テクノロジービジョン2020アップデート

アクセンチュアテクノロジービジョン2020 の発表時には、新型コロナウイルス(COVID-19)はまだ世界的なパンデミックの状態ではありませんでした。しかし、状況は急激に変わり、世界は数十年に一度の大きな困難に直面しています。人々の生活はこれまでになく大きく変化し、あらゆる業界に影響が及び、企業の成長や革新に向けた取り組みにも大きな影を落としています。

今年のテクノロジービジョンでは、“ひと”のニーズや期待と、それらにそぐわないビジネスモデルやテクノロジー活用方法の不一致を「テック・クラッシュ」と表現し、企業が既存のモデルを踏襲し続けることは、顧客に不満を与え、従業員の心を遠ざけるばかりでなく、永続的にイノベーションや成長の可能性を制限してしまうリスクもはらんでいると警告していますが、新型コロナウイルス(COVID-19)により、「テック・クラッシュ」の問題はより深刻さを増しています。

体験の中の「私」(The I in Experience)

パーソナライズされた双方向の共有型仮想コミュニティの構築を推進する企業は、将来にわたって成功することができるでしょう。

AIと私(AI and Me)

企業が説明可能なAIや、人間とAIの協働を支援、実現するツールに投資することで、今後の事業や労働力を再考する新たな可能性が拓かれます。

解き放たれるロボット(Robots in the Wild)

ロボティクス業界のリーダーはパンデミックに伴う新たな役割を担っていますが、長期的な視点を持つ企業は、より自動化された将来を見据えた基盤を築いています。

スマート・シングスのジレンマ(The Dilemma of Smart Things)

企業は一線を踏み越えることなく新たな機能をデバイスに導入する方法を検討する必要があります。どのような意図であれ、一度顧客の信頼を損なってしまうと、享受できるメリットは短命に終わってしまうでしょう。

イノベーションのDNA(Innovation DNA)

アジャイル(俊敏)でレジリエンス(復元力)の高いイノベーションのDNAを構築している先進企業は、新たなニーズに速やかに応える能力を構築することができるでしょう。

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現状を打破するために

新型コロナウイルス(COVID-19)が私たちの生活や世界経済、企業に及ぼす影響の全容は今の段階ではまだ明らかになっていません。ただ、変革を大きく促進する要素となっているのは確かです。誰も遭遇したことのない破壊的な課題の出現により、イノベーションの必要性がこれまでになく高まっています。企業が考えるべきは、「いかに速やかに行動できるか」です。新たな現実、喫緊の課題に照らし、アクセンチュアはテクノロジービジョン2020のトレンドを見直し、ポスト・コロナの世界で人や事業にどのような影響があるかを考察しています。

体験の中の「私」(The I in Experience)

このトレンドでは、デジタル体験の進化について考察しています。昨今、一般的になった「ブラックボックス化されたパーソナライゼーション」は、顧客に「蚊帳の外に置かれている、自分でコントロールできない」という感覚を与えています。これに代わり、顧客の主体的な関わりを重視する新たなパーソナライゼーションのモデルが求められています。一方で、新型コロナウイルス(COVID-19)により、人々の生活におけるデジタル体験の役割や重要性が変化したことに注意する必要があります。企業は将来的にわたって生き残るために、より俊敏なエンゲージメント戦略が求められています。

短期的には人々の変化に合わせ、パーソナライゼーション戦略を更新していくことが重要です。企業は、“ひと”の期待やニーズに関する最新情報を迅速に把握し、有効でなくなった情報を速やかに取り下げる必要があります。“ひと”が自分のデジタル体験をコントロールできるようにすることが、期待やニーズを把握する第一歩となります。

長期的にはデジタル体験の目的は変化していきます。真に共有されたデジタル体験やデジタルコミュニティの需要が急速に拡大しており、リーダー達はその波に乗ろうとしています。ポスト・コロナの世界で対面での集まりに代わる手法が企業や消費者から求められるにつれて、デジタルプラットフォームのニーズは今後も加速するでしょう。パーソナライズされた双方向の共有型仮想コミュニティの構築を推進する企業は、将来にわたって成功することができるでしょう。

AIと私(AI and Me)

このトレンドでは、先進企業がどのように無限の新たな可能性を見出すAIの能力と、アイデアを具現化する人間の力を組み合わせ、人間とAIの協働を推進しているかに焦点を充てています。人間とAIの協働は、新型コロナウイルス(COVID-19)の発生前からすでに多くの業界で注目されいましたが、現在、AIの重要度はさらに高まっていると言えるでしょう。

短期的にはAIによる業務のサポートが切実に求められています。新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン開発競争でも人間とAIの協働は重要な役割を担っていますが、医療分野以外でも、新型コロナウイルス(COVID-19)による新たな制約や課題の克服にAIシステムを活用することができます。AIを活用することで、より柔軟な組織を構築するための新たな解決策やアイデアを構想することができます。

長期的には最善の形で人間とAIが協働することで、AIに対する人々の懸念を払拭できるかもしれません。アクセンチュアが2019年に実施したAIに関する調査では、社員がAIの活用を拒んでいることがAIの普及を妨げる最大の要因であることが明らかになりました。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、この課題を克服できる可能性があります。企業が説明可能なAIや、人間とAIの協働を支援、実現するツールに投資し、適切な環境を整えることができれば、今後の事業や労働力を再考する新たな可能性が拓かれます。



解き放たれるロボット
(Robots in the Wild)

「解き放たれるロボット」というトレンドの通り、多くの人がステイホームを実践し、ソーシャルディスタンスが新たな常識となる中、ロボットは予想できないほどのスピードで、あらゆる業界、環境で活用されています。企業や政府が新たな「非接触型」の解決策を模索する中、ロボットはこれまで以上に事業や社会にとって重要になっています。

