調査レポート

概略

概略

  • 昨今、企業はデジタル技術を活用し、自社の製品・サービスの高度化やビジネス化を推進しています。しかし、データ取得・分析などが、技術検証のPoCで終了しているケースが多く、マネタイズやスケーラブルなサービス展開ができていません。データ活用におけるチャレンジに向け、最新事例を元に成功のカギを考察します。


デジタル化の本質は、ビジネスの「高解像度化」

昨今、企業経営および商品・サービス展開のデジタルトランスフォーメーションとして、データの活用によるマネタイズとビジネスモデル構築への取り組みが増えています。しかしその多くはPoC(概念実証)にとどまっており、実際のビジネス化まで達成できているケースは稀少だといえるでしょう。

そもそも「デジタル化の本質」とは何でしょうか。端的に言えば「ビジネスの現場で起きている事象について、極めて高解像度(ハイレゾリューション)に捉えることができる」ということです。

たとえば、お茶碗1杯のご飯に白米が何粒あるか。約3200粒だと言われています。従来であれば「茶碗1杯」という単位でしか捉えられなかった情報を「約3200粒」という精細な単位で把握できることが高解像度の意味なのです。

つまり、デジタル化によって「顧客1人ひとりの行動」あるいは「エンドユーザーのアクティビティ1件ごと」のレベルで、ビジネス現場でおきている事実や事象を分析し、把握できるようになるがデジタル化の効果です。

通信技術やデータ分析技術の進歩を“儲け”へと繋げるには

Annual Size of the Global Datasphere

The graph is the increased amount of datasphare

かねてより「データ量の爆発的増大」と言われています。その内訳を考えると、近年まではコンシューマー側のデータが急増してきました。しかし今後は5Gが産業利用され、IoTによるセンサーデータの増加、BtoBでのクラウド利用が増えることで、ビジネスデータ容量の爆発的増大がさらに加速するものとみられています。

デジタル化によってビジネスの解像度が高まり、通信技術の進歩で高速・大容量通信が可能になる。そしてデータ分析のアルゴリズムも日々進歩しています。つまり、ビジネスにおける「データ活用」「デジタルトランスフォーメーション」が今後ますます本格化していくことは間違いありません。

「そうしたデジタルトランスフォーメーションは、どのように利益につながるのか?」という問いを持たれる経営者も多いでしょう。シンプルに答えるならば「うまく推進することで“儲け”につながります」に尽きます。ただし、そうした利益化は一朝一夕では起こりません。取り組みを繰り返すことで、初めて大きなファイナンシャルインパクトの達成へとつながるのが実態です。

海外先進事例にみる、デジタル活用の収益化と事業転換

Strategical investment for DX is more efficient for many companies

Many companies are hesitant to invest in digital transformation without knowing if the investment will pay off. However, when done strategically, digital transformation can improve stock prices and revenue in the long run. These seven major companies show that changes might not occur overnight, but investing in digital transformation can make a large financial impact over time.

海外の先進事例を見てみましょう。

ベストバイ

エレクトロニクス製品のリテーラーであるベストバイは、2010年頃に経営状況が悪化し、末期的状況ともささやかれていました。しかし、リテーラーには顧客接点を持つ強みがあります。同社はこの強みを発揮して、単なる流通小売企業からコンシューマーの「ライフスタイル提供会社」と自社ドメインを再定義することで、経営を再建しました。

具体的にはテクニカルサポートへの投資とサービスの充実化を推進し、特にヘルスケア領域のサービスビジネス展開に力を入れました。その結果、約7年をかけたデジタルトランスフォーメーションによって、20ドルほどだった株価は3倍以上の70ドル超となっています。

ナイキ

スポーツ関連用品の製造販売でおなじみのナイキは、長い間、Amazon.comと共同でカスタマーエクスペリエンスの向上に取り組んできたほか、卸経由での販売を主軸としてきました。しかし同社は、Direct to Customer戦略を掲げて直販へと大きく舵を切り、大きく売り上げを伸ばしています。

