調査レポート

概略

概略

  • サステナブル(持続可能)な製品こそが「ニューノーマル」であり、リテール業界内ではすでに変革に向けた具体的な準備が進められています。
  • アパレル業界のサプライチェーンに適した変革のアプローチを明らかにすべく、アクセンチュアはグローバルでの合計収益が1,400億米ドル以上の企業を対象に調査を行いました。
  • 調査の結果、トレーサビリティと透明性に優れたバリューチェーンを構築するための6つの重要領域と、各領域でのテクノロジー活用がもたらす機会が明らかになりました。


世界中で年間1,500億着以上が生産されるアパレル製品の多くは、生産地から遠く離れた場所で消費されています。

それらのアパレル製品は消費者の元に届くまでの間、生産者から加工業者、原材料工場、完成品工場、流通業者、倉庫業者、小売店など、数えきれないほど多くの手から手へと渡っていきます。そして、その後も消費者への販売、使用、洗濯、修繕、また不用品となってからは寄付されたりもしますが、最終的には大部分がゴミになります。世界のアパレル関連の年間総支出が世界最貧国126カ国のGDPをすべて足した額とほぼ同じであるという事実を見れば、これがいかに大きな問題であるかがわかります。

アパレル製品のライフサイクル全体のカーボンフットプリント(CF)、およびその製造工程が環境に及ぼす影響、そして製造工場の賃金と環境は「非持続可能性」の象徴と言えるものであり、アパレル業界の消費エネルギー量は航空業界と輸送業界の合計消費エネルギー量をも上回っています。

そこで私たちは、持続可能なアパレル業界への変革を支援すべく調査を実施。テクノロジーを活用して業界のバリューチェーンの透明性とトレーサビリティを確立するための方法を明らかにしました。

調査概要:

337

対面インタビューの合計時間

5

グローバルワークショップの実施回数

15

1対1セッションの実施回数

調査に参加した21社の内訳は、ブランド、リテール企業、メーカー、サプライヤー、保険会社、諮問機関、標準化機関となっており、これら21社のグローバルでの合計収益は1,400億米ドル以上に上ります。

調査の結果、いくつかの領域で前向きな変化が確認されました。たとえば、消費者の認知度とコミュニケーションが改善していること、標準化機関が透明性の改善と指針の策定を進めていること、ブランドが新素材の使用実験に取り組み始めていること、サプライヤーが製造工程の改善を推進していることなどです。ただし、製造工程についてはその複雑性や規模を背景に、段階的な取り組みが十分に進んでいないのが実情です。

業界の現実について、抜本的な見直しが必要

アパレル業界をより良い方向に変革させるには、透明性とトレーサビリティを改善して製造分野のサステナビリティとエシカルビジネスを推進するとともに、戦略的な思考や可視性、信頼性、指針、および明快なコミュニケーションを体系的に構築する必要があります。

「レスポンシブル・リテール」が叫ばれる現代において、サステナビリティはCEOが達成すべき最重要課題の1つとなっています。実際、CEOの48%は2019年の経営努力の一環として、サステナビリティの確立を掲げています。企業が成功を収めるためには、トップダウンの包括的なアプローチを通じて戦略とデザイン、および実践を統合的に推し進め、サプライチェーン全体のパートナー企業との協働体制を強化する必要があります。また、市場での競争力維持するための条件としても、まずはサステナビリティを確立しなければならないという認識を持つことも重要です。

変革の推進力としてのテクノロジー

テクノロジーを業界のあらゆる課題の特効薬と考える人は少なくありません。実際、テクノロジーは課題の解決をサポートするものですが、調査ではサプライヤー、メーカー、ブランドのいずれもが、テクノロジーをだけでサステナビリティや透明性に関するすべての課題を解決できるわけではないという認識を持っていることが明らかになりました。

確かにテクノロジーは、アパレル製品のライフサイクルにおけるさまざまな欠点を是正する上で一定の貢献を果たすはずです。しかし、信頼性や業界内の協働体制、またサステナビリティや透明性の確立を目指すモチベーションといった課題は、テクノロジーだけで解決できるものではありません。真に体系的な変革を目指すのであれば、競争力強化を図る前に協働に向けた包括的なプログラムを策定し、プログラムの下でバリューチェーンのさまざまなステークホルダーが共に変革を目指すことが不可欠です。テクノロジーは、あくまでもそうしたプログラムの推進力の1つに過ぎません。

「今や持続可能な製品はニューノーマルである。あらゆる製品がサステナビリティを追求したものでなければならない」

――リテール企業

バリューチェーンの改善を通じて責任ある成長を実現する

業界全体で責任ある成長を促すためには、バリューチェーン全体にわたって100%のトレーサビリティと透明性の確立を目指す必要があります。私たちが行った調査からは相互にリンクした6つの重要領域が明らかになっており、これらの領域にフォーカスすることで、アパレル業界は業界特有の複雑に絡み合った相互依存性の高いエコシステムネットワークとバリューチェーンを改善できるはずです。

「ブロックチェーンをはじめとするテクノロジーは、推進力の1つに過ぎない。私たちが直面するさまざまな課題をテクノロジーだけで解決できるわけではない」

――リテール企業

業界内で加速する変革

トレーサビリティと透明性を確保したバリューチェーンの構築はどのアパレルメーカーにとっても重要な難題となっており、サステナビリティを追求するイニシアチブも世界中で勢いを増しています。また、サステナビリティの確立が経済的価値をもたらすという認識も広く浸透しつつあります。

今回の私たちの調査では、テクノロジーの活用がさまざまな機会をもたらし得ること、業界内では変革に向けた準備が着々と進められていることが明らかになりました。アパレル企業には今、新しいファッションを生み出す大きな機会がもたらされています。

Tom White

Managing Director – Accenture Strategy, Retail


Jason Barrington-Hines

Manager – Supply Chain


Harshit Nigam

Senior Manager – Supply Chain & Operations


Colleen Connolly

Senior Innovation Lead – Accenture The Dock

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