ビジネス環境の変化に適応し、優位性を保つための「5つのキーワード」

なぜサプライチェーンの改革が必要なのでしょうか。その理由として挙げられるのが、周辺的なビジネス環境の劇的な変化です。

近年、顧客要求の変化のスピードは非常に速くなっており、昨今の製造・流通業界の企業のトップエグゼクティブは、Eコマースやマスカスタマイゼーションの実現といったサービスオリエンテッドなビジネス体制の構築を喫緊の経営課題として認識しています。

そうしたことから、多数の経営者が本格的に「カスタマーセントリック(顧客中心対応)」へと動き出す必要性を感じており、アクセンチュアの調査によると70%以上のマネジメント層が「もっと個別カスタマイズをしなければならない」、「もっと柔軟なフルフィルメントを実現しなければならない」、「もっと選択の幅を広げなければならない」、といったテーマを課題としています。

しかし、日本の製造・流通業界の企業がグローバル市場で戦っていくうえで、カスタマーセントリックを実現するだけではまだ不十分です。市場で優位性を保つためには、他に「コネクテッド」、「ラーニング」、「アジャイル」、「サービスオリエンテッド」を実現し、「既存ネットワークを超えたコネクテッド プラットフォームの構築」や「職人技とAIの融合」が必須だと考えられます。

この5つのキーワードがこれからの競争優位性を保つための鍵となります。

顧客中心プロセスへの変革を実現する「4つのアプローチ」

「顧客中心のサプライチェーンプロセスへの変革」を実現するには、どのようなアプローチが有効なのでしょうか。 アクセンチュアでは8つのキーブロックで構成される「4つのアプローチ」がサプライチェーン変革のエンジンになると考えています。

アプローチ1: 「Configure」― 構成を考える

Configureは、顧客セグメントに最適化したプロセスの構築や、マスカスタマイゼーションに対応するアプローチです。

マスカスタマイゼーション対応には、サプライチェーンの中でコンセンサスをいかに取るかが主要な課題です。近未来のサプライチェーンは、「主要なネットワークに参画するキープレイヤーと、乱立する小規模なファンクションやステークホルダーが結びつくもの」となるでしょう。サプライチェーンのモデルが時と場合により柔軟に変形、伸縮するなど、自在に構成を変えるものとなります。その際、顧客ニーズや製品セグメントに応じたフレキシブルな「Asset-Light(自社のみではない資産の活用した)ネットワーク」を構築することにより、効率的にリソースを活用できる自律的なエコシステムが実現します。

アプローチ2: 「Connect」― ネットワーク刷新による全体連携 

マスカスタマイゼーションを切り口として改善を進めるには、既存のネットワークやプラットフォームを刷新して、ハブ機能を持つモデルへと転換する必要があります。「自律的に最適化するネットワークで各SCMステークホルダーが繋がることにより全体を連携させる」といった発想が不可欠です。

Connectの結果、インテリジェントテクノロジーの活用とサプライチェーンのシームレスな連携が可能になります。これにより、エンドツーエンドでの見える化が可能になり、自社内のシステム連携はもちろん、ステークホルダーとのコラボレーションを生み出す基盤として機能します。

このアプローチでは、「インテリジェント・ブレーン」が今後の重要な存在となります。これはプラットフォームのエンドツーエンドでの情報連携において、非構造化データも含めて収集、情報クレンジングを行うものです。AI活用と職人技を掛け合わせることで、従業員のトレーニング機会や事業継続性の向上、24時間/365日の自動対応の実現に貢献します。

アプローチ3: 「Operate」― 全体把握とアラート管理

Operateにおいては、自社の人材の最適な再配置を実施することなどにより、「サービスオリエンテッド型オペレーティングモデル」へと変革します。顧客サービスを軸として、Liquid Work Forceを活用するエコシステム構築のためのアプローチです。

その際、硬直的なオペレーションを構築するのではなく、as-a-Service思考でモデルを描くことが重要です。要点は可変モジュールを組み合わせ、プラグ・アンド・プレイで進めることです。サービス内部でコンテンツ化やモジュール化を行いつつ、「コアでやるべき領域」と「周辺の方が強い領域」を連携させながら全体把握とアラート管理を常に改善し続けます。

