これまでオフショア開発が注目されてきた理由の1つとして、コストメリット(単価差)があります。しかし、オフショア開発の本来の目的は、現地開発を通じた専門性と効率性の追求にあり、コスト削減は副次的な効果であるべきです。マルチ化が進む中で、これから日本の技術者に求められるのは、多様な技術・ベンダー間を統一のプロセス・ツールでルール化し、それをオフショア拠点の技術者にロールアウトして、いかに効率的に開発に取り組んでもらい、作業を可視化(図①)するかといった、海外のスタッフとのコミュニケーションも含めた総合的なマネジメントスキルです。
(図① ITサービスの可視化 出典:アクセンチュア)
これまで日系企業の多くは、その国ごとにシステム導入をするケースや、1つのベンダーに大部分を委託するケースが多かったため、ルール化・フレームワーク化は特に重要な課題です。例えば、仕様書や開発コードをテンプレート化し、プログラムの基盤部分はオンショアから裏の仕組みとして提供し、オフショアの技術者はビジネスロジックを組み立てに専念するといったアプローチです。
これまでのIT技術者には、人に説明するよりも自分で作業する方が早いという現場タイプが多く見受けられましたが、今後は自分たちの技術品質をいかに担保しながら、各ロケーションの技術者に同等レベルのアウトプットを出してもらうかが、オフショア開発を成功に導く重要なポイントとなります。
しかし、技術も多様化し、ベンダーやロケーションも細分化していく中で、このようなマネジメントを自社のIT部門が内製で一元的に管理していくには、自社業務・既存システムの把握に加え、先進技術のキャッチアップ、人材の採用、育成、マネジメント経験、組織構造の変革など様々な対応が求められ、時間・コストがかかってしまうのも現実です。
このような場合は、全体管理部分を専門のベンダーに委託(トランスフォーメーション型アウトソーシング(図②))し、管理工数や不足したケイパビリティを補う方法があります。管理部分のみ委託するケース、管理+一部システム導入を委託するケース、管理+導入をすべて委託するケースなど形式は様々ですが、マルチ化に対応するために海外にも拠点があり、多様な技術力に対応できるベンダーが望ましいです。
(図② 「トランスフォーメーション型」アウトソーシングモデル 出典:アクセンチュア)
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