます。
本ページではそれぞれの変革と化学業界に与える影響を確認し、変革への対応方法を考察します。
※レベル5:完全自動運転化(略称:Lv5)
※TaaS:移動関連サービス(Transport-as-a-Service)