オンライン化へのシフトにより、ゲーム業界はすべてのプレーヤーに素晴らしい体験を提供することが必要

パンデミックの間もその前からも、ゲーム業界は急速に成長 しています。2020年には、20%の成長を遂げ、ゲーム業界の直接・間接収益は3000億ドルに達しました。この成長の一因は、何百万人もの新規プレイヤーがコミュニティの一員となったことにあります。急速な拡大が進むこのコミュニティでは、オンラインでの交流が増え、ゲームを最大かつ最速で成長するソーシャルネットワークのひとつにしています。そして、ゲーム業界は、ゲームの販売だけでなく、プレイヤーを楽しませ、何度も繰り返したくなる継続的な体験を提供する場への急速な進化が求められています。

67%

ゲームプレイヤーは、プレイ時間の3分の2を他のゲームプレイヤーとのオンラインプレイに費やしています。

73%

4人の内3人近くが、将来的にはオンラインゲームがゲーム体験の大部分を占めるようになると予想しています。

進化するゲームの世界

オンライン化は、ゲームのあり方を変えつつあり、これまで長くゲームをしてきたプレイヤーが求めるものとは異なる体験やソーシャルインタラクションに対する新たな期待が寄せられています。このことが、摩擦が生じさせる可能性もあり、ゲームプラットフォームやコンテンツエコシステムにとっては、エンドツーエンドの体験で差別化を図る好機にもなります。

ゲーム業界がその可能性を最大限に発揮し、長期的に課金するプレイヤーを増やしていくためには、最新のプレイヤーのニーズと、最も収益性の高い、ロイヤリティのあるプレイヤーの期待とのバランスをとる必要があります。

今回の論考は、ゲームの爆発的な成長を探る3回シリーズの第2回目です。今回は、急成長とオンライン化が生み出すいくつかの課題についてご紹介します。

こうした課題の把握はなぜ重要なのでしょうか?それは、他のソーシャルプラットフォームでも指摘されているように、少数の人の行動により多くの人に不平等な影響を与える可能性があるからです。また、オンラインゲームのコミュニティが大きくなればなるほど、ネガティブな体験が増幅される可能性も高くなります。他のオンラインサービスと同様に、ゲーム会社は、提供する顧客体験の質によって差別化を図る必要があります。ネガティブな体験は、ゲームプロバイダーに深刻な経済的影響を与える可能性があります。

「トラッシュトーク」が不適切な行動になるとき

ゲームが多くの人を魅了する理由の一つは、対戦型のゲームです。人気のあるマルチプレーヤーゲームの多くが対戦型であることを考えれば、多くの人が対戦型のゲームを体験しているのは当然のことだと考えられます。

オンライン対戦型ゲームの世界は、長い間、表現の制限がほとんどありませんでした。そのため、多くのプレイヤー(44%)は、ゲームが、周りに誰がいようと自分の好きなことを言える安全な場であると考えています。しかし、次に示されるように、すべての人がそうであるとは限りません。

29%

脅迫を受けたことがあると答えた人の割合(攻撃的、有害なボイスチャットやテキストチャットなど)

25%

ジェンダー差別を経験したことがあると答えた人の割合(性差別的な発言など)

23%

ヘイトスピーチを経験したことがあると答えた人の割合(人種差別、ホモフォビア、トランスフォビアなど)

アクセンチュアの調査では、プレイヤーの4人に1人が有害行為やいじめの存在を認めていますが、特定のゲームジャンルにおいては、それよりもはるかに多いと思われます。このような行為を認める人のうち、半数近くは、それがゲームの標準的な要素と考えています。ゲーム会社にとって、これは非常に複雑な問題でしょう。

ゲームプレー中に有害行為やいじめにあったことがある人は24%、ない人は76%

ゲーム会社にとっての課題の一つは、ネガティブな行動を認めるプレイヤーが、多くの場合、最大の消費者でもあるということです。高額消費者(ゲーム、ゲーム内課金、サブスクリプションに毎月200ドル以上費やす人々)のうち、37%がこのネガティブな行動を認めているのに対し、低額消費者(毎月25ドル未満の人)では19%にとどまっています。

