熾烈な競争が続く今日の航空/防衛市場において、生産性の最適化はエアバスをはじめとするすべての企業にとっての共通課題です。加えて、優れた人材の確保も困難さを増しており、それだけに従業員体験、安全性、および満足度の向上は、ビジネスを成功に導く上での不可欠な要因となります。
エアバスが提供するすべての機体の製造は、数千個もの可動部品を用いた極めて複雑なプロセスによって支えられています。ビジネスの成長と競争優位性の観点において、そこで何よりも重要となるのがスピードと精度です。この2つの要素をいかにして高めていくかが、最終的な収益に大きな影響を及ぼします。
こうした中、同社は製造現場の作業員の負担軽減に向けて、航空機用座席の組立工程を合理化し、組立時間の短縮化を図りたいと考えていました。
航空機の製造プロセスにおけるハンズフリーのウェアラブル・デバイスの有効活用は、複雑な組立環境での作業員の生産性、エンゲージメンをかつてないほど向上させます。これだけではありません。エラーリスクの低減、作業員の安全性についても、飛躍的な改善がもたらされます。
ウェアラブル・テクノロジーは、まさに製造現場にとって最適なソリューションです。製造現場で必要となる重要な情報へのリアルタイムなアクセスが可能になることで、作業員の生産性と満足度が高まると同時に、作業員研修の削減といったメリットも期待できます。
アクセンチュアとエアバスは、今回のプロジェクトの中で航空/防衛業界向けの最新のウェアラブル・テクノロジーを共同で開発しました。そこから生まれたのが、業界の用途に特化した高度な品質を備えたデジタル・スマートグラスです。この新たなデバイスの活用によって、現場の作業員は航空機キャビンの内装作業の精度を高め、複雑性を軽減することができます。
プロジェクトに参加した両社のプロフェッショナルは、スタートアップのように迅速な繰り返し型開発を行うことで、開発フェーズをわずか1カ月で完了。作業員は完成したスマートグラスを使用して、座席位置のマーキングプロセスの精度を向上するとともに、作業をより短時間で遂行できるようになりました。
新開発のスマートグラスは状況に応じたマーキング作業指示書を用いることで、作業員が現場で必要なすべての情報を提示します。これにより作業員は機体のフロアでのマーキングをより迅速に行い、エラーもゼロに削減することができます。さらにアクセンチュアが提供するアイウェア・テクノロジーによって、バーコード・スキャン、クラウドからのデータ取得、音声コマンド、AR(拡張現実)といった多彩な機能とインタラクティビティが実現しています。この革新的なテクノロジーを活用すれば、航空機の座席位置をミリ単位の精度でマーキングし、その精度やクオリティをチェックすることが可能です。
このプロジェクトは、大手航空機メーカーの最終組立ラインにウェアラブル・テクノロジーを本格導入した世界初のケースと言えるでしょう。
航空/防衛企業にとって、財務実績の改善は最優先の経営課題の1つです。アクセンチュアとエアバスは今回のプロジェクトを通じて、ウェアラブル・テクノロジーが現場の作業員が必要とする情報を即座に提供し、作業負担を軽減することによって、画期的なイノベーションを業界にもたらすことを証明しました。
このイノベーションの成果には、目を見張るものがあります。1機当たりの座席位置マーキング作業の生産性は500%向上し、エラー率はゼロに低減。さらにマーキング作業支援に要する時間も著しく短縮されました。さらに、作業員がマニュアルを参照しなくてもリアルタイムでスマートグラスからデータを取得できるようになったことで、研修の必要性も軽減されました。
このプロジェクトで開発されたスマートグラス・テクノロジーは、2016年3月からエアバスA330長距離旅客機の座席位置マーキング作業支援および座席設置プロセスに本格導入されています。アクセンチュアとエアバスは現在、協働して同様の技術を用いた応用を進めており、A330の製造現場のさらなるデジタル化を推進中です。
エアバス・グループは航空、宇宙、防衛関連サービスにおける世界的なパイオニアとして、最先端のテクノロジーを生み出し続けています。
特に20年以上にわたってイノベーションを追求し続けてきた同社が開発したA330型機は、最も近代的、かつ収益性と信頼性に優れた航空機として、現在と未来のあらゆる市場に向けて、さまざまな用途にカスタマイズされたソリューションを提供しています。
A330型機の改良型となるA330neoは、「航空会社における比類のないコスト効率」と「乗客に対する卓越した快適さの提供」という同社の製品ラインの価値を両立する、まさに技術の粋が凝縮された航空機です。