概略

概略

  • DX(デジタル変革)に成功しているリーダー企業とDXに出遅れているラガード企業を比較すると、両者の収益成長率の差は昨今では5倍へと拡大しています。 
  • そのような差が生じている要因を掘り下げていくと、企業によって異なる「先進テクノロジーの本格活用の度合い」が収益成長率に大きく影響していることが判明しました。アクセンチュアではこの差を「DX格差」と定義しました。 
  • DX格差の要因は、経営・業務・ITが一体となって進化し続けるテクノロジー・トランスフォーメーションをその企業が備えているかどうかによります。一方で、足許では、デジタル化に遅れをとった企業の中にも、既存事業を継続するために不可避なテクノロジー支出と、イノベーションを目的としたテクノロジー支出の比率を一気に逆転させるなどの大胆な戦略の実践によって、飛躍的な成長を実現している企業群(リープフロッガー)も存在します。 
  • 本記事では、リープフロッガーの発想や動き方も参考に、いかにして一気呵成な取り組みによって遅れを取り戻し、攻めに転換するかについて解説します。 


広がる「DX格差」。収益成長率の差は2倍から5倍へ

昨今の社会や日本企業を取り巻くビジネス環境における最大の特徴は、「変化のスピードがますます加速している」の一言に尽きます。

そうした変化への対応による自社の成長の維持を目的として、企業のマネジメント層ではデジタルへの適応や習熟といったデジタル変革(デジタルトランスフォーメーション、DX)の推進への取り組みが活性化しています。しかし実態として、その変革から得られるビジネス成果には企業ごとに差が顕著となっています。 

アクセンチュアによる継続的な調査の結果、テクノロジーを本格的に活用している「リーダー企業」(Leaders:先進的グループ)は、高いビジネス成果も創出していることが明らかとなりました。一方、テクノロジーの活用に出遅れたり、着手はしたものの取り組みが中途半端だったりしている「ラガード企業」(Laggards:出遅れグループ)」は、ビジネス成果へとつながっていないといった実態が判明しました。 

つまり、リーダー企業とラガード企業におけるテクノロジー活用の巧拙の差が、ほぼそのまま企業の収益成長率の差となって現れています。その差は2015年から2018年までの間で2倍、2021年時点で5倍まで広がっています。アクセンチュアではこの差を「DX格差」と命名しました。 

コロナ禍はDX格差をますます顕著なものにしています。では、リーダー企業とラガード企業におけるテクノロジー活用の具体的な違いとは何でしょうか。それは、全社規模での先進テクノロジーを最大限に活用するための必要条件として「テクノロジー・トランスフォーメーション」を備えているかどうか、そしてアウトカムを徹底的に追求しているかどうかにあります。(テクノロジー・トランスフォーメーションについて詳しくはこちら) 

先行企業と出遅れ企業との収益ギャップは更に拡大

コロナ禍において成長を維持しているリーダー企業のフォーカス領域

先述の通り、テクノロジー・トランスフォーメーションを具備し、先進テクノロジーを積極的に活用しているリーダー企業は継続的な成長を遂げているなか、足元のコロナ禍の中において、リーダー企業とラガード企業の差はより顕著になっています。

実業務で積極活用している先進テクノロジーの具体的な領域としては、セキュリティ、データ、IoT、クラウドが挙げられます。これらの領域に注力していることがリーダー企業の対応における特徴です。

また、リーダー企業の90%が先進テクノロジーに対して高い期待を示しており、先進テクノロジーを知っているだけやPoCをするだけでは終わらせず、アウトカムを生み出そうと実ビジネスへの適用に向けて取り組んでいることも分かりました。

データ活用においても、リーダー企業には個人情報保護などコンプライアンス遵守を含めて、丁寧なデータ活用が見られます。データを活用するには適切な環境整備が不可欠であることから、データ基盤の構築など包括的な取り組みをリーダー企業は進めていることが分かります。

一方、先進的なデジタルテクノロジーを活用する上では、自社のみで完結するケースは非常に少ないのが実態です。各分野の専門企業とのパートナリングで自社に必要なソリューションを獲得し、価値創出へと繋げていることがリーダー企業で顕著な傾向です。

このように、日々のビジネスの中でテクノロジーをどのように活用するかを真剣に考え、マネジメント層から現場リーダークラスまで臆せず実際のビジネス・業務へ適用していくことに取り組んでいる企業は成長性を維持していることがわかります。

