調査レポート

概略

概略

  • 顧客の期待が変化し、自動車業界が大きな転換期を迎えている現在においても、大手自動車メーカーの大部分は依然として従来の販売モデルに固執しています。
  • 新たなプレーヤーは大手自動車メーカーおよびそのディーラーとの競争手段として、顧客への直接的なアプローチや利便性に優れた販売プロセス、モビリティ体験などを提供しています。
  • 業界の創造的破壊が目前に迫る今、自動車メーカーがディーラーと共に今後も発展し続けるためには、顧客中心の新しい販売モデルを設計していかなければなりません。


大手自動車メーカーが自らの力で業界のトレンドをコントロールできる時代は過ぎ去りました。業界では今、CASE (コネクティビティ、自動運転技術、シェアリングエコノミー、電化)という極めて強力な4つのメガトレンドが革命を起こしつつあります。これら4つが組み合わさった時、その力はまさに破壊的なものとなります。

現代の顧客は、他の業界のサービスにおけるさまざまな体験や革新的な技術に触発された結果、自動車販売にも次世代の新たなジャーニーを求めるようになっています。特に若い顧客層は、現在の自動車の購入プロセスに不満を覚える人が多くなっています。

香港のバイトン(Byton)、米カヌー(Canoo)、 英カーワウ(Carwow)といった新たな創造的破壊者は、まさに近未来を先取りする自動車を手ごろな価格で提供しながら、変化する市場環境に呼応しています。しかし最も重視すべきなのは、こうした新興企業がシンプルかつ利便性に優れた購入プロセスを顧客に提供し、既存の自動車メーカーに大きな課題を突きつけていることです。

こうした状況を見ても、従来の自動車メーカーは販売戦略と販売網を再構築していかなければ、未来の顧客ニーズに応え、競争優位性を維持していくことが困難になることは明白です。

窮地に立たされた従来の自動車販売モデル

従来の自動車販売モデルは、価格の設定からマーケティング、販売に至るプロセス全体において、その中心的な役割を担う個々のディーラーに大きく依存しています。ディーラーはメーカーから自動車を仕入れ、それをエンドユーザーに再販売することによって、メーカーの新車販売収益の大部分を生み出しています。

メーカーにとって、こうした従来の販売モデルには3つの弱点があります。

満足度の低い顧客ジャーニー

オンライン利用のオプションが限られており、購入プロセスが不便、かつチャネル間の連携が欠けている。

一貫性に欠ける価格設定とブランド内での競争

一貫性に欠ける価格設定が同一ブランド内での競争を生み、結果的にディーラーの利ざやが1~3%減少している。

顧客への間接的なアクセス

メーカーが顧客と直接的なエンゲージメントを確立できないため、顧客情報が得られず、それらの情報に基づいた真にデータドリブンな販売を実現できない。

全て見る

直販モデル:未来のソリューション

メーカーによっては顧客により良いオンライン体験を提供すべく、オンライン販売の実現に向けた試験的な取り組みをすでに始めています。しかしながら、メーカーによるオンライン戦略の導入はスピードに欠け、また提供する顧客体験も満足できるものとは言えません。

そもそも自動車メーカーはオンライン販売の経験がほとんどなく、さらにディーラーとのカニバリゼーション(共食い)を懸念してオンラインソリューションの推進に後ろ向きな側面があります。

こうしたことから、新たに市場に参入したプレーヤーの直販モデルを模倣するメーカーも出てきました。つまり、メーカーがすべての流通網を統括して顧客への直販を行い、ディーラーはあくまでもメーカーの代理店として販売ベースの報酬を得るというアプローチです。

これは一見シンプルなアプローチに思えますが、実際には電気自動車や自動運転車の導入にも匹敵する極めて大きな変革がメーカーとディーラーに求められます。具体的には、メーカーは以下の3つの領域において、卓越した能力を身につけなければなりません。

顧客中心主義の確立とカスタマーインサイトの獲得

メーカーには、何よりも顧客を中心に据えたオペレーションが求められます。そのためには、適切な組顧客中心主義の確立とカスタマーインサイトの獲得織体制とITインフラの構築への投資を行う必要があります。

ディーラー網の活用

メーカーのディーラー網は資産であり、特に市場への新規参入組にとっては貴重な存在です。それでもなお、ディーラーを直販モデルに組み込むことは容易ではありません。

コアビジネスを変革し、新たな分野で収益を生む

メーカーは既存のビジネスモデルと収益源を見直す必要があります。コアビジネスの変革は容易ではありませんが、これは避けて通れないステップです。

全て見る

今こそ行動の時

途方もなく大きな創造的破壊がこの先に待ち受けていることを考えると、販売モデルの変革は自動車業界が新しい時代に向けて踏み出すべき最初のステップに過ぎません。

電化技術や自動運転技術のさらなる進化を実現するには莫大な投資が求められますが、販売モデルを最適化することで、大きな余剰金を生み出すことができます。具体的には、典型的な中規模市場では販売コストを最大4%縮小し、年間10億ドル以上の節約が可能になります。この方法によって、自動車メーカーは破壊的な技術革新からとり残されることなく、未来に向かって前進するために必要な投資の一部を捻出できるでしょう。

シェアードモビリティやプラットフォーム経済が大規模なバリュープールを切り拓くことを踏まえ、自動車メーカーは顧客に直接アクセスできる環境を構築して、小売業者からモビリティプロバイダーへの変革を実現する必要があります。

メーカーは直ちに行動を起こさなければ、2035年までに新たな競合他社に収益の30%を奪われる恐れがあります。革新的な販売モデルへの方向転換を図ることにより、メーカーはもはや不可避となっているデジタルディスラプションに揺らぐことなく、将来の課題に立ち向かっていけるはずです。

総体的に見て、自動車メーカーは理想的な出発点に立っていると言えます。重要なのは、今すぐ行動することです。そのための準備は整っているでしょうか?

Axel Schmidt

Senior Managing Director, Lead – Global Automotive


​Johannes Trenka

Managing Director – Accenture Strategy, Customer Insights & Growth Strategy

関連コンテンツはこちら


Subscription Center
最新コラム・調査をニュースレターで 最新コラム・調査をニュースレターで