では、受ける側の人々はどうでしょうか。ゲームプレイヤーの40%近くが、ゲーム内のいじめを、毎日、毎週、または毎月経験していると答えています。また、80%の人が、いじめや有害行為のないゲームをプレイしたいと答えています。これは大きなギャップであり、すべてのプレイヤーにポジティブなゲーム環境を提供するという重要な課題をゲーム業界に提起しています。

39%

毎日、毎週、または毎月のようにいじめを経験しているゲームプレイヤーの割合

仮想世界と現実の結果

こうした問題に対するゲームプレイヤーの認識は様々であり、時には極端に異なることもあります。しかし、多くの人が現状のプレイ状況に満足していないことは明らかであり、見過ごせない問題となっています。

レスター在住 22歳 女性

「私が女性であることを理由に、チームの戦力にならないと言われました。」

ロンドン在住 27歳 男性

「私は個人的に被害を受けています。チームプレイをしていると、他のメンバーがイライラして、私の名前や人種ついて差別的なことを言い始めます。」

ニューヨーク在住 20歳 女性

「ゲームをする女性は、オンラインで暴言を吐かれるなどモラルハラスメントを受けることが多いです。」

カーディフ在住 20歳 男性

「私は普段から自分の話し方でいじめられています。主に男性が、私の声が女性的であるとからかいます。」

全て見る

アクセンチュアの調査によると、ゲームプレイヤーからの企業に対策を求める声は高まっており、約70%のプレイヤーが企業に対し、許容できない行動を防ぐために、現在よりも対策を強化することを望んでいます。

69%

のゲームプレイヤーは、企業が有害な行動やいじめを防ぐための取り組みを行ってほしいと考えている。

29%

のゲームプレイヤーは、企業が有害な行動やいじめを防ぐために適切な取り組みを行っていると考えている。

対策の強化について、企業にはゲームプレイヤーから様々な意見が寄せられています。70%のプレイヤーが、モデレートされたゲームをプレイする可能性が高いと答えており、積極的なモデレーションが多くの人に歓迎されることを示しています。

その他、不適切な行為を行ったプレイヤーに対するアカウントの一時停止(極端な場合はアカウントの強制削除)や、ゲーム内チャットでの露骨な表現の検閲、ゲーム内ボイスチャットの記録や分析などが提案されています。ゲームプレイヤーの半数以上(54%)が、ゲーム会社はいじめ防止を積極的に推進すべきであると考えています。

これが業界の向かう方向なのです。たとえば、若者を中心に作られたゲームプラットフォームRobloxは、優しさや共感、チームワークといったスキルをコミュニティに啓発することを優先しています。このプラットフォームでは、AI、機械学習、チャットフィルタリングによって強化されたモデレーターが、ユーザーに安全な体験を提供しています。

Roblox社のコミュニティセーフティおよびデジタルシビリティ担当ディレクター、Laura Higgins氏は次のように述べています。「安全性は常に当社の最優先事項です。私たちの役割は、健全なコミュニティを作り、ポジティブな体験を提供し、コミュニティを啓発することで、オンラインのどこに行っても善良な振舞いができるようにすることです。」

さらに一般的には、業界が一丸となって、デジタルシビリティを促進するためのベストプラクティスやツールを共有するようになってきています。Fair Play Allianceの共同設立者であるKimberly Voll博士は、次のように述べています。「なぜこのような行動が起こるのかという根本的な原因に目を向けると、摩擦や期待の不一致によるものである可能性が挙げられます。ゲーム開発者としては、ゲームが間違った方向に進んでしまったりフラストレーションが溜まって人々がお互いに攻撃を始めたりする前に、最初からそのような問題が発生する可能性を減らすことに投資することができます。」

