課題―求める変化

デジタル技術の活用で、サービスの迅速化と効率化を目指す

欧米の保険企業を中心に、自社の競争力を高めるためのデジタル技術を活用した事業モデルの変革が急速に進んでいます。この影響は日本国内の生保・損保企業にも波及しており、いまやデジタル化は重要な経営アジェンダとなっています。

大同生命では、すべてのステークホルダーの満足度を「Gross Daido Happiness(GDH)」と位置付けています。メインの顧客である中小企業の経営者・従業員へ安心と満足の提供を目指す保険会社として、コアビジネスのさらなる発展と新しい価値創造のためにITやデジタル技術に強い期待を寄せてきました。

2018年、大同生命は「中期経営計画(2019~2021年度)」における「顧客対応態勢の革新」の一環として、契約事務領域における保険契約締結からお支払いまでの全てのプロセスでのお客さま満足度向上を目的とした検討に着手。アクセンチュアも初期の計画策定よりご支援してきました。「医務査定AI」はこうした検討により生まれた主要施策の一つです。

大同生命 アンダーライティング戦略室 室長の長谷 則之氏は、「保険契約締結までの重要な業務の一つである医務査定は、デジタルの活用によるさらなる効率化・迅速化が望まれていた一方で、査定担当者の医学的な知識を前提とする見落としの許されない確認項目が数多く存在しており、一律でのルール化(自動化)が非常に困難な領域でした」と振り返ります。

「それゆえに「医務査定AI」では、大同生命に蓄積されてきたデータを活用し、AIによる査定支援と専門人材による人的判断を組み合わせ、人とデジタルが融合した態勢を構築することで、医務査定業務の高度化を図るとともに、一層の効率化を目指しました」。(長谷氏)

「デジタル技術によってお客様手続きを「簡単」「便利」にすることで、業界最高水準の顧客体験を実現したいと考えています」

長谷 則之 氏, 大同生命保険株式会社 アンダーライティング戦略室 室長

取り組み―技術と人間の創意工夫

「医務査定で使えるAI」の実現における要諦

医務査定業務へのAI活用を目指した取組みは2018年にスタートし、PoC(概念実証)を2019年3月末まで実施。その後、本格導入プロジェクトがスタートしました。

大同生命 契約部 課長 中村 雅次氏は、医務査定AIプロジェクトで最初に手がけたことは「査定担当者の思考プロセスの可視化」であると説明します。

「医務査定では膨大な情報をもとに、人が判断していく業務が行われています。そこでプロジェクトチームでは医務査定AIを検討するにあたり、査定担当者の思考プロセスを可視化することに着手。査定担当者と同様の査定結果を予測し、必要とする情報をタイムリーに出力するAIの設計に入りました」。(中村氏)

可視化を目指した「人による業務プロセス」の代表的なポイントは次の通り。

  • 査定業務にあたり、担当者はどのような情報をチェックしているか。
  • 査定において、どのような基準に則って判断しているか。
  • さらにどのような情報を参照したうえで、総合的に査定結果を決定しているか。

このプロジェクトでは、「業務担当者の思考プロセスに即したアルゴリズム」をシステム化することで、具体的なAI活用へと落とし込むことを企画しました。しかしプロジェクトの要となるAIに関する重要な問題が浮上しました。

「既存のAIソリューションはAIによる判断プロセスがブラックボックス化しているため、『なぜAIがそのような判断をしたのか』の把握が困難だったのです。保険契約の申込み可否を決める医務査定業務において、AIによる判断プロセスのブラックボックス化は致命的な課題でした」。(中村氏)

このプロジェクトチームでは、医務査定で使えるAIを実現するべく、アクセンチュアのデータサイエンティストがAIのアルゴリズムをゼロベースで設計・構築するアプローチを採用しました。医務査定者の業務である判断とそのプロセスをAIが「再現」する仕組みとするために、チューニングを繰り返して精度向上に取り組んでいます。

業務コンサルタントとデータサイエンティスト、クラウドエンジニアによるワンチーム体制

本取組みにおいてアクセンチュアは、日本国内の保険業界に精通した業務コンサルタントとアプリケーション開発のクラウドエンジニア、そしてAIのアルゴリズムのモデル設計・構築において先端的な知見を有するデータサイエンティストが「ワンチーム」となる体制を構築しました。

プロジェクト統括:ビジネスコンサルティング本部とテクノロジーコンサルティング本部の両組織からマネジングディレクターがプロジェクト責任者として任命され、2名統括の体制でチーム全体のガバナンスを確立。全体計画とレビューによる品質担保等、プロジェクトの各フェーズにおけるリーダーシップを発揮しました。

