ではなぜ、製造業が製造業のままでプラットフォーム企業に移行するのは困難なのでしょうか。その理由を考える前に、プラットフォーム企業の本質について改めて確認していきたいと思います。
プラットフォーム企業と既存の企業とのもっとも大きな違いは、「プラットフォーム企業とは、取引の最適化を行う企業」である点です。これまで長らく「企業」と呼ばれていたのは、「供給ドリブン」=企業の視線で良い製品やサービスを作り提供する仕組みのことでした。具体的に言うと、「企画・開発・生産・販売」といった一連のプロセスをサプライチェーンの中で最適化して提供し、その対価を消費者から受け取る事業形態です。この企業の資産は、「ヒト、モノ、金、技術」です。またこうしたビジネスモデルは「パイプライン型」と呼ばれ、価値の流れは、プロデューサーから消費者へのあくまで一方向でした。
一方、プラットフォーム企業は「需要ドリブン」=消費者のニーズを受け止め、そこに最適なモノやサービスをマッチングさせる仕組みを提供します。それらは、消費者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を最適化する取引とでも表現すればよいでしょうか。彼らの資産は「取引を円滑化する仕組みとネットワーク」であり、消費者とプロデューサー間で交換されるデータです。Amazon、UBER、AirBnBはその代表格であり、これまでにもっとも大きな成功を収めてきた企業例です。
つまり、プラットフォーム企業は、従来のメーカーのように社内やサプライチェーン内を最適化し、高品質な製品を作り、一方通行で市場に供給するモデルとは大きく異なります。プラットフォーム型ビジネスの要点は、需要側と供給側をマッチングする大きなエコシステムを構成し、それを継続的に進化させながら両者の円滑な取引を促進することにあり、エコシステム全体を最適化することが肝要なのです。旧来とはまったく異なるビジネスモデルである点をよく理解しておく必要があります。