続いて、具体的な投資領域について見ていきます。セキュリティの重要性はいうまでもありませんが、利益創出のためのテクノロジー投資にも大きな差があります。たとえばIoT、データ、クラウドなどのテクノロジーを活用し切れているかどうか、自社に積極的に取り込めているかどうかが重要だとリーダー企業では認識しています。

テクノロジー活用に対する期待値とコロナ環境下で進んだテクノロジー

出所:アクセンチュアが、日本を含む25カ国、20の業界における4,300名(日本は200名)の企業経営層およびIT担当幹部を対象に調査 

・テクノロジー活用力(テクノロジー適用の度合い、組織・プロセスを横断したテクノロジー適用の度合い、組織文化)をスコア化、上位10%を先行企業、下位25%を出遅れ企業と識別

企業がシフトしていくべき「差別化」と「トランスフォーメーション」 

以上のアンケート調査の結果から見てきたように、先進テクノロジーを活用している企業はビジネスの実益も得ていることが明らかです。 

では、日本企業がコロナ禍のビジネス環境で成長し続けるためには、何から取り組むべきなのでしょうか。アクセンチュアでは、企業が「テクノロジー企業」へと変革することがその具体的アプローチであると提唱しています。(「テクノロジー企業」について詳しくは、アクセンチュア テクノロジービジョン2020で詳しくご紹介しています) 

背景として言えるのが、ビジネスとテクノロジーのライフサイクルギャップです。2000年以降、ビジネスは短命化している一方、基幹システムのライフサイクルは横ばいです。10年〜20年にわたって基幹システムを運用し続けている企業は全体の3割を超えています。ビジネスとITのライフサイクルギャップをいかに埋めながら、テクノロジーを起点とした新たなビジネス成果を産み出すための態勢が重要といえます。 

具体的なアプローチを検討していきましょう。旧来はテクノロジーを、事業運営において「数多ある機能のうちの1つ(Functional)」や「業務高度化の手段(Enabling)」として位置づけていたのが一般的な発想でした。アクセンチュアでは、これをテクノロジーが持つポテンシャルを最大限に引き出すことができる姿として「差別化(Differentiating)」や「トランスフォーメーション(Transformational)」を目指すべきと考えます。そのためには、従来の「“ビジネス”と“IT”」といった二元論や役割分担論ではなく、両者を一体化した態勢の具備が求められます。 

マーケットを新たに創造するようなイノベーションを起こす取り組みへと発展させるには、テクノロジーバリューの獲得こそが不可欠です。

図:テクノロジーバリューの引き出しに必要な姿勢

上の図にある「現状」の企業も決して遅れているわけではありません。このステージから一気呵成にITやビジネス部門の組織の壁を超越する取り組みをしなければ、自社の将来がラガード企業へと転落してしまう将来が容易に想像されます。 

差別化要因を獲得し、マーケット変革を起こし、あるいはマーケットを新たに創造するようなイノベーションを起こす取り組みへと発展させるには、テクノロジーバリューの獲得こそが不可欠なのです。 

「社会のデジタル化に伴う新たな顧客価値や事業機会は、テクノロジーによりもたらされる。企業としてのテクノロジー活用力をどこまで上げられるかが再び重要に。」

テクノロジー・トランスフォーメーションの実現へ至るテクノロジー戦略 

ここまで、先進テクノロジーを活用している企業はコロナ禍においても結果として成長も実現していること踏まえ、企業がシフトしていくべき姿が「差別化」「トランスフォーメーション」であることがお分かりいただけたと思います。

このような転換を進めるために経営マネジメント層は、全社規模での「態勢のシフト」が求められます。アクセンチュアが提唱する「テクノロジー・トランスフォーメーション」の考え方に基づきながら、ビジネス・テクノロジーの双方を包含したアジリティを持ったカルチャーやオペレーション、およびテクノロジープラットフォームへの転換を図ることがポイントです。

変革のプロセス「3Rテクノロジー戦略」 

大きな“既存ビジネス”を抱える企業が、平時の改革を断行し「態勢のシフト」を行うには、経営による強力なリーダーシップと、利益実感を担保した変革遂行が重要となります。このハードルを乗り越え、企業がテクノロジーバリューを高めていくための変革シナリオとしてアクセンチュアでは「3つのR」によるテクノロジー戦略を提唱しています。  

