体験の再創造


保険体験の再創造


保険業界における
顧客体験の再創造 
顧客との関係が希薄になる中、保険業界は顧客に対する提供価値を根本的に再創造する必要があります。
数百年前に初めてリスクプールが形成されて以来、保険の基本的な基盤は大きく変わっていません。しかし、数々の新しい力が、多くの顧客の中にある従来の保険商品の妥当性に疑問を投げかけています。

IoT(Internet of Things)技術の普及、リスクに対する考え方の成熟、顧客の期待の高まりなどにより、従来のルールを根本的に見直す変革の機運が高まっています。

今こそ、業界全体で一丸となり、製品、サービス、体験を一から変革する時です。

保険業界が成功するためには、未来を見極め、変革し続け、新たな顧客のニーズに応えるためにその役割を見直すことが必要です。私たちは、保険会社が自社の提供価値、ビジネスモデル、顧客体験を見直すために必要な6つの重要分野を特定しました。
他の業界における顧客体験の再創造についての提言

1. 信頼性と妥当性への挑戦


補償のための保険料から、総合的な保護、リスクの軽減、復旧まで、保険業界は顧客のニーズの変化に合わせて進化し続けています。信頼できるアドバイザーを求める顧客は、顧客の総合的なニーズへの対応が遅れている保険会社に対して不安を抱いています。顧客の進化するニーズに合わせて保険商品を刷新できている保険会社は、長期的な成功を収めることができるでしょう。

2. 保険業界の再創造:信頼の領域


従来の業界の境界線は曖昧になってきています。保険会社が顧客リスクの管理と軽減の最前線に立つためには、人の人生を断片的な出来事として考えるのではなく、むしろ、顧客の物理的、感情的、経済的なウェルビーイングに関わるものとして、リスクを総合的に考えるべきです。これを私たちは「信頼の領域」と呼んでいます。

3. 信頼の再構築とその先へ


信頼の構築は、保険会社が提供価値の拡大を検討することから始まります。これは、単に損害を軽減して回復させるだけではなく、損害を未然に防ぎ、適切な行動をとった顧客に報いるものでなければなりません。これらすべてを総合的に検討し、パーソナライズされたサービスを提供しなければなりません。

4. 新たな成長戦略により創造的破壊の先を行く


新たな顧客をターゲットに、提供サービスを見直し拡大することで、顧客とより深い信頼関係を築く機会が生まれます。これにより、保険会社は新たな収益源を持つ新しい経済モデルを手に入れることができます。サブスクリプションベースの収入、顧問料、パートナーシップ料、データの収益化などにより、保険会社は従来の保険料収入や投資収入を超えたビジネス成長を実現できます。

5. 将来のリスクを共同で管理する



保険会社の役割は変化し、従来とは異なる考え方、発言、行動が求められるようになります。適切に変化できれば、顧客とのエンゲージメントを高め、信頼されるアドバイザーになる機会を得ることができます。保険会社は顧客と共にリスクを管理し、継続的なサポートを提供しなければなりません。

6. 未来に即した保険会社になるために


保険会社は、自信を持ってあらゆる変化を受け入れ対応するために、適切な考え方、ツール、資産、リソースを組織に具備する必要があります。その道のりは直線的なものでも連続的なものでもなく、反復的に繰り返しながら構築していくものです。外部の専門家と連携し、戦略的ビジョンの策定から実行までを共同で行うことで、保険会社は迅速に自社のサービス改革を実現できます。
顧客は保険会社に何を期待しているのでしょうか?今こそ、保険会社は顧客との信頼構築に取り組み、顧客へ提供する体験を再創造する必要があります。

なぜ断絶が見え始めたのか

歴史的に見ても、保険業界は非常にレジリエンス(回復力)を備えた業界です。他の産業が勃興したり衰退したりする中においても、保険業界が提供する価値は、顧客との関係性を維持してきました。

しかし、保険業界はレジリエンスがある一方で、近年は相対的に停滞しているのも事実です。グローバルでみた業界全体の成長率は横ばいです。収益性は高くなく、コスト・パフォーマンスは他の業界と比較して悪化傾向にあります。いま私たちは、保険業界に危機が迫っているということを目の当たりにしています。

顧客との関係を維持するためには、今後数年間で保険のあり方を変革していく必要があります。この変化の原動力となるのは、下記のようなトレンドです。
  • リスクの性質は進化しています。デジタル化の進展や保険保有率の低下などにより、顧客が保護したい資産や利益の種類が大きく変化しています。
  • 近年、顧客が企業に求める期待は、他業界のイノベーターが提供するサービスによって引き上げられ、顧客はその期待を持って保険商品を検討します。しかし、保険の場合、顧客との接点が保険金請求時だけのことが大半で、その際も「何のためにお金を払ったのか」と疑問に思われることが多いのです。
  • スタートアップ企業は、顧客の補償内容のギャップを解消するとともに、顧客の体験をシンプルにするソリューションを提供しています。例えば、米国の保険スタートアップであるLadder1 は、生命保険の加入プロセスを簡素化し、顧客に合わせたサポートを提供しています。
  • 他業界では、技術進化により、パーソナライゼーションや利便性の向上が進んでいますが、保険会社のリスクモデルやプライシングモデルは、依然として集合データに基づいています。しかし新しいデータソースの活用を始めている保険会社も出てきています。例えば、米国のスタートアップであるBetterview2は、ドローンで撮影した屋根の画像をもとに、損害保険のアンダーライティングに関する知見を提供するプラットフォームを提供しています。
既存の保険会社は、このようなトレンドに対応できなければ、存在意義はますます低下していくでしょう。加えて、コモディティ化や価格圧力が強まると、スタートアップや他業界のプレーヤーが参入し、従来の保険会社は収益や利益が減少することになります。

