調査レポート

概略

概略

  • 今後10年にわたって、社会的、経済的な課題に適切に対処していくために、企業には新たなリーダーシップが求められています。
  • 持続可能な繁栄や公平性という考え方を組織に浸透させるためには、従来よりも幅広い属性やスキルを持つリーダーの存在が不可欠です。
  • 今後のリーダーは、例えば、ミッションとパーパス(企業の存在意義)、テクノロジーとイノベーション、ステークホルダーのインクルージョンといったリーダーシップ要素を身に着ける必要があります。
  • アクセンチュアは、優れた業績を上げている組織に共通する、新たなリーダーシップを“レスポンシブル・リーダーシップ”と名付け、その実現に必要な5つの要素を定義しました。


新たなリーダーシップモデル“レスポンシブル・リーダーシップ”

2020年、企業が直面する課題

新たなる10年の始まりである2020年、企業組織は様々な課題に直面しており、責任あるリーダーシップの定義をあらためて見直す必要に迫られています。

  • 気候変動:65%の経営者が、天然資源に依存せずに、経済成長を実現することの重要性を認識しています。
  • 経済の脆弱性:87%の経営者が、グローバル経済システムは、世界の公平な成長実現に寄与すべきと考えています。
  • 第4次産業革命:新たなテクノロジーは、その潜在的な可能性とリスクの十分な理解に基づき、採用・管理されなくてはなりません。
  • 従業員の再教育不足リスク:2017~2019年にかけて、新たなテクノロジーへの投資は倍増した一方で、「今後3年間で従業員の再教育のための支出を大幅に増やし、組織の再編を計画している」と回答した企業は、わずか18%にすぎませんでした。

これらの問題に関して、様々なステークホルダーの意見が組織の意思決定者に影響を与えるようになり、多くのリーダーが変化の必要性を認識し始めています。

注:国連GC・アクセンチュアによる「CEOにとってのサステナビリティ調査2019」に回答した、CEOおよび役員の約2,500名が対象

72%

の経営者が、今後5年間、市場競争力を維持するために、市民からの信頼を獲得することが重要になると考えています。

61%

新進気鋭のリーダー(世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズ、グローバル・シェイパーズ・コミュニティーのメンバー)の61%が、ソーシャル・インパクトと利益成長の両方を実現できるビジネスモデルこそがあるべき姿である、と回答しています。

「企業がビジネス機会を捉え、社会的あるいは環境的に有益な成果を挙げながら成長を加速させることには、社会的な義務も伴います。これを推進するには、『リーダーの責任』をあらためて定義する必要があります。新たな若い世代は既に、企業のミッションやステークホルダーのインクルージョン、他者への思いやりの意識が根付いた『価値観』を尊重しつつ、こうした取り組みを先導し、自らの価値向上に力を入れています。」

— エリン・シュック, アクセンチュア、最高リーダーシップ兼人事責任者

イノベーションと“責任”の両方が業績向上には必要

アクセンチュアは、2015~2018年にかけて上場企業2,540社を対象に、持続可能性、ステークホルダーの信頼、イノベーションに関連した企業の行動と財務上の実績を調査しました。その結果、イノベーションおよび持続可能性の実現に加え、高いレベルでステークホルダーの信頼獲得も遂げている企業は、競合企業よりも優れた財務上の業績を達成しており、営業利益が平均3.1%高く、株主還元も大きいことが判明しました。一方、イノベーション実現は遂げているものの、持続可能性と信頼度が十分なレベルに達していない企業では、営業利益への影響はほとんど見られませんでした(下図参照)。

イノベーションおよび持続可能性の実現に加え、高いレベルでステークホルダーの信頼獲得も遂げている企業は、競合企業よりも優れた財務上の業績を達成しており、株主還元も大きいことが判明しました。一方、イノベーション実現は遂げているものの、持続可能性と信頼度が十分なレベルに達していない企業では、営業利益への影響はほとんど見られませんでした。

新たなリーダー像“レスポンシブル・リーダーシップ”

現代のリーダーは、次の3つの観点で価値創出を達成する必要があります。1つ目は組織の業績向上。多くは短期的収益によって評価されます。2つ目は継続的なイノベーション。時に革新的なテクノロジーの採用により加速し、長期的な成長の土台となり得ます。3つ目は持続可能性と信頼性の獲得。ステークホルダーの利益や関心に注意を払うことで実現されます。

この3つの目標すべてを達成するリーダーに求められる資質を探るため、アクセンチュアは約2,000人のビジネスリーダーと3,000人のステークホルダー、さらに世界経済フォーラムのヤング・グローバル・リーダーズとグローバルシェイパーズに属する1,800人以上の新進気鋭のリーダーを対象とした調査を実施しました。



