(左)レッドハット株式会社 執行役員 ソリューション営業本部 本部長 會田 喜弘氏 (右)テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービスグループ共同日本統括 マネジング・ディレクター 山根 圭輔

現在も日本企業のITシステム環境に多くに残存しているメインフレーム、そしてオープン化はしたものの、それ自体がレガシー化してしまったオープンレガシーと呼ばれる一群のシステム。これらはその複雑性ゆえにモダナイゼーションが高難易度化してしまい、移行へのコストやリスクを跳ね上げる原因となっています。

企業がDXを目指す上では、レガシーモダナイゼーションからDXまでを"地続き"とする必要があります。アクセンチュアが提供するMod2DXは、まさに現行からDXまでを地続きにするソリューションであり、レッドハットのOpenShiftとミドルウェア群はコンテナ・オーケストレーションにおけるグローバルスタンダードのツールとして高い価値を提供しています。

アライアンスパートナーである2社はさらに、DX実現のために必要となる考え方も共通して持っています。レガシーシステムを建築物とするならばDX後のITシステムは絶えずディスラプトしながら全体を維持していく生命体のような存在です。そうした従来のITへの思い込みを打破する意識改革がDXへの第一歩。あるべき姿を実現するには、ステークホルダーがプロジェクト初期段階から集まり、ワンチームとなって取り組むことが重要です。さらには実際に稼働する小さいシステムを作り、それによって手触り感を得られることがモダナイゼーションのプロジェクト推進におけるドライバーとなります。

ソリューションの機能面のみならず、そうしたモダナイゼーションとDXについての考え方、ノウハウ、アプローチ方法などについてまで、レッドハット 執行役員 ソリューション営業本部 本部長の會田喜弘氏と、テクノロジー コンサルティング本部 インテリジェントソフトウェアエンジニアリングサービスグループ共同日本統括 マネジング・ディレクター 山根圭輔が深く語り合いました。

アクセンチュアとエンタープライズ・オープンソース・ソリューションの企業であるレッドハットは、グローバル規模の協業を過去10年以上にわたって継続してきました。両者の関係性は2020年にさらなる発展を見せ、エコシステムを形成するアライアンスパートナーとして、お客様企業のモダナイゼーションと、デジタルトランスフォーメーション(以下DX)の実現をより効果的にご支援するシナジーを創出する時代に入っています。

(文中敬称略)

モダナイゼーションとDXの第一歩は意識改革

――日本企業がDXを見据えたレガシーモダナイゼーションを推進する上での課題は何でしょうか。

山根 レガシーシステムと一口に言っても、規模や環境、処理している業務内容、使われている言語は多種多様です。レガシーであっても、単純な構造・仕様のシステムは大抵すでにモダナイゼーションを完了させています。では今なお残っているレガシーシステムとは何か。それは、複雑すぎて今日までモダナイズできずにきたものばかりです。レガシーを抱える企業にとって、最終にして最強、最大の存在が本丸に居座っている状態なのです。

會田 私たちレッドハットも、まったく同じ印象を持っています。DX自体は必須で、モダナイゼーションも進めなければならない。お客様企業が躊躇しているのは、あまりにもリスクやコストが高い点に尽きます。ある金融機関の事例でも、CIOは内製化の実現へ向けた号令をかけていますが、コストが掛かり過ぎる上、社内に人材がいないといった課題に直面されてご苦労なさっています。

山根 ミッションクリティカル(業務遂行に必要不可欠)なシステムであるにも関わらず、社内の人材が誰一人としてシステムの全容を把握できておらず、外部ベンダー側も責任を持って取り組むには何重もの保険的な対策が必要だからですね。それらがコストに跳ね返ってきてしまうのは、構造的な問題だといえます。業務に関わるシステムが、基幹系と密結合しているケースも多々あるので「このシステムは利用停止します」とは、おいそれというわけにいきません。だからこそアクセンチュアでは、レガシーのモダナイゼーションにおいて"地続きのDX"を提唱しています。

會田 アクセンチュアの意見に私たちも賛成です。現状を打破するには知見と経験、実績を持つプロフェッショナルチームの力を借りるしかないのが実情だと思います。

山根 はい、複数の専門企業と共に、文字通り"タッグを組む"必要があります。その際にも、リスクテイクはどこまで可能か、既存の業務やプロセスをどこまで割り切るか、品質を含めて譲れない一線はどこか。撤退戦ですからそれらを決めながら慎重に、しかし大胆に前進しなければなりません。