短期的にはパンデミックの中でロボットは新たな役割を担っています。ロボットは多くの場合、現場の従業員の作業をサポートしており、いち早くロボットを活用できる企業はより効果的にウイルス対策を行うことができています。現在、その活用範囲は拡大しており、政府や、従業員、一般市民においても新たな活用事例が生まれています。人間とAIの協働と同じように、ロボットもパンデミックによりその真価が注目され、より多くの場面で活用されるようになるでしょう。

長期的にはロボティクスに関連するエコシステム全体が成長していきます。パンデミックによりロボティクスや自動化の重要性が増していますが、自動化に対するニーズの拡大により推進されるのはロボティクスだけではありません。ロボティクスに関連するエコシステム全体の成長が加速していくでしょう。例えば4Gネットワークはスマートフォンの普及と足並みを揃えて成長してきましたが、ロボットの活用においてはデータ転送速度の向上と遅延の低減が必要となることから、ロボットの重要性が増すと同時に、IoTデバイス、5Gも同様に普及していくでしょう。ロボティクス業界のリーダーはパンデミックに伴う新たな役割を担っていますが、長期的な視点を持つ企業は、より自動化された将来を見据えた基盤を築いています。

スマート・シングスのジレンマ
(The Dilemma of Smart Things)

このトレンドでは所有することの基本概念が変化している点について論じています。顧客がデバイスを購入した後も企業がアップデートを加えることが容易になり、製品は常にベータ版であるという時代に突入しています。新型コロナウイルス(COVID-19)により、公衆衛生上アップデート可能なスマートデバイスに対するニーズが高まっている一方で、ベータ版に伴う足かせを取り除く必要があります。

短期的にはアップデート可能なスマートデバイスは新型コロナウイルス(COVID-19)対策ツールとなります。ベータ版に伴う足かせはなくなったわけではありませんが、新型コロナウイルス(COVID-19)への対応が一時的に優先されています。スマートヘルスデバイスは症状の特定、患者のモニタリングなどが可能で、研究者や政府の取り組みに対し、価値あるヘルスデータを豊富に提供しています。また多くのロボットデバイスが新型コロナウイルス(COVID-19)対策に向けてアップデートされており、公共スペースでの安全な距離の徹底、手指消毒剤のディスペンサーなどに利用されています。これまでスマートデバイスの別用途での活用や新機能の絶え間ないアップデートは、時として人々の足かせとなっていましたが、新型コロナウイルス(COVID-19)の状況下ではかつてないほど需要が高まっています。

一方で、長期的にはベータ版に伴う足かせの問題が再浮上してきます。デバイスを活用した新型コロナウイルス(COVID-19)対策の取り組みについては、プライバシーの問題が議論されており、多くの人が、将来にわたって自分のデータが意に反して利用されるのではないかと心配しています。企業は一線を踏み越えることなく新たな機能をデバイスに導入する方法を検討する必要があります。どのような意図であれ、一度顧客の信頼を損なってしまうと、享受できるメリットは短命に終わってしまうでしょう。

イノベーションのDNA(Innovation DNA)

このトレンドでは今後イノベーションが起こる注目の分野として、成熟したデジタル技術、科学の進歩、新たなDARQテクノロジー(分散型台帳技術、人工知能、拡張現実、量子コンピューティング)を紹介し、これらの分野の技術を組み合わせることで他社と差別化を図ることができると考えています。一方で、新型コロナウイルス(COVID-19)によってそのバランスが変わり、DARQテクノロジーが予想以上に活用されていますが、新たなテクノロジーの活用が進み、いたるところでイノベーションが起こっています。

短期的にはパンデミックはイノベーションに関するストレステスト(イノベーション・ストレステスト)をエコシステム全体に課しており、エコシステムでのイノベーション創出の真価が問われるでしょう。新型コロナウイルス(COVID-19)に対応するため、企業は新たな方法でエコシステムでの連携を強化しています。例えば、市はホテルと協力し、ホームレスの人に住む場所を提供することで、混雑したシェルターでウイルスが拡大するのを防いでいます。パンデミックの中、企業は今までにない様々なパートナーシップの可能性を模索していますが、今、企業が構築しているパートナーシップ、製品、サービスは、危機が去った後も今後何年にもわたり事業の根幹となるでしょう。

長期的には、これまでにない大胆なイノベーションが起こってくるでしょう。現在、世界は誰も予想できないペースで変化を続けており、企業にもこれまで以上に柔軟性が求められています。多くの経営層が新たなイノベーション戦略を策定し、従来にない協力体制を構築することでこの危機に対して迅速かつ継続的に対応しています。ポスト・コロナの世界でも企業が生き残るためには、試行錯誤や迅速な変革に対する警戒心は捨て、大胆なイノベーションを実現していく必要があります。

現在のトレンド

新型コロナウイルス(COVID-19)により、アクセンチュアがテクノロジービジョンで定義するトレンドの重要性と緊急性は増しています。これまで時間をかけて顕在化していた顧客課題が次々と現れ、数年かけて実現するはずだったビジネスチャンスがすぐそこに到来しています。これらの課題に対処するため、組織を再定義し、イノベーションを実現していくことが求められています。テクノロジーは“ひと”の生活になくてはならないものとなっており、速やかに新たなテクノロジーを展開していくことが重要になっています。先の見えない状況の中で、目まぐるしく変化する時代へと突入しつつありますが、このテクノロジートレンドが企業の成長戦略策定の一助なれば幸いです。

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