アプローチ4「Optimize」― プロセスの効率化・最適化

複雑化したプロセスの効率化・最適化にはAIの活用が効果的です。このアプローチにおいては、人材のポテンシャルを他の業務領域へ注力できるようにする発想が非常に重要です。

たとえば従来から調達購買の領域は「KKD(経験・勘・度胸)の世界」だといわれてきました。しかし今後は高度に洗練されたAIやアナリティクスを使い、イノベーションを起こす仕組みがビジネス成長において不可欠となります。

非構造化データをいかに吸収しながら「過去・現在・未来」を描いていくのか、状況ごとにいかに最適なKPIを設定するか。今後のビジネス現場では、「既存プロセスがベストである」というケースはなくなり、持続的なイノベーションによって「常に変え続ける」ことがより求められると予想されます。

最適解を導き、意思決定を支援するプラットフォーム「AI-Powered SCM」とは

ビジネスの各ファンクションでプラグ・アンド・プレイを体系化しながらAIを活用するにはどうしたら良いのでしょうか。アクセンチュアでは、基幹システムと同じようにSCMのAIプラットフォームの構築を提唱しています。

この「AI-Powered SCM」は、経営層や現場層はもちろん、ソーシャルやマーケットから来る情報の中から最新かつ最適の情報を取得して、コントロールプラットフォームで一元的に管理・分析するモデルです。デマンドやフルフィルメントのオプティマイゼーションなどから最適解を導き出し、人間による意思決定を支援します。

AI Powered SCMの概要​

事例で解説するSCMの近未来 - もう間近にきているプラットフォーム活用

ここまで述べてきたSCMの今後の変革は遠い未来の話ではありません。様々な業界で起きている、現在進行形の変化なのです。

事例① 旅行業界

新たなプラットフォーマーの台頭により、ビジネス環境は大きく変貌しています。ホテルや飛行機、レストランといった旅行を構成するコンテンツがデジタル化されています。

かつては旅行代理店の窓口等での申し込みが必要だった航空券の手配も、航空会社などキャリアが自社のアセットをデジタル化したことで、ユーザーが直接予約できるようになりました。しかし昨今では新たなデジタルプラットフォーマーが登場し、クローラーを使ってデータ基盤を整備し、顧客に最安値や最適プランを提示するビジネスモデルが台頭しています。これにより、エンドユーザーの趣味嗜好や属性情報を握っているプラットフォーマーが最上位のプレイヤーとなりました。

事例② 物流業界

物流業界ではリソースのデジタル化が急速に進んでいます。トラックや倉庫の稼働状況がデジタルテクノロジーで可視化され、物流のマスカスタマイゼーションが可能となりました。ユーザー自身が情報を見て、ニーズに適合するサービスを選択して利用するモデルへ転換しようと模索しています。

その先は、次世代的な「スマート物流」へと進む可能性があります。具体的には複数のトラック配送企業や倉庫会社をAIとアナリティクスで需給マッチングし、フルフィルメント管理もして最適化・効率化しつつ、自動運転によるドライバーレス化を実現する可能性を秘めています。

サプライチェーンにおいて、AI導入とプラットフォーム構築を成功させるために

AIを成果に結びつけやすい手法は、適切なポイントにAIを適用することです。

また、プラットフォームの形成も今後の変化のカギとなります。こうした時代においては、既存業界はファンクションの1つとなり、膨大なデータを連携させ、プラグ・アンド・プレイで周辺プレイヤーと相互連携しながらビジネスを推進するモデルが普及すると予想できます。この変化に乗り遅れないことが重要です。

製造・流通業界企業のお客様は今まさに、事業戦略の転換期にあります。こうした変化は2〜3年のうちに次々と形になっていくでしょう。今後のビジネスにおいては、プラットフォームとエコシステムを形成することが生き残りに求められています。アクセンチュアは、グローバルの豊富な人材とAIやアナリティクスなどテクノロジーの知見で、お客様の変革を支援しています。

北川寛樹

製造・流通本部 マネジング・ディレクター​

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