Skip to main content Skip to Footer

LATEST THINKING


並木 繁明

製造・流通本部 
マネジング・ディレクター 
並木 繁明

近年、ビジネスのグローバル化やIT技術の向上により、日本と海外の拠点を横断したクロスリージョンでのシステム開発・導入が活発化しています。筆者は複数のグローバルロールアウトと呼ばれるプロジェクトやインド駐在を経験し、海外拠点へのシステム導入やオフショアセンターを利用したシステム開発において、日本企業が直面している多くの課題を目の当たりにしてきました。そうした実体験をベースに、これからの成長に向けた企業のITガバナンスの取り組みのポイントについてお伝えしたいと思います。 

マルチ化(Multi-Location/Multi-Center/Multi-Vendor)するシステム開発

日本経済の低迷よるコスト削減やビジネススピードに対する要請の高まり、およびIoT・Analytics・Artificial Intelligence・roboticsなどに代表される先進技術の台頭を受けて、IT部門には多くの期待が寄せられるようになっています。

これに伴いIT人材のニーズも多様化し、国内の技術者不足は年々深刻化しています。また、企業の海外進出が加速している背景から、海外の拠点へのシステム導入やオフショア開発がこれまで以上に注目されるようになっています。 オフショアと言えば、真っ先に中国を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、このところは人件費の高騰や政治的なリスクから、ベトナム、ミャンマー、インド、フィリピンといった地域をオフショア開発の拠点として活用する企業が増えています。これまでのオフショア開発の多くは、大規模な基幹系システムやエンジニアリングなど一領域に特化したもので、ある程度量産化できる領域を中国なら中国だけというようにOne Location/One Center/One Vendorで実施するパターンが主流でした。しかし様々な技術の台頭により、例えばAIの先進的な技術はUSのベンダー、Social ListeningやAnalyticsのモデリングや分析作業は技術者が多く見込めるインドのセンター、回帰試験や性能試験など自動化・量産化の領域はその専門性を有する国内ベンダーなど、システム開発・運用はマルチ化(Multi-Location/Multi-Center/Multi-Vendor)してきています。

国民性や文化の違いを超えたオフショア開発のマネジメント

オフショア開発を活用したITトランスフォーメーションの重要性が叫ばれる一方、日本国内でこうした経験知を備えた人材を確保することは非常に難しいのが現状です。日本企業では、これまで1社のベンダーにプロジェクトすべての工程を委託する開発スタイルが主流となっており、こうしたプロジェクトマネジメントのノウハウは、特にマルチロケーションのオフショア開発ではうまく機能しないことがほとんどです。 オフショア開発においては、言語だけでなく現地の地理環境や国民性、文化・宗教、ワークスタイルの違いを踏まえて、プロジェクトをハンドリングしなければいけません。例えば、多忙期にもかかわらずオフショアのスタッフがまったく残業をしないという不満を耳にしたりしますが、実際現地に行ってみると、スタッフは遠方から乗り合いバスでオフショアのセンターに通勤していて、定時にバスに乗らないと帰れなくなってしまう事情がありました。インドでは雨が降れば道が水浸しになり、車が1時間以上同じ場所で足止めを食らうこともあります。ラマダン期間中はお祈りで人が不在になる時間があったり、夕食に備えるために夜の残業ができなかったりするときがあります。 これはあくまで一例ですが、こうした小さな認識のずれが積み重なると、オンショア側の期待とオフショア側の対応が一致せず、大きなコミュニケーションギャップを生み出してしまいます。状況は国によって異なりますし、また同じ国だとしても地域による違いもあります。実際インドでは地域によって言語も異なるので、お客様と同じ地域出身のプロジェクトメンバーを採用しコミュニケーションギャップをできるだけなくす工夫をしたこともありました。 ポイントは、可能な限り定期的に現地に行って実際の状況を目で見て確かめることや、逆にオフショア拠点のキーマンを日本に招聘して、日本のビジネススタイルや顧客の要求を肌で感じてもらいながら、相互のコミュニケーションを深めていく努力・工夫を怠らないことです。また、オフショア側に全面委託するような形式をとるのではなく、発注側に総合的にマネジメントするコア人材を配置し、オフショア側と密にコミュニケーションできる体制を築くことも重要なポイントです。

プロセス、技術のルール化による効率的なプロジェクトマネジメント

これまでオフショア開発が注目されてきた理由の1つとして、コストメリット(単価差)があります。しかし、オフショア開発の本来の目的は、現地開発を通じた専門性と効率性の追求にあり、コスト削減は副次的な効果であるべきです。マルチ化が進む中で、これから日本の技術者に求められるのは、多様な技術・ベンダー間を統一のプロセス・ツールでルール化し、それをオフショア拠点の技術者にロールアウトして、いかに効率的に開発に取り組んでもらい、作業を可視化(図①)するかといった、海外のスタッフとのコミュニケーションも含めた総合的なマネジメントスキルです。


(図① ITサービスの可視化 出典:アクセンチュア)

(図① ITサービスの可視化 出典:アクセンチュア)

これまで日系企業の多くは、その国ごとにシステム導入をするケースや、1つのベンダーに大部分を委託するケースが多かったため、ルール化・フレームワーク化は特に重要な課題です。例えば、仕様書や開発コードをテンプレート化し、プログラムの基盤部分はオンショアから裏の仕組みとして提供し、オフショアの技術者はビジネスロジックを組み立てに専念するといったアプローチです。

これまでのIT技術者には、人に説明するよりも自分で作業する方が早いという現場タイプが多く見受けられましたが、今後は自分たちの技術品質をいかに担保しながら、各ロケーションの技術者に同等レベルのアウトプットを出してもらうかが、オフショア開発を成功に導く重要なポイントとなります。 しかし、技術も多様化し、ベンダーやロケーションも細分化していく中で、このようなマネジメントを自社のIT部門が内製で一元的に管理していくには、自社業務・既存システムの把握に加え、先進技術のキャッチアップ、人材の採用、育成、マネジメント経験、組織構造の変革など様々な対応が求められ、時間・コストがかかってしまうのも現実です。 このような場合は、全体管理部分を専門のベンダーに委託(トランスフォーメーション型アウトソーシング(図②))し、管理工数や不足したケイパビリティを補う方法があります。管理部分のみ委託するケース、管理+一部システム導入を委託するケース、管理+導入をすべて委託するケースなど形式は様々ですが、マルチ化に対応するために海外にも拠点があり、多様な技術力に対応できるベンダーが望ましいです。

(図② 「トランスフォーメーション型」アウトソーシングモデル 出典:アクセンチュア)

(図② 「トランスフォーメーション型」アウトソーシングモデル 出典:アクセンチュア)

グローバリゼーション インサイト・プログラムーその他の記事

お問い合わせ

お客様導入事例その他、開示可能な情報もあります。

詳細な資料をご希望の方はアクセンチュア製造・流通本部までお問い合わせください。

TEL:03-3588-4453 (製造・流通本部直通)