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調査レポート

クラウドデータ: 眠れるデータが目覚めるとき

所要時間:約5分

概略

  • データは企業の強力なデジタル・コアを支える一部であり、トータル・エンタープライズ・リインベンション(企業全体の再創造)の重要な推進力となっています。
  • 企業は今、サイロ化されたデータを統合し、より高度な人工知能(AI)/機械学習(ML)を活用しうるタイミングにあります。
  • 始めにすべきことは、データの本質的価値を引き出すための最新のデータ基盤を構築することです。
  • 700社を対象とした調査によると、データの本質的価値を十分に引き出している企業は現状5社中1社にも満たない。
  • アクセンチュアは、データを差別化要素として活用し、測定可能なビジネス価値を生み出すための6つの実践方法を特定しました。

データに新たな生命を吹き込む

昔から、ビジネスにとってデータが重要なことは多くの企業が認識をしてきました。一方、昨今、企業で運用されているデータ規模は従来とは非にならないスケールにまでなっています。

過去10年間でデータの重要性や価値は加速度的に高まっています。データを真に解明しない限り、例え人工知能(AI)を導入したとしてもその可能性を最大限に発揮することはできません。データに精通したデジタル・ネイティブ企業は、データとAIを活用することで、新たな製品や顧客体験を生み出したり、業務効率を飛躍的に伸ばすなど、データの真価を示しています。

クラウド・ネイティブ・サービスの進歩によって、あらゆる企業がこうした価値を享受できるチャンスを手にしています。2021年には、世界の大企業2,000社のCEOのほぼ半数が、決算説明会でAIについて言及しています[i]

[i]「AI活用浸透」の極意:実践から成果へ

複雑さの難問

落とし穴もあります。データを取り巻く環境や企業データ活用方法は、一層大きく、複雑になっています。より多くのデータをより高速に処理しなければならなくなっているのです。クラウドが継続的に進化(クラウド・コンティニウム)する中、常にあらゆる点からデータにアクセスする必要があることは言うまでもありません。

また、ほとんどの組織では、リアルタイムデータの活用や、異なるインフラ・コンポーネント間の接続性と相互運用性の確保に課題があります。データを追跡したり、顧客、資産、従業員、パートナーに関する基本的な質問に答えるために必要な情報を見つけることにさえ苦労しています。

なぜ難しいのでしょうか?データの所在を知ることは、解決の一部に過ぎず、その先、データにアクセスし、抽出し、処理し、分析し、洞察を適切な人々やシステムにペース配分するという課題に応える必要があります。それは、組織が自由に使えるデータ・プラットフォーム、プロセス、スキル、文化に大きく左右されます。

こうしたデータの複雑さは、旧来の課題から来るものであれ、新たな課題によって悪化したものであれ、大多数の企業は、自分たちのありたい姿と現在の実際の姿との間にギャップがあると考えています。

データを競争上の差別化要素に転換させる

良いニュースもあります。クラウドやエッジの目覚ましい進化によって、数年前には存在しなかったソリューションが生まれてきています。それによって、企業は3つのインパクトある戦略目標を有することができるようになりました。データ本来の価値の抽出、あらかじめ構築されたクラウド・ソリューションによる価値の加速、AIによる飛躍的な価値の創造、の3つです。

データのバリュー・ジャーニーは、一つ目に述べた「データ本来の価値の抽出」から始まります。企業のリーダーは、現在真の価値が発揮できていない、つまり価値が低くみられてしまっているデータの中から”ダイヤモンド”の原石を探すべきです。

原石を探し出すことができれば、データサイロの破壊、重複の除去、信頼できるデータ製品の作成、データ手直しコスト削減、よりタイムリーな洞察と部門横断なユースケースの確保、ユーザーへの導入の改善などが可能になるでしょう。

最終的には、企業は利用可能なあらゆるデータを迅速に活用することで、ビジネス・インテリジェンスとパフォーマンスの抜本的な強化を実現できるでしょう。

最も高い業績を上げている企業は、クラウドに特化した最新データプラットフォームにデータを保存する割合が2.4倍高いことがわかりました。

データの価値を引き出すための6つの実践方法

いかにデータの価値を引き出すことができるのか?日本を含む全世界、700社の経営幹部を対象とした今回の調査では、データから価値を生み出すことに秀でた企業グループが特定されました。

これらの企業は、データに関する重要事項を正しく理解していることが判りました。まず、現在および将来保有すべきデータソースを理解している。次に、組織全体と外部ソースからデータを集めている。そして、データを業務やトランザクションに活用するだけでなく、分析を通じて良い意思決定ができるよう活用している。最後に、現状に適したデータインフラと、将来に向けたデータ基盤を保有しています。

すべての企業がトップ・パフォーマーから学ぶべき6つの重要な実践方法をご紹介します。

 

1. 抽出する: データをサイロ化させない

レガシーシステムに閉じ込められていたデータを解き放ちます:これによって全社規模でのデータ可視化が可能になり、データをまとめて一箇所で分析することで高度なAI(人工知能)やML(機械学習)の活用余地が飛躍的にあがります。

 

2. 拡張する: データ・マインドセットをクラウド・コンティニュアム全体に広げる

パブリック・クラウド、プライベート・クラウド、ネットワーク・エッジのあらゆる領域でデータを取得、管理、処理し、リアルタイムでデータを有効化することで、データプレースを最適化します。

 

3. 製品化する: データを製品として扱う

製品属性を確立し、実績のある製品開発プラクティス、プロセス、ツールを導入します。品質、設定可能性、再利用性を担保します。

 

4. 自動化する: データ・アズ・コードの採用

DevOpsからDataOpsに進化し、ソフトウェア開発で広く使われている厳格なアプローチを適用し、自律的なデータ管理に焦点を当てます。

 

5. 民主化する: 高品質のデータ製品を利用可能にする

高品質なデータ製品を、それを必要とする人々の手に、必要な時に、必要な方法で届けます。

 

6. 公開する: データを共有する…新たな常識に

より広範なエコシステム内でシームレスかつ安全にデータを取り込み、共有し合うことで、データ本来の価値をさらに引き出すことができます。

19%

データからの価値獲得に秀でたトップ・パフォーマー(エリート集団)の割合

12%

データ接続と相互運用性に関して「高度に成熟している」と回答した経営幹部の割合

眠っているデータを目覚めさせる

これら6つの実践は、今日の複雑なデータ環境からより多くの価値を引き出すための鍵となります。しかし、決してそれでデータ活用の旅が終わるわけではありません。

こうした実践を経た企業は、クラウド・コンティニュアム全体にわたる分散型データ・メッシュの構築や、高度なAIを組織全体に組み込むことによる飛躍的なビジネス価値の創出など、より高度かつ戦略的なデータ能力獲得を目指す必要があります。

大前提として企業はデータ本来の価値を最大限に引き出していることを確認する必要があります。

それは、企業内に埋没しているデータを呼び起こし、潜在価値を解放することから始まります。

筆者

Karthik Narain

Group Chief Executive – Technology

Lan Guan

Chief AI Officer