近年のマーケットの変化

IT環境の進化は凄まじく、ストレージコストは30年で約1/100万※1、DNA解析コストは15年で約1/10万※2になるなど、近年は指数関数的に進歩しています。またテクノロジートレンドとしても従来のSMACをベースに、DARQが出現する※3など、今なお進化を続けています。

最近このようなIT環境・デジタルテクノロジーを企業が活用し、大量かつ多様なデータからユーザーのニーズを迅速に汲みとり、新たな体験・サービスを生むことによって圧倒的な競争優位を獲得することでサービス提供者としてマーケットで大きな存在感を示しています。

例えば、自動車業界では移動そのものをサービスとするビジネスが多く生まれています。UberはAWSを中心としたクラウドプラットフォームで100億件を越える乗車履歴データをAIと機械学習で分析し、移動を求めるユーザーとドライバーのマッチングや最適な経路選択、事故検知などのサービスを提供しています※4。また同社は更なる移動サービス拡大を目指し、トヨタと自動運転技術を活用したライドシェア分野で協業※5するなど、新たな顧客体験を生むための準備を進めています。今後も自動車業界では自動運転技術の高まりによる新サービス(ロボットタクシーなど)が予想されるなど、移動サービス(MaaS)の市場規模は、国内だけでも2017年の約557億円から2030年には約6兆3,600億円に成長すると予想されています※6

こういったサービスは、UberだけでなくGAFAやBATHといった巨大なITサービサーがそれぞれのデジタルプラットフォームでユーザーニーズを汲み取ることによって実現しており、各マーケットで莫大な利益を獲得しています。特に特筆すべきこととして、彼らはユーザーニーズにより一層応えるべく、自らが望む素材・製品開発に向けた投資・開発にも触手を伸ばしてきており、例えばGoogleはAI向け半導体開発を推進しています※7。ユーザーニーズと圧倒的なキャッシュを武器に川上進出まで行う彼らの前では、従来のモノづくり中心の日系メーカーの考え方では太刀打ちできなくなる恐れがあるでしょう。

マーケット変化に伴う素材・エネルギー業界への影響・要請

翻って素材・エネルギー業界を見渡すと、同様にデジタルテクノロジーを徹底活用しながら、消費者のニーズまで汲み取り、それに応えていくことが求められつつあります。

石油・電力・ガス・基礎化学品・樹脂などの汎用品では、モノの品質での差別化が難しいため、どれだけ安く提供できるか、もしくは差別化された付帯サービスを提供できるかが肝になります。例えば米国大手ケミカルメーカーDowはCustomer Automation Serviceとして、注文~出荷に至る全てのオペレーションの超効率化・自動化を行い、超低コストオペレーションでの汎用品提供を実施しています※8。また英国の電力仲介会社であるFlipperは、ユーザーの電気代が最安になる電力会社を自動でレコメンド・契約するサービスを提供することで、新たな収益源を開拓しています※9。消費者視点では、Flipperのサイトに登録するだけで煩雑な手続きや価格比較を行わずに最も安く契約できる、という点で満足度の高いサービスを享受できます。

一方、機能素材のような高付加価値品は、鮮度の高い一次情報を直接もしくはデジタルツール経由で開発者が入手し、多様で移り変わりの激しいユーザーニーズを迅速に深く理解することで、顧客と共創してカスタマイズされた素材・部材を生み出し続けることが重要になります。例えば、欧米の複数の大手素材メーカーが開設しているデザインスタジオ等のように、最終ユーザーから生の声を聞きつつ、そのニーズに応じた素材・サンプル等をその場で見せながらデザインし、数日~1週間程度で一気に試作品まで作りあげて、評価してもらうといった世界が当然のようになりつつあります。このようなスピード感の裏にはメーカーとしての過去の膨大な試作実験のデータに加え、それを瞬時にニーズと紐づけて最適な試作品を作るためのシミュレーションツールなどのデジタルテクノロジーの活用によって支えられています。

このようにデジタルテクノロジーを徹底活用し、圧倒的なトップラインの向上やコスト削減を実現していかなければ、今後も持続的な競争力を維持・向上していくことはできないと考えられます。

日系素材・エネルギー企業の課題と求められる対応

日系素材・エネルギー企業は具体的にどのようにして競争力を維持・向上していけばよいのでしょうか。

もちろん既にデジタルトランスフォーメーション(DX)などを謳い、各社ともトップラインの向上やコスト削減の検討を進めています。しかし実際にグローバルを含めた全社で大きな成果を上げられているとは言い難い状況であり、その原因として以下のような事象が考えられます。

  • 全社としての課題抽出が表層的で改革の方向性が不明瞭であること
  • 結果として改革の方向性が浸透せずに、サイロ化された部門が個別最適に施策を散発していること
  • 施策も課題解決という視点が抜け、ソリューション導入自体が目的となっていること
  • ソリューションも技術優位性に焦点を当ててしまい、ユーザー体験価値・展開を意識できていないこと
  • どうスケールさせるか?というビジネス展開の視点が欠けており、小さな改善レベルに留まること
  • 既存の環境をスクラップアンドビルドできず、結果的にユーザーに使われづらい基盤となっていること

加えてこういった要因を個別の課題と捉えて分散的に対処しようとすることも、改革がスケールしない原因であると認識しています。

このような課題を踏まえ、今後日系素材・エネルギー企業は①課題の根本解決とその迅速化、②ビジネスへの展開、③展開基盤の整備、についてデジタルテクノロジーを活用しながら三位一体で進めていくことが重要と我々は考えています。