モデル構築:アクセンチュアのビジネスコンサルティング本部に所属する業務コンサルタントとAIグループ所属のデータサイエンティストが大同生命の業務プロセスを分析して、医務査定のモデルを設計。過去のビッグデータに基づきアルゴリズムをゼロから設計・構築することで、「人による査定」を再現・支援するAIとしてデザインしました。なお本取組みにおいてはプロジェクトメンバーに留まらず、アクセンチュア・アプライド・インテリジェンスのAIやデータ分析の専門家からの助言と支援を受けつつ、最先端の知見を取り入れています。

アプリケーション開発:テクノロジーコンサルティング本部のクラウドエンジニアを中心に、AIシステムをクラウド上に構築。モデルから業務システムへの連携を担当しました。業務コンサルタントやデータサイエンティストと連携しながら、6ヵ月でシステムリリースを実現しました。

医務査定のプロセスに関する図表
「アクセンチュアのプロジェクト管理手法や進め方からは、私たちも多くの学びを得ました。問題点の発見、課題の整理、打ち手の具体化の仕方まで、イノベーティブな提案をいただくことができ、まさにプロジェクト推進のパートナーでした」

中村 雅次 氏, 大同生命保険株式会社 契約部 課長

成果―創出された価値

独自性・先進性のある「医務査定AI」の構築

本取組みでは医務査定AIの構築において、下記の要件を実現しました。

  • AI予測モデルを用いた対象案件の査定結果の予測。
  • 予測に影響を与えた因子(予測根拠)を抽出し、査定担当者が特に注意すべきポイントを明確化。
  • AI予測モデルの予測結果をもとに難易度を表示し、事前に案件の難易度を識別。
  • 対象案件のリスクレベルに類似する過去の案件候補を抽出。
クラウド上に機械学習モデルのアルゴリズムを実装し、医務査定を支援する仕組みを構築しました。

大同生命 契約部 課長 伊藤 隆郎氏は「医務査定AIは既に稼働していますが、このシステムはその性質上、稼働直後から想定される全ての成果が現れるものではありません。継続的に運用していくなかで査定担当者からのフィードバックを得つつ、AIの信頼性が担保されれば、最終的にはAIによる直接査定による自動化範囲の更なる拡大につながることも期待されています」。(伊藤氏)

この取組みではAIによる予測アルゴリズムをゼロから設計しており、かつ独自性・先進性もあるため、プロジェクト進行中には多数のトライ&エラーが発生しました。しかしそれは「仮説検証のサイクルを回すプロセス」としてスケジュールに予め組み込まれていたため、このPDCAサイクルの推進は着実な効果創出の実現に貢献したといえます。また、医務査定AIに学習させるためのデータとしては、大同生命が蓄積してきた過去実績データ(過去3年分、約10万件)が使用されました。アクセンチュアはアルゴリズム設計とシステム構築支援をするだけでなく、運用段階において大同生命側で自走しながらしっかり新たなデータとノウハウが蓄積されていく提案をしたことも高く評価されました。

データサイエンティストをはじめとするアクセンチュアのメンバーは、大同生命のメンバーと確固たるパートナーシップをもとにプロジェクトを推進しました。そうした相互の信頼関係が、医務査定AIの成功を強く後押ししたといえます。

「データ分析モデルの設計ではアクセンチュアのデータサイエンティストの知見を借りることができ、私たちもAIに関する理解が深まりました」

伊藤 隆郎 氏, 大同生命保険株式会社 契約部 課長

人とデジタルの融合でさらなる高度化・効率化へ

「私たちがAIの可能性を模索する段階からアクセンチュアに相談し、専門家を交えた様々な提案やプロジェクト進行・実際の開発で協力をいただけました。満足いくシステムができあがり、これから成果の刈り取りに期待が持てます」。(長谷氏)

大同生命では「医務査定AI」は本格的な運用段階に入っています。AIによる査定の精度が専門人材による判断と同じか、それ以上の精確性を持つようチューニングと改善を続けていく予定です。

将来的に「AIが査定し、人が決断する仕組み」という、人とデジタルの融合が促進していくことで、査定業務の自動化と人材のより効果的な働き方の実現を目指しています。

さらに契約部門では、査定業務に留まらず契約事務領域における幅広いデジタル活用をビジョンとして描いています。そうした検討を進める中で、同社ではデジタル化の可能性の幅広さを感じており、「営業・マーケティング領域におけるAI活用」や「本社働き方改革を実現するデジタル化」なども検討する領域としています。

アクセンチュアは引き続き、大同生命の戦略策定から現場業務の改善に寄与するデジタル活用等の変革実現までを一気通貫でご支援してまいります。

左より:大同生命保険株式会社 契約部 課長 中村 雅次氏、アンダーライティング戦略室 室長 長谷 則之氏、契約部 課長 伊藤 隆郎氏

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