「本質」が問われる保険業界のデジタル変革
October 2020
October 2020
デジタル変革は、保険企業が「生活者・企業・社会に寄り添い続けるパートナー」となるために不可欠のアプローチです。これからの保険企業が目指すべき姿を明らかにしつつ、自社のデジタル化の舵取りをするための「4つのレイヤー」を解説します。
デジタル化を阻む課題と顧客ニーズの変化
保険業界におけるデジタル技術の活用は2010年代前半から推進されてきたものの、まだまだ道なかばであると言えます。
従来の「デジタル化」は、AIやロボティクス、ブロックチェーンなどの先進技術をいかに現行業務に適用するかという議論が中心でした。しかしそれらのテクノロジーは、ツールや手段にすぎません。デジタル変革の先に、自社のビジネスの将来像や社会の未来をどのように見据えるかといった「本質」にフォーカスすることなく、真の「デジタル変革」は成し遂げられません。
また、社会から保険企業への要請も変化しています。顧客はいま、生命保険においては「健康な生活」、損害保険においては「防災や減災の視点を取り入れた安心・安全な生活」の実現のリードを保険企業に求めています。
一方で保険企業は「古い習慣に縛られたままのサービス体系」「柔軟性やスピード感で劣る旧態然とした業務プロセス」が課題として明確になっています。日本の保険企業が海外市場でグローバルプレイヤーに挑戦するうえでも、こうした実情は早急に改善されなければなりません。
「4レイヤー」で実装する保険企業のデジタル変革
保険企業が真のデジタル変革を推進するうえでは、「事業」「オペレーティングモデル」「システム」「人材・カルチャー」の4つのレイヤーで考えることが有効です。
テクノロジーを活用する「リモート営業」や「リモート業務」といった新しいワークスタイルも普及するにつれて、保険業界では従来の「プッシュ型営業」から、より効率的な「中央集約型営業」にシフトすると予測されます。顧客は「この担当者の話やアドバイスを聞きたい」といったように、セールス担当者を自ら選択したり指名される時代が到来するでしょう。
デジタルが「人的資源」をエンパワーする
新興デジタルプラットフォーマーは、伝統ある保険企業にとって「協業相手」であると同時に「競争相手」となり得ます。事業の共同開発などでデジタル前提の新サービスが生み出される一方で、デジタル企業の保険市場参入が予想されます。
伝統的保険企業が培ってきた「顧客との対面によって生まれる価値・ブランド力」は今後も有効であり続けます。アクセンチュアが提唱する「DHD(デジタル・ヒューマン・デジタル)」はその価値をさらに高めるアプローチです。
「人的資源(Human:ヒト)」へのデジタル活用のエンパワーの例として、先進的な保険企業ではすでに「提案の場で、次に何を話すと効果的か」や「どのような資料を提示すると顧客のニーズにマッチするのか」といったサジェストをAIで提供している例があります。
保険企業はより一層、「顧客のパートナー」であることが求められる時代です。グローバル市場で日本の保険企業が海外の有力プレイヤーと対等以上に渡り合っていくためにも、「デジタル変革」と「人のエンパワー」は避けて通れないテーマなのです。
保険業界に精通した専門チームを有するアクセンチュアでは、「よりよい社会の実現」を目指す保険企業のお客様のデジタル変革を力強くご支援いたします。