  1. 強力なシステムを構築するプラットフォーム再構築(Replatform)を、主にクラウド移行を加速することにより推進 
    • クラウドへの移行と刷新を進め、強力なシステムを構築します。慎重な評価と優先付けを行いながら、IT全体をクラウドへ移行しモダナイズします。 
    • それを契機として、テクノロジー・トランスフォーメーションの発想を具備したシステムへと転換します 
  2. IT関連予算をイノベーションへと転じ、戦略の再考(Reframe)する 
    • 保守運用や制度対応等の既存事業継続のために必須な支出は、大胆なコスト削減で余剰分をイノベーション投資へと振り向け 
    • 加えて、イノベーション重視のマインドセットや、目先のROIに捉われない投資を許容する新たなヒト・モノ・カネの管理手法を導入し、イノベーション投資にテクノロジー関連の経営資源を極端にシフト
  3. 強力なシステムと「広範な価値創出(Reach)」の転換の組合せがもたらすパワーを従来の事業優先順位を越えて活用し、多面的な価値を創出します。 
    • テクノロジーへのアクセスを部門横断で拡大し、テクノロジーが本来もたらしうる潜在価値を顕在化させ、ビジネス成果を徹底して追及 
    • ビジネスを飛躍的に成長させるイノベーション創出には、幅広い組織とのコラボレーションが不可欠であり、経営が社員やステークホルダーを適切に誘導することが重要 

3Rテクノロジー戦略の実行におけるテーマ 

投資とシステムを転換して飛躍する「リープフロッガー」 

本論考の前半では、先進テクノロジーを本格活用しているリーダー企業が利益率などの面でも持続的に成長しており、出遅れている企業との差が開いていることを述べました。 

事実としてリーダー企業は先述のようなクラウドシフトやアジャイルなシステムの構築の実現によってイノベーションを創出できる体制への変換を実現しています。 

では、出遅れてしまった企業にそのギャップを埋める手段は残されていないのでしょうか。アクセンチュアが調査結果の分析をさらに進めていった結果、一気呵成な戦略的投資によって、短期間でその差を縮めることに成功している企業群の特徴が明確になりました。 

そうした、成功というゴールへ一足飛びに取り組む飛躍的な挑戦で変革を推進している企業を「リープフロッガー」(Leapfrogger:跳躍企業)と定義しています。その割合はリーダー企業が全体の10%程度であるのに対し、リープフロッガー企業は18%ほど確認できています。 

リープフロッガーで実行されている取り組みは大きく分類して2つあります。 

  1. イノベーション実現のためのIT予算の転換的振り替え 
  2. アジリティの高いシステムである「システム・ストレングス」の実現

IT予算の内訳において、リープフロッガー企業も従来は「ITシステムの保守運用60〜70%、イノベーション投資30〜40%」でした。しかし、一気呵成にこの内訳を入れ替え「保守運用30%、イノベーション投資60%、コスト削減10%」へ転換しています。 

新しい投資管理の手法が必要であえることは先述しました。リープフロッガー企業のイノベーション投資の大胆な転換は、まさにその実践例です。 

しかしIT投資さえすれば収益性確保に一気につながるイノベーションを達成できるわけではありません。下のグラフの通り、リープフロッガー企業にはシステム・ストレングスが高いという共通点があります。システム・ストレングスを獲得する方法は先に述べた通りですが、「IT投資の抜本的な見直し」と「システムそのものの大改革」の実行が重要です。

リープフロッガー企業にはシステム・ストレングスが高いという共通点があります。

図:リープフロッガー企業のポジショニング

本論考では、あらゆる業界でDX格差が拡大している現状を起点として、成功している先進的リーダー企業の成功の鍵を分析したうえでDXによって目指すべき「差別化」と「トランスフォーメーション」のモデルを解説しました。 

続いてその目指す姿を実現するためのアプローチとしてReplatform、Reframe、Reach3Rテクノロジー戦略の概念とその実行方法、システム・ストレングスの強化とIT投資の転換によって飛躍に成功している企業のモデル、リープフロッガーについて説明しました。 

このようなモデルと変革シナリオが、日本企業が取り組むべきデジタルシフトのあり方であると考えられます。アクセンチュアはお客様企業がDXにおける成功企業として、飛躍的成長を成し遂げるべく、包括的にご支援いたします。 

著者について

村上 隆文

ビジネス コンサルティング本部 テクノロジーストラテジー&アドバイザリーグループ日本統括 マネジング・ディレクター


山根 圭輔

テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービスグループ共同日本統括 マネジング・ディレクター

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