お客様企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するうえでは、ITのありかたそのものを発想転換し、継続的イノベーションを生み出すための「DX基盤」を構築する必要があります。本論考では、アクセンチュアが提唱する全社DX基盤「Living Systems(リビングシステム)」をご紹介します。ポイントは以下の4点です。

  • ビジネスの急速な短命化と基幹系システムの長命化により、「市場の変化に対してITシステムが迅速に対応できない課題」が深刻化しています。
  • アクセンチュアが提唱する「Living Systems(リビングシステム)」は、デジタルビジネスに必要不可欠なアジリティ(変化に機敏に適応していく力)を加速させ、経営・業務・ITが一体となって進化し続ける“生きた仕組み”を実現します。
  • Living Systemsは、「レガシーという概念が存在しない世界観」を持ち、基幹系システムのリプレースに伴う「谷間の期間」が事実上消滅する、新たな全社DX基盤です。
  • Living Systemsは主に「ディカップリングアーキテクチャ」「AI経営ダッシュボード」「アジャイル実行体制」の3つの要素で構成されます。

ビジネス環境の変化に追随できない既存ITシステム

現代は市場環境の変化が激しく、「ビジネスの急速な短命化」があらゆる業界で発生しています。デジタル化の必要性が叫ばれる一方で、企業は「ビジネスの基盤となるITシステムがビジネススピードに追随できていない」というジレンマに直面し、その推進体制の見直しを迫られています。ITシステムの柔軟性とスピードを追求しようにも、レガシー化した基幹システムの存在がハードルとなって課題の解決を阻んでいるのが、多くの企業における現在の状況です。

持続的なビジネスの成長を支えるデジタル変革(DX)を実現するには、ITの「在り方」を大胆に発想転換する必要がある、とアクセンチュアは考えます。基幹システムを一度開発したらそれで終わりではなく、稼働開始を出発点として、絶え間ない改善と機能アップデートによって進化させ続けることが重要です。新たなビジネスの要求に即応できるスピードとパフォーマンスを発揮しながら、デジタルビジネスを力強く支える新たな全社DX基盤として、アクセンチュアは「Living Systems(リビングシステム)」を提唱しています。 

Living SystemsはマイクロサービスやAPI、デカップリングアーキテクチャなどの技術の組み合わせで構成されます。業務とITの協働によって、経営・事業トップの意思を実現するビジネスアジャイルな実行体制を確立し、市場の変化に対応できる「最適な状態の維持」を可能にします。

「ITがビジネススピードに追随できない」というジレンマ――膨大な機会損失の可能性があります。

ランザビジネスに引きずられる日本企業のIT

冒頭で述べた「ビジネスの急速な短命化」を示す客観的なデータがあります。S&P 500に名を連ねる企業の平均寿命は、経済がリーマンショックから十分に立ち直った2018年には「28年」でしたが、現在は急速な下落傾向にあり2030年には「14年」という短命化が予想されています。2000年以降だけをみてもS&P 500の企業の52%がすでにリストから消えており、市場環境の変化の激しさを物語っています。

一方で基幹システムは年々長命化しており、「基幹システムの開発時期・平均経過年数」は、2007年には13.8年でしたが、2011年には14.6年となり、2015年にはさらに伸びて15.2年となっています。「2025年の崖」問題に代表されるITシステムの老朽化と複雑化、人材不足の深刻化は、経営者にとって大きな課題として認識されています。

昨今、経営者の多くは「自社のレガシーシステムがイノベーションの阻害要因になっている」と認識しています。しかし同時に「レガシーシステムを即座には廃止できない」とも考えており、問題は膠着化・深刻化しています。

グローバルに目を向けると、積極的にデジタル化を推進してきた先進企業は、すでにDXの恩恵を得るフェーズに入っています。一方で日本企業のIT投資は今なお「業務遂行支援」「効率化」「コスト削減」が中心となっています。つまり日本企業は「ランザビジネスに引きずられ、ITがビジネススピードに追随できない」というジレンマを生み出しているのです。

こうしたギャップを克服し、「ビジネスの短命化」という現実に対応するITシステム基盤を構築するには、IT自体に対する大きな「発想の転換」が不可欠です。

レガシーシステムへの課題認識とジレンマ

70%

70%の役員が、イノベーションの阻害要因の1つとしてレガシーシステムを挙げ、レガシーシステムにはビジネス環境の現状に適さない欠陥、複雑性、課題があると考えている

83%

83%の役員は、レガシーシステムには即時に廃止できない重要な機能があり、新しいテクノロジーに移行してもレガシーシステムの一部の機能は維持したいと考えている

ITの発想転換「レガシーという概念」が存在しない世界へ

基幹システムは長い開発期間を経て稼働を開始しますが、そのITシステムが設計された当時と稼働開始した時点ではビジネス環境が大きく変化していることが多く、稼働と共にITシステムの陳腐化(レガシー化)が始まっています。Living Systemsはその名の通り「常に改善と進化を継続するシステム」であり、端的にいえば「レガシーという概念」が存在しない世界です。