また、テクノロジーを駆使した新しいアプローチが次々と打ち出されています。最近は、ワシントン大学のグローバル・イノベーション・チェンジ(GIX)というアイディアがあります。GIXのチームが開発した「Temper」は、ハードウェア、ソフトウェア、クラウドを利用したデバイスで、ゲームプレイヤーに有害となる可能性がある行動を通知し、その行動が繰り返された場合にはゲームを中断させることができます。

このようなアプローチへの投資はよいことだと思われます。ゲームプレイヤーは、企業の積極的な取り組みを評価し、多くのゲームに参加し、プレイしてくれるでしょう。

70%

のゲームプレイヤーは、有害性やいじめを排除するようゲームがモデレートされていれば、プレイする可能性が高いと考えています。

68%

のゲームプレイヤーは、ゲームに有害な行為やいじめを報告する簡単な方法が用意されていれば、プレイする可能性が高いと考えています。

ソーシャルメディアプラットフォームで見られるように、悪質な行為を野放しにしておくと、プラットフォームに影響が及ぶ可能性があります。それは、業界外からの監視の目が厳しくなるという形で現れるかもしれません。あるいは、プレイヤーが見切りをつけ、ゲームにかけるお金を他のエンターテインメントに振り向けてしまうかもしれません。

このような懸念が解消されないまま、ネガティブな体験が続けば、人々のゲームに対する熱意は失われるでしょう。そして、その結果、人々は行動を起こすことになります。いじめが原因でゲームを辞めたことがある人は、女性で37%、男性で32%にのぼります。また、半数以上の人がゲームを辞めた人を知っています。

噂も広まるでしょう。ゲームプレイヤーの10人に4人が、いじめ問題への対応を理由にゲーム会社に対して否定的な発言をしたことがあると答えています。

エクスペリエンスの必須条件

ゲーム体験は、ユーザーを呼び込み、維持することが成功の鍵となるソーシャルメディアのプラットフォームとますます似てきています。より健全で包括的なゲームプラットフォームを醸成することは、正しいことであるだけでなく、明確な差別化要因にもなります。

ゲーム業界は、より良い体験を提供するためにこの重要な課題に積極的に取り組んでいます。もちろん、これは簡単に解消できるものでもありません。なぜならば、この市場は非常にダイナミックで、プレイヤーは様々なプラットフォームで、同時にプレイしているケースが多いからです。また、ソーシャルプラットフォームとは異なり、多くのプレイヤーはお金を支払っているという事情があります。

ソーシャルメディアプラットフォームの経験から学ぶことは有効でしょう。AI、モデレーション、透明性の向上、業界間のコラボレーション強化など、さまざまなソリューションやアプローチが利用できます。

一部の大手ゲーム会社は素晴らしい例を示しています。たとえば、RIOTは業界内の他の多くの組織と連携し、世界中のプレイヤーにより包括的な体験を提供することを狙いとするグローバル連合であるFair Play Allianceに参加しています。

関連情報: Watch the replay of Accenture’s panel discussion during GamesBeat Summit on “The gaming industry’s ‘duty of care’ in keeping players safe.”

次回の論考は

次回は、急速に変化する市場において、ゲーム会社がゲームプレイヤーの懸念解消に役立つと思われる革新的なソリューションやアプローチについてご紹介します。誰もがプレイできる場を提供する、より大きな、そしてより包括的な業界を築くヒントとなるでしょう。

著者について

古嶋 雅史

通信・メディア・ハイテク本部
メディアエンターテイメント統括
兼 デジタルビジネス統括
マネジング・ディレクター


平山 勝裕

ビジネス コンサルティング本部 コンサルティンググループ シニア・プリンシパル


Seth Schuler

Managing Director – Software & Platforms Strategy


Paul Johnson

Senior Principal – Accenture Research


Christian Kelly

Managing Director – Accenture Strategy, Software & Platforms


Katharina Schmidt

Consultant – Software & Platforms, Gaming Specialist, Nordic

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