レスポンシブル・リテール――優れた企業に求められる社会的責任
2020/01/01
2020/01/01
リテール企業は過去10年以上にわたって、大規模な変革によってもたらされた困難の時代をくぐり抜けてきました。オムニチャネルをはじめ、パーソナライゼーション、ソーシャルメディアへの対応は、今や当たり前の日常業務となっています。では、リテール業界にとっての最大の変化を挙げるとすれば、一体何でしょう?それはしっかりとした目的を見据えた上での事業運営が求められるようになったことです。つまり、リテール企業とはそもそも何なのか、何のために存在しているのか、消費者の暮らしをいかにしてサポートできるのかを考え、それを事業運営に反映していくことが何よりも重要になりました。
とはいえ、ただ何らかの目的を持つだけでは不十分です。責任をもってその目的の達成を目指す必要があります。
アクセンチュアの調査では、企業としての社会的責任を確実に果たしているブランドは、消費者からの信頼を勝ち取れることはもちろんのこと、営業利益や営業収益、株主利益といった側面でもライバルを凌駕していることが明らかになっています。
今後、リテール企業が優位性や差別化、事業の成長といったゴールを達成していくためには、真の意味で価値ある製品・サービスの提供を目指す「レスポンシブル・リテール」の実践が求められます。
それを実現するには全社的な取り組みが不可欠であり、リテール企業は消費者をはじめ、従業員、パートナー企業、投資家、そして私たちの地球を含むすべてのステークホルダーへの社会的責任を果たさなければなりません。
現代の消費者の62%は、自らの価値観に照らして製品・サービスを購入しています。
顧客についてリテール企業はどの程度理解できているでしょう?顧客が本当に求めていることを知り、製品・サービスのレリバンスを必要に応じて高める方法について、企業は十分に理解できているでしょうか?
消費者に対する理解のギャップはまさに紙一重であり、実際、多くの消費者がブランドに十分に理解されていないと感じています。ブランドが消費者を分かっているようなフリをすれば、たちまち信頼を失うことになるでしょう。
では、リテール企業が優先すべき課題はどこにあるのでしょうか?それは消費者への理解を深め、彼らの懸念や価値観、嗜好を的確に把握することです。透明性を確保しながら長期にわたって持続可能な信頼関係を構築するとともに、データを駆使して消費者と人間味のある関係を、無理やりではなく創意工夫をもとに築き上げることが大切です。
リテール企業は従業員の可能性を引き出し、エンパワーメントとモチベーションを喚起しながら、日々の業務に彼らが最大限の力を発揮できるようにしなければなりません。そうすることで、企業は消費者に最適な体験を提供できるようになります。そのためには何が必要でしょうか?
そこではまず、「人材を第一に」考えるという社会的責任を果たすことが重要です。リテール企業はテクノロジーを活用し、従業員がより大きな目的を達成できるよう支援する必要があります。また、テクノロジーを導入して従業員の成長を促し、平等かつインクルーシブな組織文化の醸成を図らなければなりません。
レスポンシブル・リテールとは、社会的責任に基づくイニシアチブを踏まえて事業のさまざまな側面を設計することです。
リテール企業が消費者と従業員のニーズに応えながら収益性を確保するためには、全社レベルの大規模な変革をスピーディに推し進めていかなければなりません。ここで重要な役割を担うことになるのが、パートナー企業の存在です。
リテール企業はパートナーシップを有効活用することで、新たな機会を獲得することができます。ただし、ベンダーとサプライヤーの関係を消費者が詳しく知ることができる現代の市場では、パートナーシップがリスクとなる場合もあります。
だからこそ、リテール企業は価値観を共有するパートナー企業のすべてと、目的も共有しなければならないのです。
消費者と従業員は、環境への配慮とコンシューマリズムをかつてないほど重視するようになっています。
つまり、リテール企業が消費者と従業員への社会的責任を果たすためには、地球環境に対する責任も果たさなければなりません。単に環境配慮の意識を持つだけではなく、実際にそれを実践する必要があります。地球の資源には限りがあり、バリューチェーン全体でのサステナビリティ(持続可能性)を踏まえた上で、ビジネスの継続性を考えなければならないのです。