この効果は収益などの数字に表れているだけでなく、スマートフォンアプリなどによるデータ収集を通じて「コンシューマーの嗜好や行動パターンなどの理解促進」にも繋がっています。結果としてナイキは市場から高い評価を受けています。

ミシュラン

自動車タイヤの製造販売で知られるミシュランは「顧客が欲しいものはタイヤではなく、移動という価値である」と自社ビジネスを捉え直し、タイヤ販売から走行距離に応じて課金するモデルへと転換。昨今ではさらに「消費電力課金」への転換も進めています。

タイヤ市場は約6兆円規模ですが、物流市場全体は250兆円。同社は「Tire as a Service」のコンセプトのもと、より大きなパイの獲得に挑戦していると言えます。

サーモフィッシャーサイエンティフィック

研究機関・学術機関などに分析機器を提供している同社では、「サーモフィッシャーコネクト」というプラットフォームを構築し、実験データやプロジェクト進捗を管理・共有できるサービスを提供しています。

しかしこのプラットフォームの利用は無料。同社では実験で使う試薬品など消耗品でマネタイズしています。プラットフォームを運用することで、試薬の在庫状況や消耗量をすべて把握できます。ユーザーが必要とする消耗品やスペアパーツを最適なタイミングで提供することが容易になったことで、ビジネス全体の40%をこのプラットフォームが生み出していると言われています。

これは、カスタマーエクスペリエンスを創出してユーザーを捉え、ハードウェアで利益を生み出すアップルなどの方法と同一です。

勝ちパターンで得た利益で次世代コアビジネスの投資へ

このように、世界各国の企業がデジタルを活用するビジネスへと転換していく一方で、日本はデジタル活用度合いを調査したレポートからも、国際競争力を落としていることが判明しています。

日本には特定の勝ち(成功)パターンで長年、莫大な利益を生んできた老舗的な長寿企業が多く存在します。また、社会の変革も他国と比べて遅れており、「データ活用の視点でビジネスを考える」こと自体が経営者に浸透しきっていません。

アクセンチュアの提唱する「ワイズ・ピボット(賢明な事業転換)」は、企業の既存コア事業と次世代のコア事業となる新規事業を並走させながら徐々に新しいビジネスへと転換していくためのフレームワークです。

Legacy + New "Wise Pivot" is required for all companies

Wise pivot

Transform the core

  • Digitally transform the company to drive significant (20%+) order to invest in the new.
  • Reinvent the core product & experience.
  • Create the digital platform foundation for future.
  • Focus: strategic divestments, portfolio rationalization.

Grow the New

  • Shift business model away from traditional hardware
    As a service model
    to drive recurring revenues.
    Product - platform transformation.
  • Invent new categories of smart, connected devices & services.
  • Monetize the installed basedand use product data to generate new sources of revenue.

Wise pivot

  • Manage cannibalization carefully.
  • Subsidize the new while scaling, and get timing right.

既存ビジネスが堅調なうちに、いかにして新規ビジネスを生み出す投資を判断するか。その意思決定力が今後の経営者に求められるスキルとなります。新規事業を創出するタイミングを見誤ると投資への余力を生み出せないまま、コスト削減のフェーズへの突入を余儀なくされてしまい、難しい経営の舵取りが必要となる状況に陥ってしまいます。

実際に「FORTUNE 500」に名を連ねたような大企業であっても、デジタル化戦略で競合に先を越された結果、マーケットから退場せざるをえなくなった企業も少なくありません。

エクスターナルとインターナルの2つの面で考える「サービスビジネス化」のポイント

2 Dimensions approach to monetize external / internal data

Data monetization

Data monetization

Digitize operations
Efficient improvement in current operation: R&D, manufacturing, logistics, F&A, etc.