會田 レッドハットの海外メンバーと共にDXプロジェクトの最新動向をお客様へ説明する場合でも、海外メンバーは必ずこう言います。「ビジネス部門の介在が不可欠です。IT部門とビジネス部門が相互に信頼し、協調してプロジェクトに取り組むことがDXやモダナイズにおける唯一の成功パターンです」。つまり、日本企業におけるモダナイゼーションとDXの第一歩は、意識改革なのです。

レガシーモダナイゼーションの決定版ソリューション

――モダナイゼーションとDXにおける、具体的なソリューションはどのようなものでしょうか。

山根 アクセンチュアでは「モダナイゼーション2DX(Mod2DX)」として、モダナイゼーションに関する実績を持つ複数ソリューションを組み合わせてご提供しています。これは、先ほどご説明した地続きの変革を実現する包括的なソリューションです。

Mod2DXは、「MAJALIS(マジャリス)」「AIM(エイム)」「ACTS(アクツ)」の3つのソリューションを主要な構成要素としています。

「2025年の崖」を乗り越えるためにモダナイゼーションとDXを同時に解決するアクセンチュアのソリューションを紹介するアニメーション動画です。

トランスクリプトを読む
  • MAJALIS

COBOLからJavaへのリライトツールですが、データベースのオープン系への変換も可能です。アセンブラや特殊なコードが含まれている場合でも、お客様固有の事情・環境に合わせたセミオーダー的なカスタマイズを提供します。MAJALISは、アジャイルでの推進を特徴としており、データ分析ではAIを活用、スプリントを回しながら現新比較をできるなど、効率性の高さが強みです。

MAJALIS
  • AIM(Api conversion and integration Mediator)

変換後のデータはマイクロサービスに乗せます。AIMはマイクロサービス・オーケストレーション基盤であり、既存の画面やロジックをインターフェースとしつつ、API接続への移行を可能にします。

新しいデジタルサービスの構築や外部APIとの連携で力を発揮するプラットフォームがACTSです。クラウド上で提供されるためスケーラブルであり、すでにマイグレーション済みの既存システムも取り込めるなど、DXを力強く支援します。

Mod2DXでは、DevOpsで一元的に開発、テスト、運用をシームレスに行います。これがどれほどプロジェクトの生産性と品質向上に貢献するかは、エンジニアの方々にはきっとお分かりいただけると思います。

AIM, ACTS

會田 レッドハットとしては、基盤となるRed Hat OpenShiftをこの文脈でご紹介するのがベストだと思います。OpenShiftは一言でいえばKubernetesコンテナ・プラットフォームですが、2つの重要な役割を果たせる強みを持っています。

コンテナ・オーケストレーターとしての役割がその1つ目ですが、エンタープライズ企業がアプリケーションを動かす上では、モダンアプリケーションに最適かつ、より高度なプラットフォームを選択する必要があります。CI/CD(継続的インティグレーション/継続的デリバリ:ビルド、テスト、リリース、デプロイなどを自動化し、開発の効率化や省力化、本番環境への迅速な反映を図る手法)のサイクルを回し続けることやアプリケーションの運用管理、デプロイメント、セキュリティ、それらの包括的な提供がOpenShiftの第2の役割です。

しかし、単に機能が優れているだけが特徴なのではありません。Red Hat Enterprise Linux(RHEL)や運用を支えるミドルウェア群(共通のサービスと機能をアプリケーションに提供するソフトウェア)、その上のアプリケーションまでを一気通貫で持ち、エンタープライズレベルのサポートを提供できるのがレッドハットの最大の強みです。また、それらをどのようにビジネス価値に利用できるかのノウハウを支援できる体制があるのもレッドハットがお客様から選ばれているポイントだと思います。

Red Hat OpenShift

稼働可能な小さいプロダクトを最初に作る

――レガシーモダナイゼーションの実行における要諦は何でしょうか。

山根 紙資料やプレゼンでの説明、事例紹介を重ねても実感が湧きにくいものです。だからこそ私たちはMinimum Viable Product(MVP、実用最小限の製品)をプロジェクトのなるべく早い段階で形にすることを提唱しています。小さくても、実際に稼働するシステムが具現化されていれば、お客様側の担当者も手触り感を得られます。

會田 レッドハットでもリスクを低減し、プロジェクト遂行をより確かなものにするアプローチとして段階的な移行(ストラングラーパターン)を推奨しています。特定業務にフォーカスして小さな成功をまずは作る、という考え方です。

その特定業務をどのように選び、定義するのか。そこにレッドハットのコンサルティングサービスの価値があります。ドメイン駆動型アーキテクチャと呼んでいる、レッドハットが持つ知見やフレームワーク、ノウハウをベースとする手法によってお客様と共にドメイン(業務単位)を見極め、切り出して定義した上で、モダナイゼーションを進めています。