  1. 課題の根本解決とその迅速化:
    表層的ではなく根本的・構造的な課題が何かを考え、「オペレーションの圧倒的な効率化」や「全く新しいビジネスモデルへの転換」など、全社として狙うべきドラスティックな施策を打ち出すことが重要です。現在はデジタルテクノロジーを上手く駆使することで、多種多様かつ大量なデータの分析・可視化を通して迅速に全社の課題を特定し、打つべき改革・施策の想起が可能となっています。全社の改革ロードマップを描き、その中で一貫性のある施策を打ち出していくことが求められるでしょう。またその施策をビジネス価値として定量的な見込み効果に置き換え、都度検証・確認していくことで改革の機運を醸成することも重要な要素です。
  2. ビジネスへの展開:
    ①で特定した課題や施策をベースにターゲットを定め、社員(一事業部に留まらず、グローバル・関係会社も含む)や既存顧客に留まらず、サービスの受益者となりうる潜在ユーザーなど広い対象へ施策の展開を検討することが必要です。そのため、デジタルチャネルなどを駆使しつつ、BtoC企業にも劣らないような徹底したユーザー目線での顧客体験を検討・定義していくことが重要になってくるでしょう。
  3. 展開基盤の整備:
    ➀②を実現し、ビジネス価値を創出する方法として、より多くの人がより迅速かつ効率的に活用できるシステム機能やデータ設計(データの連携や統合など)が求められます。そのためには、既存のオペレーション/システムに囚われることなく、容易にスクラップアンドビルドやスケールできる柔軟な基盤が求められていきます。加えて、今までのような効率化に終始した“守りのIT”だけではなく、最新デジタルソリューションを組み合わせてトップライン向上に寄与する“攻めのIT”という視点を持つことも非常に重要です。

上記①~③はそれぞれ個別の施策ではなく、一連の改革として考えるべきです。例えば、課題設定が見当違いであれば展開や基盤をいかに検討・整備したとしても効果創出は困難です。また課題設定や改革の方向性が的確であっても、展開・スケール化ができなければ施策効果は限定的となります。そのため、我々は上記を包括的かつシームレスに実現することで初めて企業の競争力を飛躍的に向上させることが可能になると考えています。

「New IT」組織の立上げとアクセンチュアの提供価値

上記のように改革を進める企業ニーズがさらに拡大する背景に応えるべく、アクセンチュアの素材・エネルギー本部では従来から保有する、1.課題の特定・解決(Strategy/Consulting)、2.CX/UX及びAIなどのAnalytics(Digital)、3.システム基盤やアプリケーション構築(Technology)という3つの個別機能をワンストップソリューションとして提供可能な「New IT」組織と命名して再構築し、これまで以上にクライアントが訴求するビジネス価値創出への支援が可能となる体制を整えました。

具体的に「New IT」組織では以下3つのサービスを包括的に提供可能なケイパビリティを揃えています。

  1. Data Driven Consulting(DDC):
    全社として取組むべき課題の定義・解決策の検討をする従来型のコンサルティングスキルだけでなく、定量的な評価・検証をするための高度解析(AI・Analytics)の設計能力を持つハイブリッドな人材が支援を行います。
  2. UX/CX:
    最良の顧客体験を定義するためにデザインシンキングワークショップを牽引し、サービスデザインできる人材を有しています。この領域はデジタルマーケティング会社(IMJ)やデザインスタジオ会社(Fjord)の買収によって近年更に専門知見を高めており、コンサルティングファーム各社の中でも最も進んでいる領域であると自負しています。
  3. Digital Architecture:
    分断されている既存システム、データなどを繋げるため、SIの能力やクラウド、アプリケーションのアジャイル開発に強みを持つ人材を有しています。クライアントのビジネスをスケールさせるために必要なプラットフォームや最適なデジタルソリューションの選定・構築が可能です。

これら①~③のサービスがワンストップで、かつ提供人材がシームレスに連携することで、クライアントの確かなビジネス価値創出にコミットできると考えています。

アクセンチュアでは本サービスへのクライアントニーズが継続的に大きく拡大しつつあることを踏まえ、今後も「New IT」組織の強化に注力していきます。

まとめ

本稿では、昨今のデジタルテクノロジーの進展やそれに伴う業界トレンド、日本企業が競争力を確保するために求められる対応について論じ、それを支援するべくアクセンチュアとして「New IT」組織を新たに立ち上げた意義とその提供価値について述べてきました。以降は本稿で概説した「New IT」組織の提供サービスである、➀Data Driven Consulting(DDC)、②CX/UX、③Digital Architecture、について、より具体的なアクセンチュアの取組み状況や先進事例を紹介していきます。

出典

※1「グローバルICT産業の構造変化及び将来展望等に関する調査研究」 総務省(平成27年)

※2「DNA Sequencing Costs: Data」 National Human Genome Research Institute

※3Accenture Technology Vision 2019

※4「上場したUberに見るプラットフォームビジネスの裏側」 デジタルクロス

※5「トヨタ自動車とUber社、自動運転車に関する技術での協業を拡大」 トヨタ自動車ニュースリリース

※6矢野経済研究所プレスリリース 2019年2月22日

※7日経×TECH 2016年5月19日

※8Dow Customer Automation Services Improve Service, Productivity and Business Results

※9Flippers ホームページ

About the Authors

田中耕平

アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部 マネジング・ディレクター


前田琢磨

アクセンチュア株式会社素材・エネルギー本部シニア・マネジャー


横山 嵩英

アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部 マネジャー


吉原 剛生

アクセンチュア株式会社 素材・エネルギー本部 マネジャー

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