業界のサプライチェーン全体を変革すべく打ち出された500億円規模に及ぶ医薬品物流のイニシアチブにおいて、キーマンとしての重要な役割を担っているのが日本通運株式会社の代表取締役副社長の石井孝明氏です。同社の新しいシステムではブロックチェーン技術が採用され、常時アクセスが可能なリアルタイムの輸送データを集約することで、貨物の需給の変動を的確に捉えることを目指しています。これにより、同社の顧客は緊急事態や不測の需要の急増にも、効果的に対応できるようになります。

大きな成功を生み出している他のイノベーションと同様に、このプロジェクトのカギとなるのはコラボレーション重視のマインドセットです。

この点について、石井氏は「日本通運社内のエキスパート集団、あるいはこの分野の専門知識を擁するクライアント各社、エコシステムを構成するパートナー企業間におけるコラボレーションこそが、この変革の行方を左右する中心なポイントであると考えています」と話します。

石井氏がデジタルイノベーションを基盤にどのようにして日本通運を成長させ、未来に向けた競争優位性を確保しているかについてインタビューしました。

「今まさに重要なのは、サプライチェーンのイノベーションに向けた新たな道を切り開くことです」

— 石井孝明 氏, 日本通運株式会社 代表取締役副社長

サプライチェーンの効率化に向けて、どのようにテクノロジーを活用していますか?

石井氏:当社では、輸送サイクルおよびサプライチェーン全体に及ぶすべての工程で、継続的に温度を記録しています。これらのデータを監視し、お客様がクラウド上で必要な情報にリアルタイムにアクセスできる共通のシステムを構築しているところです。また、インテル社、ハネウェル社との協働を通じて、クラウドベースの追跡システム「Global Cargo Watcher Advance(GCWA)」の開発も進めています。これは設置された小型の電子センサーが輸送貨物の位置、温度、湿度、照度、衝撃、傾斜を記録し、貨物が読み取りゲートウェイを通過するとデータがクラウド上にアップロードされ、ブロックチェーンの記録台帳に格納されるというもので、クライアントはそれらのデータにいつでもアクセスすることができます。現在、これらの技術を最適化する段階に入っており、新たなビジネス構想の一部としてグローバル展開していく予定です。

日本通運は1937年の創業以来、サプライチェーンにおけるレジリエンス(耐障害性)の重要性がかつてないほど高まっている現在にいたるまで、世界に通用する物流サービスを提供し続けています。ビジネスの継続性のカギはどこにあるのでしょうか。

石井氏:ビジネスの継続性を維持するためには、常に数歩先を歩む必要があり、そこからイノベーションが動き出すと考えています。また、当社にとってイノベーションはコラボレーションと同義です。強力なパートナーシップと技術力がなければ、イノベーションの進捗は間違いなく大幅に遅れていたことでしょう。最適なタイミングで適切なテクノロジーパートナーに参画してもらい、お客様に安心して利用いただけるシームレスなサービスをいち早く提供することが、当社の成功の礎になっています。強力なパートナーシップのおかげで、負荷のかかる環境でもコストを抑えながら、品質管理の大幅な効率化を実現しています。当社は異なる強みやテクノロジーを結集することで、未来に向けて前進するための道を切り拓いてきました。そして、常にお客様を中心に据え、サプライチェーン環境を劇的に進化させています。

長期的な視点で、データ収集はどのようにしてビジネスの成長に貢献していくでしょうか。

石井氏:輸送状況や積荷データを蓄積することで、お客様に新しいソリューションを提案する機会がもたらされています。このように製薬業界に共通の輸送システムを提案することが、従来のビジネスモデルの変革や全く新しいビジネス領域の開拓、新たな顧客関係の構築につながると確信しています。最終的にこのイニシアチブは、他の業界・業種の企業や組織においてもデータの有効活用による業務効率化に大きく役立つはずです。そしてこの種のプラットフォームは1つの産業分野に限らず、業界のサプライチェーン全体を大きく変革できるものです。この新しい物流システムを開発するにあたり、当社は日本企業ならでは強みを世界にアピールしていきたいと考えています。それくらい大きなイニシアチブになっていくことを期待しています。

サプライチェーン改革に挑む。日本通運とアクセンチュアのチャレンジ

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