そもそもITシステムがレガシー化する理由は、大規模なシステムリプレースを前提とする従来のシステム再構築の在り方に起因しています。計画は複数年にわたるため、リプレース中や稼働開始後に発生したマーケットの大きな変化への対応を組み込んだ構成とはなっておらず、経営の競争力が低下する「谷間の時期」がほぼ必ず発生します。一方、Living SystemsはマイクロサービスやAPIなどの新技術を組み合わせることにより、市場の変化に対応する継続的なリリースで「最適な状態」の維持が可能な仕組みを実現します。

Living Systems – デジタルビジネスを支える全社DX基盤 ITの発想転換。「レガシーという概念」が存在しない世界を実現します。

Living Systemsの構成要素

Living Systemsは、次の3つの構成要素によって成り立っています。

  1. ディカップリングアーキテクチャ
  2. AI経営ダッシュボード
  3. アジャイル実行体制

1 ディカップリングアーキテクチャ ―ニーズの二極化への対応

今日の業務は、計数処理など定形タスクの組み合わせによる「定常的オペレーション」と、市場ニーズの変化にアドホックに対応する「不定形ミッション」に二極化しています。両者は本質的に正反対の要件や特性を持っていることから、システムそのものを「区別」「分離(ディカップリング)」することは必然的な考え方です。

定常的オペレーションには伝統的な設計思想(安定性と信頼性を重視)を踏襲したITシステムを堅牢に構築し、不定形ミッションには即応力と柔軟性を優先するアジャイル開発の体制を採用します。

実態として、ITシステムの大部分は定常オペレーションを支える機能であり、大規模変更が発生することは稀です。よって機能群やデータ群は従来同様に堅牢性を担保して構築することが優先されます。並行して、瞬間的なビジネスニーズに対応する機能は別途切り出して「軽く作る」「完了後は簡単に廃棄できる」体制とし、モノ・ヒト・カネ(契約等を含む)が全体の足かせとならない設計を行います。

その際、ITインフラには伸縮可能なクラウド型サービスの活用が必須となるでしょう。

2 AI経営ダッシュボード ――データの高度活用を実現する「マネジメントコックピット」

現場で動作する様々なITシステム(末端のシステム)から基幹システムへ、膨大な業務データが投入されているにも関わらず、そのデータの大半は業務帳票や集計結果のアウトプットとして用いられるに過ぎません。

また、基幹システムを運用、アウトソーシングする過程で生成される様々なログデータも含め、集積されたデータを十分に活用できているとは言い難いのが現状です。これらのデータの潜在的価値を掘り起こし、「ITデータを起点として、トップライン成果に直結するKPIダッシュボードを整備すること」がLiving Systemsにおける第2の構成要素です。

CxOクラスの経営層は、多種多様なデータを用いて自社の事業環境を把握し、自社に最適な針路を導き出すことが重要です。このようなデータドリブン経営を支える「マネジメントコックピット」が必要だといえます。

Living Systemsにおけるデータ活用はKPIのためだけではなく、現場にアラートを発したり、経営者へ最適な戦略を提示したりといった、高度かつ多様なデータ分析を推奨しています。基幹系システムと連動することでシミュレーション結果をより磨き上げられるほか、経営者の意思決定をAIが支援することで、経営のさらなる高度化を実現します。

3 アジャイル実行体制 ――組織の壁を越えた高速PDCA

経営層が洗練されたデータドリブン経営を実践していても、その意思を現場へ浸透させることは容易ではありません。

しかし業務部門とIT部門が「ワンチーム」となって協働するなかでスプリントを回し、常に改善と進化を続ける仕組みを構築することで、経営および事業トップの意思を実行するビジネスアジャイルを体制化できます。Living Systemsでは、この「アジャイル実行体制」を第3の構成要素としています。

アジャイル実行体制の本質は、小規模なサービス途切れることなく作って速やかにリリースし続け、成果と問題点のフィードバックを得てチューニングを繰り返す点にあります。そのPDCAを高速に回していく過程でアジャイル実行体制の協働は深まり、「経営・業務・ITが一体となった取り組み体制」が確立されていきます。

アジャイル実行体制は、ビジネスサイドと開発チームの距離感を近づけ、互いのコミットメントを強化します。要求の変更やリリース順番の差し替えなどが行いやすくなることから、要件の継続的な取り込みや人材育成にも効果がある体制だといえるでしょう。