“レスポンシブル・リーダーシップ”の5つの要素

“レスポンシブル・リーダーシップ”の5つの要素は、「ステークホルダーのインクルージョン」「感情と直感」「ミッションとパーパス(企業の存在意義)」「テクノロジーとイノベーション」「知性と洞察」で構成されています。

「ステークホルダーのインクルージョン」「感情と直感」「ミッションとパーパス(企業の存在意義)」「テクノロジーとイノベーション」「知性と洞察」が、“レスポンシブル・リーダーシップ”の5つの要素です。

  • ステークホルダーのインクルージョン:意思決定においてさまざまなステークホルダーの立場を考慮し、多様な人々が発言権と帰属意識を持てるようなインクルーシブな環境を整備することで、あらゆる層の信頼を確保し、それらをポジティブなインパクトにつなげること。
  • 感情と直感:真の人間らしさを持ち、思いやりや謙虚さ、寛容さを示すことで、自組織のメンバーのコミットメントを高め、創造性を解き放つこと。
  • ミッションとパーパス(企業の存在意義):企業およびステークホルダーの間において持続可能な繁栄という理念を共有できるよう働きかけ、全員が共通の目標に向かって前進できるようにすること。
  • テクノロジーとイノベーション:新しいテクノロジー群を活用したイノベーションを実現し、企業の社会的責任を果たし、新たな社会的価値を創出すること。
  • 知性と洞察:データを重視した継続的な学習と知識の共有・やりとりを通じ、組織の成長と社会的変革に向けて絶えず進歩し続けること。

ステークホルダーは「感情と直感」、「ミッションとパーパス」を重視する傾向が明らかに

経営層は、リーダーは5つの要素すべてを持っている必要があると考えており、とりわけ「テクノロジーとイノベーション」を重視しています。一方で、消費者や従業員をはじめとするステークホルダーは、「感情と直感」、「ミッションとパーパス」によって優れた成果を発揮出来るリーダーに期待を寄せています。この差を埋め、広範な社会的期待に応えるべく、組織はリーダーの資質について再検討し、5つの要素をバランス良く備えた、より強力なリーダーシップを実現する必要があります。

「これからは実行の10年です。企業は新たなリーダーシップを構築し、より公平で持続可能な成長の波を起こすことで、世界中で起きている差し迫った問題の解決を手助けすることができるでしょう。」

— ピーター・レイシー, アクセンチュア・ストラテジー  シニアマネジング・ディレクター 欧州・英国およびアイルランド担当、アクセンチュア世界経済フォーラムリーダー

“レスポンシブル・リーダーシップ”の実現

“レスポンシブル・リーダーシップ”は、学習と実践を通じて、初めて具現化します。企業は、目をそむけたくなるような困難な課題にも真摯に向き合い、それらに答えを出すことから着手しなくてはなりません。まずは次の質問に答えてみましょう。

あなたの組織のビジネス上のステークホルダーは誰ですか? また、その人たちについてどれだけ理解していますか?

  • その中には、これまでとは違った多様な関心を持つステークホルダーは含まれていますか?
  • 組織における各ステークホルダーの重要度を適切に評価できていますか?
  • 組織的な行動がもたらす、ステークホルダーへのプラスとマイナスの影響を理解していますか?

現在のリーダーシップチームは、“レスポンシブル・リーダーシップ”の5つの要素をバランスよく獲得する努力をしていますか?

  • 5つの要素について、リーダーシップチームと議論し、その獲得に向けた具体的な行動に落とし込んでいますか?
  • 戦略の意思決定の際に、これら5つの要素に含まれる特性、スキル、マインドセットを駆使出来ていますか?
  • 次世代のリーダーシップチームの開発・育成のために、5つの要素は明確に定義されていますか?

組織全体で“レスポンシブル・リーダーシップ”の質を向上させ、その成果を拡大していくためには、何が求められるでしょうか?

  • “レスポンシブル・リーダーシップ”の実現に向けた障壁と実現機会はどのようなものですか?
  • また、その実現に向け、最優先で解決すべき課題は何ですか?
  • 個人、組織、エコシステム全体において、“レスポンシブル・リーダーシップ”の実現・進展を加速させる支援ツールやコラボレーションの仕組みは整備されていますか?

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エリン・シュック

アクセンチュア、チーフ・リーダーシップ&ヒューマン・ リソーシズ・オフィサー


ピーター・レイシー

アクセンチュア・ストラテジー
シニアマネジング・ディレクター 欧州・英国およびアイルランド担当、アクセンチュア世界経済フォーラムリーダー

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