「医務査定で使えるAI」の実現における要諦
医務査定業務へのAI活用を目指した取組みは2018年にスタートし、PoC(概念実証)を2019年3月末まで実施。その後、本格導入プロジェクトがスタートしました。
大同生命 契約部 課長 中村 雅次氏は、医務査定AIプロジェクトで最初に手がけたことは「査定担当者の思考プロセスの可視化」であると説明します。
「医務査定では膨大な情報をもとに、人が判断していく業務が行われています。そこでプロジェクトチームでは医務査定AIを検討するにあたり、査定担当者の思考プロセスを可視化することに着手。査定担当者と同様の査定結果を予測し、必要とする情報をタイムリーに出力するAIの設計に入りました」。(中村氏)
可視化を目指した「人による業務プロセス」の代表的なポイントは次の通り。
- 査定業務にあたり、担当者はどのような情報をチェックしているか。
- 査定において、どのような基準に則って判断しているか。
- さらにどのような情報を参照したうえで、総合的に査定結果を決定しているか。
このプロジェクトでは、「業務担当者の思考プロセスに即したアルゴリズム」をシステム化することで、具体的なAI活用へと落とし込むことを企画しました。しかしプロジェクトの要となるAIに関する重要な問題が浮上しました。
「既存のAIソリューションはAIによる判断プロセスがブラックボックス化しているため、『なぜAIがそのような判断をしたのか』の把握が困難だったのです。保険契約の申込み可否を決める医務査定業務において、AIによる判断プロセスのブラックボックス化は致命的な課題でした」。(中村氏)
このプロジェクトチームでは、医務査定で使えるAIを実現するべく、アクセンチュアのデータサイエンティストがAIのアルゴリズムをゼロベースで設計・構築するアプローチを採用しました。医務査定者の業務である判断とそのプロセスをAIが「再現」する仕組みとするために、チューニングを繰り返して精度向上に取り組んでいます。
業務コンサルタントとデータサイエンティスト、クラウドエンジニアによるワンチーム体制
本取組みにおいてアクセンチュアは、日本国内の保険業界に精通した業務コンサルタントとアプリケーション開発のクラウドエンジニア、そしてAIのアルゴリズムのモデル設計・構築において先端的な知見を有するデータサイエンティストが「ワンチーム」となる体制を構築しました。
プロジェクト統括:ビジネスコンサルティング本部とテクノロジーコンサルティング本部の両組織からマネジングディレクターがプロジェクト責任者として任命され、2名統括の体制でチーム全体のガバナンスを確立。全体計画とレビューによる品質担保等、プロジェクトの各フェーズにおけるリーダーシップを発揮しました。
モデル構築:アクセンチュアのビジネスコンサルティング本部に所属する業務コンサルタントとAIグループ所属のデータサイエンティストが大同生命の業務プロセスを分析して、医務査定のモデルを設計。過去のビッグデータに基づきアルゴリズムをゼロから設計・構築することで、「人による査定」を再現・支援するAIとしてデザインしました。なお本取組みにおいてはプロジェクトメンバーに留まらず、アクセンチュア・アプライド・インテリジェンスのAIやデータ分析の専門家からの助言と支援を受けつつ、最先端の知見を取り入れています。
アプリケーション開発:テクノロジーコンサルティング本部のクラウドエンジニアを中心に、AIシステムをクラウド上に構築。モデルから業務システムへの連携を担当しました。業務コンサルタントやデータサイエンティストと連携しながら、6ヵ月でシステムリリースを実現しました。