目指す姿――持続的な競争優位に資するITが目標です。

Living Systems実現に向けて「CIO/CDOが解くべき問い」と「5つの変革レバー」

では、ITの「発想の転換」を促し、Living Systemsを実現するために、CIO/CDOが解くべき問いは何でしょうか。それは「次の4項目をいかに実現するか」です。
  1. 1 DX投資予算枠の拡大・マネジメント
  2. 2 迅速な意思決定を支える仕組み
  3. 3 意思決定事項をスピーディに実行する仕組み
  4. 4 絶え間ない改善・進化のドライブ機関

これらの問いを解いてLiving Systemsを実現するための要素を整理すると、「戦略」「組織」「プラクティス」「アーキテクチャ」「人材」の5つが「変革のレバー」であるといえます。

これら5つの変革レバーに焦点を当てながら取り組みを進め、「ランザビジネスのコストの解放」と「テクノロジー支出から、新しい製品・サービスを生み出すためのイノベーション投資へのシフト」を実現することが喫緊のテーマなのです。

Living Systems -デジタルビジネスを支える全社DX基盤 - 「戦略」「組織」「プラクティス」「アーキテクチャ」「人材」の5つが変革レバーです。

DX時代の「価値創出」の6つのステップ

DX時代に経営トップがいかにして「価値」を創出するか。そのアプローチは、以下の6項目のステップ論へと整理できます。

これらのステップは、保守的で受け身のIT体制から、プロアクティブで行動的な構造改革を実現するIT体制への実行計画を伴っています。各フェーズで必要とされるアクションのプランニングから実行までを伴走するパートナーとして、アクセンチュアはお客様のDX実現をご支援していきます。

1 現代は、テクノロジーの活用がビジネスの成否を決める。ランザビジネス予算を削減して、ビジネスと整合したDX投資へと振り向ける

2 顧客ニーズとビジネス環境の変化は日々加速しており、経営トップの迅速な意思決定がビジネスの明暗を分ける。その際に武器となるのが、社内外の情報を一元的に把握し、シミュレートできる「経営ダッシュボード」。ダッシュボードは「精度」「深さ」「タイムリーさ」を経営トップへ提供する

3 意思決定した方向性を速やかに実行するために、「①足を引っ張るIT負債の返還計画(レガシーマイグレーション)」「②再度負債を作らないためのディカップリングアーキテクチャ」「③ビジネス伸縮を阻害しないクラウド移行」「④業務とITが協働したアジャイル実行体制・ルール」を仕組み化する

4 アジャイル実行してもカオス化を招かないデータアーキテクチャを準備する

5 あらゆるモノやサービスがオンライン化している現状に即したセキュリティ対策を実行する

6 テクノロジーを活用した絶え間ない改善・進化をドライブし、常に新しいDX活用の種を見つける。また、新しいDX技術の目利きをするDXファクトリーを準備する

上記6つの「ステップ」は1から6へと段階的に順次進行するものではなく、お客様の状況や向かうべき方向性に合わせて最適な組み合わせをご提案しています。たとえば、DXのための原資の確保から着手する場合にはステップ1として、各種のアウトソーシングやアクセンチュアが提唱する「ゼロベースド・スペンディング」(AIの活用など、新しい手法やツールの活用による最新のコスト削減手法)の実行をご支援します。6つのステップのうち、どのステップから手をつけるべきかはお客様によって異なるため、アクセンチュアではお客様のDX実現に必要な取り組みの見極めから成果の創出まで、全フェーズにわたって伴走いたします。

DXの基盤」となるLiving Systemsの実現

異業種企業の参入や業界の垣根を越えた協業、あるいは創造的破壊で躍進する新興企業との競争においては「継続的イノベーション」を生み出す力が求められます。顧客に価値を提供し続けるには、事業部門とIT部門がミッションを共有し、高度に連携するビジネスアジャイルで、商品・サービスを小さな単位で継続的にリリースしていくことが重要です。同時に経営層は、得られたフィードバックを基に改善・発展を繰り返す投資スタイルと企業カルチャーをいかに構築するかを問われています。

また、自社のDX成功に必要な人材を明確に定義し、その獲得と育成、知見の蓄積も必要ですし、その一方で、自社内に新規性の高いビジネスを阻害する社内風土がないかどうかを見直すことも欠かせません。

DX成功への道のりが壮大なジャーニーであることは間違いありません。アクセンチュアはDXを推進する経営層から現場層までを巻き込みつつ、プランニングから実行までをEnd to Endでご支援するパートナーとして、お客様のLiving Systems実現と「持続的成長の達成」に貢献してまいります。

アクセンチュアでは、無償のクイック診断サービスを行っており、約50項目の質問にお答えいただくことで、グローバル8,300社以上の様々な業界、業種の企業とのベンチマークならびに5つの変革レバー別の簡易診断結果(変革すべきポイント)をご提供しております。詳細はぜひ下記よりお問い合わせください。

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