IDCがワールドワイドで実施した調査によると、OpenShiftのROIは5年で636%、投資回収期間は10カ月、アプリケーション開発サイクルは29%早く実装可能と報告されています*。

* 出所:The Business Value of Red Hat OpenShift

山根 モダナイズはマイグレーション完了がスタート地点ですから、新しいものを素早く作ることが重要という点で、レッドハットのソリューションは力強いと感じます。

建築物から生命体へ――ITシステムを捉え直す

――ソリューションの効果的な導入のために、ユーザー企業にはどのようなマインドが必要なのでしょうか。

山根 経営者はITシステムに対する考え方を変える必要があります。これからのITシステムに重要なのは、新陳代謝を繰り返すことです。生物の世界では「動的平衡」と表現されますが、ITシステムも同じです。バージョンアップや更新をし続ける必要があります。とはいえ手作業では追いつきません。だからオートメーションが不可欠です。

(※動的平衡(Dynamic equilibrium):生命体を機械とは異なる動的な仕組みとして統合的に捉える考え方。生物学者の福岡伸一氏が提唱。合成と分解を絶え間なく繰り返し、古いものを壊して新しいものへ置き換え続けることで平衡状態を保つ)

會田 システムに対する考え方が従来とはまったく異なる、新しい世界観ですね。日本企業からは「変えたくない、変えられない」というお声が多く聞かれますが、外的要因はどんどん変化してしまいます。ビジネス環境が変わり続けるのに、ITシステムだけ変わらなくて良いということにはなりません。レッドハットは、カルチャーチェンジやプロセスチェンジを起こす企業でもあります。東京海上日動様のシステム子会社の事例では、アジャイル開発の方法論の実践や意識改革もご支援しました。

山根 同感です。DX後のITシステムは、変化に順応できる柔軟性を持ち、自らを常に変化させながら全体を維持するものです。まずはこの考え方の違いを受け入れていただくことが必須です。

會田 テクノロジーの側も進歩していて、そうした柔軟性を支えています。コンテナ技術によって、ライトウエイトな形でアプリケーションを保存できる時代です。OpenShiftは実績も豊富で、すでに全世界では3800社にご採用いただいているほか、国内事例も続々と登場しています(事例はこちらで検索できます)。

  • 三越伊勢丹様:同社の業務のコアである接客のデジタル化に向けて、基盤としてレッドハットミドルウェア​を採用。顧客体験のさらなる高品質化や、デジタルによる新しい体験の創造をご支援しています。
  • 三菱UFJ銀行様:お金の自動管理アプリ「Mable(メイブル)」の開発基盤としてレッドハットのソリューションをご採用いただいています。
  • NTT東日本様:リテール企業向けの映像・画像認識のAI解析サービス(SaaS)の基盤として、OpenShiftでコンテナのオーケストレーションを実装しています。
  • 松井証券様:スピードと高い信頼性が求められるオンライントレーディングシステムの基盤をOpenShiftで構築しています。

現代の難問へ挑むには、協業とコラボが成功の鍵

――レッドハットとアクセンチュアのパートナーシップは、これからどのようなシナジーを生み出していくのでしょうか。ユーザー企業のメリットを教えてください。

山根 Mod2DXはアプリケーションより上のレイヤーにフォーカスしています。下のレイヤーをOpenShiftAnsibleにお任せすることで、私たちはアプリケーションやデータに集中できます。補完しあう協業体制こそが、レガシーのモダナイゼーションとDXの実現には不可欠だと私も思います。

會田 レッドハットの考えも同じです。アクセンチュアがお客様企業のモダナイゼーションとDXを先導しつつ、私たちがソフトウェアで取り組みをバックアップします。両者がタッグを組んでいることで、お客様を"面でサポート"できます。特にお伝えしたいのが、プロジェクトの初期段階からご一緒したいという点です。製品の特徴にフィットするアーキテクチャをご提案できますし、トラブルの未然防止が可能となります。

恒例のイベント、レッドハットサミットも今年(2022年)は5月10日〜11日の2日間にわたって開催します。新製品やアップデート発表を多数予定していますので、ご期待ください。物理会場はボストンですので、日本からはオンライン参加がおすすめです。(Red Hat Summit 2022の詳細はこちら)

山根 私も過去のイベントに参加したことがありました。今年も楽しみです。レッドハットのプロフェッショナルな皆さまと、プロジェクトの現場でぜひコラボレーションしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

新型コロナウイルスの感染予防のため、座談会はマスク着用およびソーシャルディスタンスを確保して安全に行いました。マスクの取り外しは一時的なものであり、飛沫等に配慮して撮影しております。

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