本連載の導入部「近年のマーケット変化による素材・エネルギー企業への要請と”New IT”体制の意義」にて既に触れたとおり、デジタルテクノロジーの進展により、素材・エネルギー業界においてもデータ活用が企業の競争力を左右する時代が到来しています。

IoTデバイス・センサーの普及により得られるデータが爆発的に増大、それらを高速で処理するアルゴリズムや通信・半導体技術が進化したことに加え、高度なデータ処理・解析技術を比較的安価かつ簡易に使えるオープンソースやクラウド基盤が整備されたことにより、ありとあらゆるところで企業によるAIや機械学習によるデータ活用の取組みが急速に広がっています。

このような環境下において、本連載導入部でも紹介したような先進企業がデータを活用し、より一層競争力に磨きをかける一方で、期待していたような成果につなげることができていない企業も多く見られます。弊社における過去の多くの企業様へのご支援経験を踏まえると、これらの失敗には共通のパターンが存在することが分かっています。

データ活用における共通の失敗パターン

パターン①:狙う効果・ゴール設計が曖昧なまま作業を始め、分析を行うこと自体が目的化
典型例)PoCの撤退基準が不明確で、時間・費用・人材をズルズルと無駄に使い続けてしまう

パターン②:必要な高度スキル人材が確保できず、目指す効果につながるアウトプットまで至らない
典型例)経験もスキルも少ない社内人材中心で行ったため、狙った結果が出ない原因がデータなのかそれ以外の要因なのかわからない

パターン③:導入後の業務設計が不十分で、一過性の取組みとして終わってしまう
典型例)導入・展開によるスケールメリットを最初にきちんと定量化・プランニングしないまま、データ活用PoCを始めた結果、個別最適ソリューション化して展開余地が少なく、投資回収に見合わない

データドリブンコンサルティング(以下、DDC)では、このような失敗パターンを乗り越え、データを活用しつつも、並行して組織・業務・ヒトを変革していくことを支援しています。本稿では、国内化学メーカーにおけるデータ活用プロジェクトでの事例をご紹介したうえで、弊社におけるDDCの提供価値とは何か?をお伝えします。

データドリブンコンサルティングが提供する価値

DDCの提供価値は、大きく3つあると考えています。

  1. 深いグローバル業界知見に基づく課題抽出と解決力
    ビジネスでデータを活用し、効果を創出するためには、組織・業務の現状分析に基づいた課題抽出とゴール設定がとりわけ重要となります。明確な課題やゴールがないまま、やみくもに分析に取り掛かると、分析自体が目的化してしまい、精度の良いモデルを構築することに時間を使ってしまいがちです。しかし、目的はあくまで“問題を解決し、ビジネス成果を創出すること“であり、データ分析はあくまで問題解決の手段にすぎません。したがって、データ活用であっても現状分析によって問題の本質を捉え、構築した仮説を検証する従来のコンサルティングプロセスが欠かせません。

    さらにデータ分析においては、仮説構築と検証複数回繰り返して求めたい答えに近づくアジャイル型アプローチをとることも重要です。実際のビジネスの現場では、一度のデータ解析プロセスで答えにたどり着くことは稀です。仮説を基に構築した分析結果を有識者と討議し、フィードバックをインプットに仮説検証サイクルを繰り返すことで納得感のある結論へブラッシュアップしていく姿勢が求められます。