Digitize customer experience
Gain revenue upside through new value proposition to customers with product and external data utilization.

Data driven business
Integration of internal + external data to maximi profitability and continuous innovation.

私たちはデジタルトランスフォーメーションにおいては、「インターナル」と「エクスターナル」の2つのフォーカスポイントがあると考えています。

エクスターナルフォーカス
デジタルカスタマーエクスペリエンスの強化に取り組み、新たな売上を生み出すマネタイズの強化。

インターナルフォーカス
事業オペレーションをデジタル化し、効率化やコストの合理化などで、サービス品質や収益構造を改善。

以前の時代、ビジネスのバリューチェーンにおける「付加価値の高さ」は、企画やアフターサービスよりも中間部の「設計」「開発」「製造」が主体でした。そのため「良い製品を作れば売れる」というようなマインドがビジネスは十分に通用し、かつ利益も生み出せていました。(「ムサシカーブ」)

しかし2000年に入り(特に2010年以降)はこの価値のカーブは逆転しました。高い収益を生み出すコンポーネントは企画とアフターサービスへと移り、中間部の開発や製造はコモディティ化しています。(「スマイルカーブ」)

スマイルカーブのボトムラインは「価格競争力」「デリバリー」「スペック優位性」「品質」といった要素を競う、厳しい競争環境で儲かりにくいビジネスを続けることになります。マネタイズ可能なプロフィットプールを見極めた上で、求められる潜在ニーズに対する提供価値の最大化を狙う必要があるといえるでしょう。

MVPの活用による「フェイルファースト」が事業転換の近道

こうした「スマイルカーブ」を意識したビジネスにおいては、「モノ売り」のビジネスモデルからの脱却がポイントとなります。しかし日本企業に根付いている「高い品質保証こそが価値であり、失敗は許されない」というマインドや企業文化、縦割りの組織構造が、ビジネスモデル転換を阻んでいるケースに頻繁に遭遇します。

GAFAに代表される海外先進企業は「失敗を許容しながら、改善を繰り返して前進していく」というアプローチで成功を収めています。その考え方の中にはMVP(実用最小限の製品: minimum viable product)を早期にリリースして、成功・失敗を重ねて改良していく「フェイルファースト」の思想があります。

バリューチェーンにおいて、収益性が商品企画とアフターサービスに寄っていると紹介しましたが、現代は「どのような商品企画がヒットするか」が先読み不可能な時代です。フェイルファーストで小さな失敗を積み上げながら、次世代のコアビジネスへとたどり着くことが重要だといえるでしょう。

データ活用のビジネスチャレンジにおける「成功のカギ」

日本企業の「データ活用によるマネタイズ」における課題を元に、取り組むべきテーマおよび「成功へのカギ」を整理すると、次の点に集約されます。

Key 1 既存事業の収益を元手とし、次世代のコア事業(サービスビジネス)創出と、事業転換の投資を推進する

Key 2 品質保証に固執しすぎる企業文化を是正し、フェイルファーストで商品/サービスのトライアル・アンド・エラーを重ねる

Key 3 デジタルプラットフォームなどの技術を活用し、縦割りの組織構造を横串のものへと共通化する

Key 4 PoCで終わらせず、デジタル化/データ活用でマネタイズしてビジネスアウトカムを創出する

Key 5 人間が得意とする業務領域と、AI・マシンが得意とする業務領域を整理分解しつつ、両者の協働(ヒューマン・プラス・マシン)による高い価値と生産性を実現させる

データやデジタル技術が「ビジネスの解像度」を向上させることは冒頭で述べた通りです。そのうえで、日本企業は「賢明な事業転換(ワイズ・ピボット)のアプローチで、次世代のコアビジネスへ積極投資していく」ことが重要といえるでしょう。

アクセンチュアはこれからも、お客様企業におけるより一層のデータ活用とデジタルトランスフォーメーションの実現をご支援してまいります。

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