顧客への提供価値拡大による可能性

このように、保険会社の存在意義が薄れてきている状況を打破するために、保険会社は自社の基本的な提供価値を見直す必要があります。

そのためには、単に既存のコアビジネスを最適化するだけでは不十分です。提供サービスを徹底的に見直して再創造し、顧客の損失を補償するだけでなく積極的にリスクを管理し顧客の利益を守り、顧客に寄り添う「パートナー」となることが求められます。

保険会社に必要なのは、回復ビジネスから信頼ビジネスへの転換です。
  • 免責からリスクマネジメントへ
    今日、顧客と保険会社の双方が、顧客が損害を被る可能性に事実上賭けています。これは、カジノでブラックジャックのテーブルに座っているプレイヤー(顧客)が、ハウス(保険会社)に勝とうとしているようなものです。他業界と比較して、顧客が実際に損失を被った場合にのみ価値(勝利)を認識するという点でユニークです。

    しかし、この仕組みを逆にしてみたらどうでしょう。初心者(顧客)がカードシャーク(保険会社)と組んで、一緒にハウス(リスク)に対抗できるとしたらどうでしょうか。このようにとらえると、損失を被った際に回復を支援するだけでなく、顧客が積極的にリスクを認識し軽減することに重点を置いたサービスの提供をイメージできると思います。
  • 契約から信頼へ
    今日の保険契約は、特定の資産を対象として書かれており、無数の注意事項や除外事項が含まれているため、特定の状況下ではその有用性が制限されています。このように、顧客は損失から保護される一方で、資産が意図した価値を本当に提供しているかどうかを確認するために、保証や保守契約などの手配を別途行わなければなりません。
将来的には、保険と他の保護手段との間の境界線が曖昧になり、顧客の資産に関連する真の所有コストを守ることができるようになると考えています。契約書から多くの注意事項を排除することで、顧客は保険会社が自分のために「すべてをやってくれる」という信頼感を得ることができます。

  • 利益を守るサービスへ
    現在、契約されている保険の約半分は、損害保険料3です。しかし、デジタル化の進展により、無形資産が急速に増加し、シェアリングエコノミーやストリーミングエコノミーの台頭により、所有権に対する考え方が変化しています。また、ロボティクスや人工知能(AI)などの技術進化により、賠償責任のあり方が変化していることから、損害保険の基本的な考え方が大きく変化しています。

    今後期待される新たなサービスとして、資産を守るだけでなく、健康、富、移動、収入など、顧客の利益を守る保険サービスが考えられるでしょう。これら実現するためには、絡み合った複雑なリスクを管理し、保険会社の提供価値を真に顧客の利益に焦点を当てたものにするために、異なるタイプの従来商品を統合する必要があります。それにより、顧客を包み込む信頼の領域を形成し、複数の次元でのリスク管理を助けることになるでしょう。

  • 仮定から確証へ
    IoTの台頭は、他の分野でもハイパーパーソナライズされたサービスの実現に繋がっています。しかし、現在の保険商品の多くは、過去の傾向、データや顧客の分類に基づいて販売時に価格設定されています。この数理的なアプローチは、よく言えば多くの顧客にとって不可解であり、悪く言えば多くの顧客に不公平な扱いを受けているという認識を抱かせてしまっています。
将来的には、保険会社が実際の行動データを利用して、高度に個別化されたプライシングを行うようになり、そのプライシングがよりダイナミックになり、時間の経過とともにリスクプロファイルを増減させる顧客の行動に合わせて変化していくことを期待しています。
このような変化を受け入れ対応できる企業は、自社のサービスを再創造し、顧客との関係を維持しながら、新たな領域での成長を実現できるでしょう。

変革を推進していくには、高い目標を設定することが重要です。私たちは力を合わせて、保険に関する提供体験について新たな基準を設定しなければなりません。顧客への新たな提供価値としては以下のようなものが想定されます。
  • 機械的で画一的な体験提供ではなく、顧客一人ひとりのリスク選好や行動、利益の保護を尊重した、人間中心のテーラーメイド型のサービスを提供する。
  • 断片的で複雑かつ不透明なトランザクションではなく、保険会社と顧客が共にリスクを管理できるような、シンプルでアクセスしやすい継続的なジャーニーを実現する。
  • 過去のデータによりリスクを評価する対処的なモデルではなく、予測的なアドバイスやリアルタイムのリスク管理により、高い透明性と継続的な関連性をもつ、プロアクティブな体験を提供する。
  • サイロ化したばらばらな製品群ではなく、移動、教育、投資など、人々の現代生活とそのニーズに焦点を当て、業界を超えて他社と連携することで生まれた新たな製品・サービスを提供する。
顧客に提供する体験に対して高い目標を設定し、意味のあるイノベーションを取り入れることができる保険会社は今後も成長できます。そして、その使命を維持し、保険業界においてポジティブな変化を先導することができるでしょう。

ケイパビリティ


エクスペリエンスで保険ビジネスを再構築
保険業界の知見を結集し企業変革を支援し、人々の生活をより簡単・健康・安全に、そしてよりやりがいのあるものにする新たな体験を提供します。

リーダー紹介

久保 千明

インタラクティブ本部 マネジング・ディレクター

浜野 雅之

インタラクティブ本部 マネジング・ディレクター
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