    このように、適切な課題とゴールを設定し、ビジネス成果をあげてプロジェクトを成功に導くには、業界・業務に対する深い知見とコンサルティングやプロジェクトマネジメントに関わる高度なスキルが必要となります。弊社のDDCは素材・エネルギー業界におけるグローバル専門家集団を擁しており、そのケイパビリティに加え、弊社ネットワークと社内の豊富な国内外の事例・アセットを組み合わせることで、多くのプロジェクトご支援で実績を上げています。
  2. スピーディに結果に直結させるデータ分析力・ノウハウ
    近年ではService型の機械学習環境やGUI型データ分析ツール、オープンソースライブラリの充実により、簡便にデータ分析が行えるようになりました。これによって従来では専門領域として認知されていたデータ分析への敷居が下がったことで、データ分析に取り組む企業も増えており、一定の成果が出始めています。しかし、こうしたツールの登場によってアナリティクスが普及する一方で、誤った前提に基づく解析やアルゴリズムの誤用によって思うような結果が得られないケースも散見されます。データ活用を成果に結びつけるには、数理統計・機械学習理論や適用するアルゴリズムの特徴を正しく理解した上で、適切に利用することが極めて重要であり、広範な統計・機械学習への理解および経験が欠かせません。このような知見を持つ先端人材をグローバルで豊富に保有しているのも弊社DDCの強みと言えます。
  3. ビジネス成果の刈取りを実現する実行力
    多くの企業がデータ分析プロジェクトに取り組む意義は、あくまで変革を通したビジネス成果創出にあります。しかしながら、組織横断的な業務変革や専門的なデータ分析の企画・実行を経験したことの少ない、あるいはない企業のプロジェクト推進者にとって、組織・業務・ヒトを変革しながらプロジェクトを成功に導き、ビジネス成果を刈り取ることは容易ではありません。また、外部を頼るにしても変革とデータ分析は別々の外部パートナーに頼んでいるケースもありますが、企業のプロジェクト推進者がそれらを融合させる難しさに直面し、実行スピードが大きく落ちているケースが散見されます。

    このようなデータ分析を融合させた変革プロジェクトをビジネス成果に結びつけるためには、組織構造や企業文化にまで踏み込んだ変革が必要となることも少なくなく、トップマネジメントも巻き込んだ組織的な取り組みに引き上げることが成功の鍵となります。弊社DDCでは数々のチェンジマネジメントを実践してきたプロフェッショナルで構成されており、単なる改善レベルにとどまらない、抜本的な変革をご支援することが可能です。

データドリブンコンサルティング事例紹介:製造設備の故障予測

ここまで企業がデータ活用に取り組む際に陥りがちなパターンに対してDDCが提供できる価値を紹介してきましたが、ここでは国内大手化学・素材メーカー(以下A社)におけるデータ活用プロジェクトの例を紹介します。

A社工場では樹脂加工製品を生産していましたが、あるラインの特定の加工プロセスで設備の稼働率が不定期に悪くなる、という問題を抱えていました。その結果として高頻度で設備のメンテナンスを行うという対症的かつ非効率なメンテナンスが常態化し、設備稼働率の向上と高止まりした保全費削減が喫緊の課題でした。弊社はA社とともに、グローバル先進事例も参考とすることで、設備稼働状況・保全履歴といったデータから90%以上の精度での故障時期予測ができれば、適切なメンテナンスのタイミングを検知し、それらの課題を解決するオペレーションを実現できるのではないか、という仮説を構築し、データ活用による保全高度化に向けたPoCプロジェクトを立上げました。

なお、プロジェクト立上げに際しては、デジタル変革プロジェクトのキーテーマとしてCXOクラスにも啓蒙を行い、センサー活用による将来のデジタルPlant構想への第一歩という位置づけで企画化しました。予算・体制と役割分担(本社、現地工場の製造責任者~現場担当、弊社メンバ)とさらに将来の展開プラン、PoC評価のKPI(今回は予測精度)までを設計して開始しました。

PoCにて現場担当者から管理者レベルまで幅広くコミュニケーションを重ねる中で、効率よく分析モデルの検証と改善を繰り返した結果、1)追加データの必要性を見極め、2)センサー設置で追加データを取得することで、新たな故障因子の発見と、3)90%を超える精度で故障予測可能なモデルを僅か3か月で構築し、当初のKPIを達成しました。現在は、グローバル展開を見据えた実際のビジネス効果刈取りに向けた展開フェーズに入っています。

これまでご紹介したように、デジタル技術の高度化・発展という変化点に伴い、従来のコンサルティングや分析サービスを通じて提供してきた、組織・業務課題に対しての仮説構築と検証の反復、高度なデータリテラシー、アナリティクス、ビジネス成果へのコミットを融合し、より高い次元へと昇華したサービスとして提供できる点がDDCの最も大きな価値であり、他社との差別化ポイントだと考えます。

著者について

前田 琢磨

アクセンチュア株式会社 素材・エネルギ本部シニア・マネージャ


飯田 勝也

アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部 マネジャー


松坂 直樹

アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部 マネジャー


水野 寛之

アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部​

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